TRANSFORMERS:FACTORS episode:8 [歌え、希望よ]
変わらない空、穏やかな一日
30年近く前もこんな空を見上げていた。
建物や景色は変わったが、根本は同じままだ。
俺も、そして仲間達もこの平和を守ってきた
これまでも、勿論今も、この先も。
「良いねぇ、こんな夕焼けは。平和な一日が終わる」
宇宙一危険な化け物に目をつけられ、体は変質し
この世界に居る存在だった俺は
もうどの世界でも、存在しているのか危うい
それでも、また体は動いて前よりも強くなった位だ
復讐なんて物騒な事は考えないが
あのバケモンは危険だ、しかもこの世界を狙っているらしい
ならば、やる事は唯一つ、戦う事。
舞い戻った世界には、変わらぬ希望があって
新しい命も、希望に繋がれた未来もあった
まだ守るべき物があったのだ。
「君は変わる心のままに~...か、おっ通信か」
意気揚々と歌う声に合わせるように電子音が軽快に響く
モニターに表示されたのは、まだ若い仲間の一人だった
「ブラスター、何処に行ってるのさ!司令官そろそろ戻ってくるよ」
画面の向こうでは、困った様子の少女が映しだされている
なにせ人出の少ないチームである
あまり平和を謳歌する暇もないのは解ってはいた
「言うねぇオルガ、でも今日は珍しく仕事で出ててね」
オルガ、彼女も立派な戦士ではある
だが、共に戦うことすら躊躇うような、まだ子供だ
アクロイヤーに改造され命からがら逃げ延びた彼女を
偶然、保護したのが俺とファクトコンボイだった。
それ以来、良い仲間として色々頼んでいる。
当然、出来る事ならオルガや若い戦士を
無益な争いに巻き込みたくはない
しかも相手は星を喰らうような化け物だ
だが、居場所になる事、彼女達なりの信念や願い
真っ直ぐな正義の心を見せられると、無下には出来なかった
それに、彼等だって弱い訳じゃない
俺達なんかよりもずっと強い根と
真っ直ぐすぎる位の正義、実力も兼ね備えている
「そうか...また例の軍勢が出たの?」
「いや、今日は助っ人のお出迎えさ。年上だけど女の子だぞ」
決戦の時は近い。星間帝王、そして奴の軍勢は
この世界に既に相当数潜り込んでいる
早急に対向できる力を集め、奴らを一掃しなくてはならない
「ほんとに!?じゃあお出迎えの準備しなくちゃ」
まだ若い彼らの純粋さは時に愛おしく
同時に、あまりにも危うい。悲しい程に。
だが、守る事が出来る。彼等も世界も。
この世界は俺達の帰る場所だ。
勝って、何時もと変わらない毎日に帰る
...それがどれだけ難しい事か、よく理解している。
だが、恐れ振り返る暇など無い
奴らを止めることが出来るのは、俺達だけなんだ。
「おう頼むぜ、あんまり無理はすんなよ」
我等に勝利を、なんて大袈裟な願いを求める訳じゃない
ただ明日を、彼女達、そして次の世代、未来へ
彼等に希望を、少なくとも今よりは良い明日を
「おっとそろそろ、来るみたいだ。また後でな」
「了解、スチールジョーもお待ちかねだよ」
先を征く俺達は、新たな世代の礎になろう。
今は暗黒の時代、平穏は遠い未来であっても、彼女達には光を与えるのだ
奴らにこの光を奪われてはいけない、砕かせることなんてさせない
「よく聴けよユニクロン、俺達の歌が聴こえる時...それがお前の最後だ」
歌が響く、希望と明日を叫ぶ歌が。
遥か彼方、銀河の地平まで。
一つの声に、誰かが、段々と何人もの声が重なっていく
そうさ、いつでも背中には友の声がする。
聴こえるだろう勝利の歌
明日なき者が、歌うのだ。やがて産まれ来る未来の為に。