TRANSFORMERS:FACTORS episode:5 [イレギュラー]
銀河の辺境、無数の星の海
その輝きがある裏には、当然の如く深い影も存在する。
その闇は深く、堕ちていけば果てない
そんな闇の底の吹き溜まりに一つだけ賑やかな光の群がある
寂れた廃屋のような建物、やけに賑やかで異質な程だ
フックが一つ外れ、ダラリと下がる看板には
飾りもなく、「BAR」とだけ書かれている
「ここに居ると...随分とらしい」
闇の中にもう一つ、小さいがやけに目を引く光が浮かぶ
青い光、それは無限を宿した一人の男の到来を告げる
気だるく下がる看板を軽く小突き
その先にある扉を開くと、外見からは想像もつかない
場違いな程の喧騒が広がっている
無数の生命体、様々な惑星に生きているであろう星人たち。
その誰もが理由あってこの店の中にいるのだ。
決して綺麗な場ではない、だが落ち着きを感じる
「なんだいなんだい」「随分小綺麗なのが来やがった」
喧騒の中から幾つもの声が聞こえる
機械的な外見の者、不定形な者、地球人に似た者
多種多様、だが皆似た気配を放つ。
そんな荒くれ者の混沌の中、眩き者が探すのはただ一人。
「...デスズヘッド。探しましたよ」
無駄に、と言う表現がよく似合う広い店内
その奥、闇に呑まれるような一角。小さく光が灯っている。
数人は座れるような大掛かりなシートに、大男が一人。
白銀の体に鋼の鎧、手に持ったグラスはミニチュアのようだ
「俺に客とは珍しい、だが馴れ馴れしすぎやしないか?」
デスズヘッドと呼ばれた大男が驚いたように顔を上げる。
その眼前には見慣れたマークの付いた鎧を着た
見慣れた【指揮官顔】が立っていた。
だが、同じ役職というだけで別人であろう事は解る。
前に合った奴は、体は赤いが青い若造だった。
だが今回は体も青い、それに明らかに種族が違う。
「失礼、私はファクトコンボイ。腕の良い賞金稼ぎを探していましてね」
コンボイ、その何は随分と縁がある。
だが、奴らは軍であり、外れ物を雇うような輩ではない
あえて、使う必要がないのだ、考えるまでもない。
探さずとも活きの良いのは手元に居るだろう
「お固い軍属、しかも指揮官が何の用だ?」
ただ単純に疑問が口から出る、変に探るよりストレートの方が良い
相手の真意何かはどうでもいい、要は金になるか否かだ
「名ばかりですよ。猫の手も賞金稼ぎの手も借りたいと思いまして」
若干の困惑、そして対面で深く腰掛け気を抜ききった姿を晒すその存在が
本気で物を言っているのかは怪しい...と思うのが普通であろう。
「随分気の抜けた司令官も居たもんだな、で、幾ら払うんだ?」
その言葉を待っていた、とでも言うように
六角形のプレートがテーブルの上に置かれる
鈍い光、一瞬、機械音が耳を抜け、目を奪われる。
「これは...マイクロンプレートか」
未知なる力を秘めた石版、マイクロンプレート
その現物が手の中にある、触れると文様が輝きを放ち
手から感じ取れる波動、隠し切れない気配..本物だ。
「どうです?下手な現金よりも価値がある。しかも持ち運びも楽」
「正義の味方がこれを取引に使うかね?驚きだよ」
生命の宿る石版、この軍人共が正義面で守ろうとする物
本来、取引に使うようなものではない
...それだけの理由、何かしらの理由があるのだろう。
「それでは足りないと?」
「いや、悪くない。だが...内容次第だな」
報酬の次は内容だ。状況が状況だまともではないだろう。
が、このお宝を逃すのはどうにも惜しい
話を聞いてみる、言わば奴の策に乗る形になるわけだ
「星間帝王、別名は...ユニクロン、アレを討滅するんですよ」
虚空に円を描くように指をくるりと回し
軽々と言い放たれた言葉は、予想を上回る。
あまりにも強大な存在の名前、よく知っている。
「ほう...なるほどな、それで俺って訳か」
内心正気を疑うような発言だが
態々俺の元へ来た理由が理解出来た
ユニクロン、宇宙を喰らう破滅の存在とは一度戦った事がある
デカい図体の割に相手の心を蝕むようなセコい手まで使う
厄介の度合いで言えば最上級クラスだろう
「アレに勝つには、貴方のような存在は不可欠ですからね」
悪い賭けだが、不可能でもない。
何よりあのバケモノ自身、首を取れば相当な儲けになるだろう
それに十分すぎるお釣りが来るとなれば
少々気は引けるが、話は決まったようなものだ
「良いだろう。始末した後首は頂くぞ。勿論コイツも前払いだ」
その巨体が立ち上がると、周囲の視線が一斉に集まる
彼が動くという事は、それだけの大きな事が動く証。
「ええ、勿論。それは貴方が持つべき物ですからね」
気だるく腰を上げたデスズヘッドにファクトコンボイが続く
今この宇宙で最もありえないチームが生まれた瞬間
このイレギュラーが生み出す可能性は
無限か...あるいは...?