TRANSFORMERS:FACTORS episode:10 [巡り請う魂]


多くの仲間を失い、戦いを恐れた彼らは
争いの無い理想郷を目指した

彼等は外れた、正しい道から外れた
もう悲しまないために、だから彼等はこう呼ばれた
異端の者「レネゲイズ」と。

そして彼等は辿り着いたのだ
争いが終結した、彼等の求める理想郷に。

「ユニクロン、奴めの動きは既に聞いておる」

小柄な戦士、名はサイ・キルと言い
レネゲイズという軍団の長なのだそうだ

街外れの屋敷の地下に、独自の拠点を持ち
この世界で平穏に暮らしていたのだという

「この世界も戦が起きると...伝える必要もなかったか」

ファクトコンボイの基地に行く道で
地球に住む非戦闘員へ危機の襲来を伝えるよう
追加の依頼を受けて来はしたが...

まさかこんな超生命体が地球に潜んでいるとは
周囲を見れば無数の戦士達、それにドローン
並大抵の武力ではない、心配は無用とも思える程だ

「伝える...其方、もしやファクトコンボイの?」

「あぁ、雇われてな。そうだ、これは手土産だ」

通された基地内、だだ広い倉庫のような一室
一つ置かれたテーブルの上にパネルが転がる

鈍い輝きはそのパネルに宿る命の輝き
あの時受け取った2枚のマイクロンパネル、この宇宙にある宝の一つだ

「これはアンタのだとよ。仕事には忠実でね、ちゃんと運んだよ」

パネルは確かに宝だ、だが、選ばれた者にしか価値はない
俺が受け取ったパネルもまた、俺が選ばれた者
そして目の前で目覚めを待っているものは、サイ・キルを選んだ

当然依頼料も別に貰ってはいるが
この依頼を受け、余計な寄り道までしているのは
俺を選んだパネルに眠る命に興味があったからでもある

「...よもや、見つけてくれたのか」

鈍い光が、鋭い表情を淡く照らすと
何かを察するように、サイ・キルが声を上げ
驚嘆、そしてどこか安堵の色を見せる

そして目前のパネルに手を伸ばすと
それに合わせるようにパネルはまばゆい光を放ち
みるみる内に形を変え、小さな超生命体の姿を形成していく

「...ほう、こういう物か」

パネルから生まれる超生命体
話には聞いていたが、未知とは実際に目にすると
大抵は枯れた俺のような男でも、驚かされる物だ。

「ここは...お前、サイ・キルか!?」

現れたのはサイ・キルよりも更に小さい
しかし生まれたばかりとは思えない戦士の姿だった

伝え聞いた話ではこの瞬間に覚醒する
全く新しい生命「マイクロン」が生まれる筈なのだが
どうやら彼等は既に知り合いのようだ

「覚えておるか...会いたかったぞ、コプ・ター」

その小さい体を抱え上げるサイ・キルの目には涙があふれている
彼等に何があったというのだろうか、定かではない
一つ解るのは、彼等には並々ならぬ
苦難の道程があったであろう、ただそれだけだ

「サイ・キル、なんだい今の光...なっ!?コプ・ター!?」

眩い生命の輝き、あまりに強い光に気付き
猛烈な音とともに、黒い体の戦士が駆け込んでくる
体つきは逞しいが、どうやら女性のようだ

「久しぶりだなクラッシャー、やっと辿り着いたよ」

彼らの放つ単語一つ一つが謎を深めていく
パネルは移動手段だったとでも言うのだろうか

興味は尽きない、そして自分のパネルがどうなるのかも
極めて興味深いが、それは何れ、嫌でも知る事になるだろう
...嫌どころか、興味は尽きないのだが。

「感動の再開に水を差すのもな、俺は行く。まぁ用心しろよ」

この場に長居しても、邪魔になるだけだろう
頼まれていた仕事も、パネル...否、彼を運ぶ事だけだ
彼等に何かしらの交渉をしろとまでは言われていない

「おおっ待たぬか!手荒な出迎えの詫びじゃ、これを」

振り返ると、駆け寄ってきたサイ・キルの腕には
彼の体と同じか、それ以上ある大槌が握られていた
随分と物騒な詫びの品だが...悪くない

「良いのか?俺は遠慮はしないぞ」

「これでも足りない位じゃよ、。この恩、忘れぬぞ」

大槌を受け取ると、手の中から力が滾るように流れこんでくる
どうやら普通の武器ではないようだ
思わぬ報酬を手に、この外れ者の楽園から外へと向かう

「それはあの隊長さんに言ってくれ、じゃあな」

背後の安息、彼等の見つけた平和
それは脆いかも知れない、だが俺のような者には
触れ得ざるもの、その行く末はどうなるか興味深い。

偶然ではあるが、この戦いは彼等を助ける事にもなる
この俺が、何かを護る...というのも悪くないかもしれない

遠くなる楽園を背に
新たな戦いの火は次第に強さを増していく
又いつか出会う時が、炎の中でない事を祈るばかりだ。