TRANSFORMERS:FACTORS episode:9 [外れ者の楽園]
地球という星は、何度か降り立った事はある。
悪くない...いや、良い星だろう
だが、それは自分がこの星に適したサイズであればの話である。
だがどうだ、今の俺は随分と体が小さい
悔しいが想定外としか言い様がない
ファクトコンボイとか言う曰く付きのプライムに誘われ
因縁浅からぬ星間帝王討滅の手助けの依頼を受けた
...それまでは良かったのだが、この世界はおかしい
この世界では別世界の存在はサイズが小さくなるらしい
戦闘特化のアンドロイドである自分は巨体である事は間違いないのだが
この星の人間の掌に収まってしまうのだから
「...早々に依頼主と合流しないといけないな」
地球に到着後、ファクトコンボイの仲間と接触する予定だが
想定外の事態に予想外に時間を費やしそうだ。
「距離は近い、周囲にTF共の反応...しかし識別なしか」
遥か荒野、と言っても実際はちょっとした野原だろう
周囲を囲うように超生命体を示す表示が視界に示される
アンノウンのアラートが脳内に響く。
前後左右だけじゃない、上...そして下
段々と気配が音となり、明確な実感を与え迫ってくる
「戦う相手は、よく見てから動くべきだ」
無数の反応が射程内に入るか否か
体中に仕込まれた無数の火器、兵器が展開し全方位を捉える
人の形はしているが、全身が兵器、歩く武器庫
そんな表現ばかりがつきまとう、それが俺だ
「いつでも来いよ、先手必勝で行かせてもらうがね」
認識可能な目標全てのロックがかかると
無数のエネルギーの束とミサイル弾頭がはじけ飛ぶ
「ッ!?なんと、レネゲイズ!突撃じゃ!!」
炸裂音と共に、遠くから声が響く、擦れた金属音のような声
予想だにしない攻撃に狼狽えたようにも聞こえたが
その号令にあわせるように、地中が大きく揺れ崩れる
「多い様でほぼドローンか...だが、下の奴は魂入りらしい」
いくつかの攻撃の直撃を確認すると
そして迫る下の敵めがけて、携えたフレイルを叩き込む
跳ねる砂利が背後へ駆け抜ける頃
衝撃で砕けた地面から巨大な腕が這い出るように伸び
一目散にデスズヘッドを掴まんと強襲する
「貴様何者だ、我らが領地を奪う気か!!」
歪に伸びた腕、目が光り口のない顔から突き抜ける言葉
どうやらここは、危険地帯の一つだったのかもしれない
だが、俺自身も...そこからやってきたのだ
「奪いやしないが、聴きたいことがあるんでな、一回潰れろッ!」
掴みかかった腕をフレイルが叩き払と
その巨体からは想像もつかないほど軽く、体を半回転させ
もう1本、携えたアックスを顔めがけ叩きこむ
「ッ!!アガァァァァ」
悲鳴をあげて巨体が崩れ落ちると
その体を構成していた手足がはじけ飛び
それほど大きくない戦士の姿へと変わっていく
「ほう、コンバイナーって奴か...悪いが話を..」
既に着地し、崩れ落ちた戦士の元へ歩み寄ると
躊躇なく力ない頭部を掴み同じ目線まで抱え上げ、問う。
だが、その言葉は突然の叫びにかき消されることとなる
「そこまでじゃ!!」
声の方へと振り返ると
そこには随分と小柄な戦士の姿があった
「ワシはサイ・キル、このレネゲイズの頭領をしておる」
鮮やか過ぎる程のボディカラー
体構成スキャニングのデータから超生命体であると認識出来る
加えて変形できる、トランスフォーマーらしい。
「貴君は何用で参られた?彼は大事な家族、手荒な真似はやめてもらおうかのう」
真意は定かではないが、戦う意志はないらしい
確かに、先手を打ったのはこちら、加えて領地に入り込んだのだ
これ以上の攻撃は意味を持たない、余計は争いは俺も好きじゃない
「おっと、済まない。俺はデスズヘッド。この世界に不慣れでね」
掴みあげたままの戦士をゆっくりと降ろすと
戦う意志はないと理解させるため、武装を全て解除する
「ちょいと、状況の把握と...道案内がほしいんだなぁ」
既に手遅れかも知れないが、穏便に行けるなら行きたいものだ
幸いなことに、どうやら話は聞いてくれるらしい
「ほう、ならば来るが良い。迷い人ならば歓迎じゃよ」
続いた言葉は、あまりにも予想外だった
だが、好都合でもある。
敵意はないというのだろうか、背を向け先をゆくサイ・キルの後を
気絶させてしまった戦士を抱えついて行く
「自称平和維持エージェントだが、これは貴重な経験になりそうだ」
異質な荒野、そして異質な集団
仕事の前に、ひとつ大きな山に登り始めた
そんな気配を感じながらも、何故か妙な胸の高鳴りを覚えている
この先にある物とは...一体何か、確かめてみたい。