TRANSFORMERS:FACTORS episode:4 [亜の預言者]


虹の向こう、既に亜の世界は遠くに見える
幾つかの光の輪をくぐり、私は還って来たのだ
あの、バカバカしい世界から。まるで夢から醒めるように。

体に感覚が戻る、痛みと快感の間にあるような感触
パキパキと音を立てて、死した筈の私が再生する。

「アーデンパープル、亜空間より転送完了」

機械的な、しかしどこか気の抜けた声が
何か数字の羅列を読み上げ、生まれ落ちたばかりの
私の体を解析し、徐々に体を現実に引き戻してゆく。

「本当に、生き返ったみたいね。タコも居るし夢じゃないのか」

少し前、私は死んだ。
激しい闘いの中で、体を斬られ、最終的には爆散した。
...らしい、途中から既に記憶はない。

だけど、その魂は亜の世界に住むある存在に救われ
私の新しい体と、力を与えて送り返してくれたのだ。
それが良かったのかは解らない、だけど感謝はしている

「パープル、データ解析完了。正常状態です」

目前のタコ型ロボットが仕事を終え、フヨフヨと宙を舞う
その周囲は、現世...というにはあまりに暗い場所
微かに見える景色は森の中と言った風だが
生き返ったという感触すら感じさせない
なんとも言えない気味の悪さがあった。

「ここ何処だか解る?...地球って滅んだ?」

私が一度死んだ場所、地球の日本...なのだろうか
それにしては随分と...闇が深すぎる

「座標確認...現在地点・狭間、地球ではありません」

目の前の機械が言う場所というには曖昧すぎる答え
どうやら、まだ完全に夢から覚めたわけでもないらしい

「狭間ってお前、ポンコツかよ!あんのボケ神...ッ!?」

気を紛らわせるように声を上げた矢先
強烈な気配が、肌に突き刺さるように無数に迫る

なにか巨大で、全身を絞り上げるような歪な感触に体は硬直する。
言うなれば...これが正しい恐怖と言う感覚なのだろうか

『死シタ魂、我ノ者ナリ』

全身にうねり回る感触は、次第に声のように聞こえ
段々とそれが自身を蝕む者であると実感させてゆく

これは何だ...あれは何者だ
理解よりも先にその声は、体の中を支配しようと全身に迫っている

「悪いけど、また死ぬ気は...無いのよねっ!」

硬直した体は悲鳴を上げながら拳を握り
意地と言う名の力が、腹の底から叫びを上げる
声が突き抜け、無理矢理に振るい上げ
目前に存在している...であろう、歪に拳が叩き込まれる

『...亜ノ力...難イチカラッ』

叩き込んだ右腕、その先にはめ込まれた宝玉が
目前の歪の姿を映し出し、砕く
その姿はまるで灰になった屍というべき異形

悲鳴のような声が突き抜けると
体を縛る感覚も消え、目前の世界は光を取り戻している

「現在地点・地球、日本。以下お伝えしますか?」

膝をつき、姿勢を落としたまま
与えられた情報を飲み込み、理解する
やはり死んだ時点での場所に戻ってきていた
...しかし、邪魔が入った、とんでもない邪魔が。

「いや、良いわ...ったく、何なのよアレ」

幾多の戦いをくぐり抜け、死すらも経験した自分ですら
恐怖、ただその一つの感覚に飲み込まれた...アレは一体何なのか
考えても答えなど浮かぶはずもない、だが気にかかるのは確かだ。

「この力は苦手そうだったわね...あれ潰せば、復帰も楽か」

何日、何年の時間が過ぎたのかもまだ解らない
だが、開いた期間を埋めるには、手っ取り早いのは武勲を上げること
先程の歪なレベルの相手ならば申し分はないだろう

「よし、じゃあ復帰第1号は奴の首だわ、行くわよタコ」

タコ型ロボットの頭を軽く叩くと
背中の羽根を展開し、軽く宙に舞う
ホンの10センチ程度体は、この世界では誰の目にも気づかれることはない

「了解、何処へ向かいますか?」

「そうね...情報集めにバカ神の知り合いの所にでも行行くか」

目的地が決まると、まるで跳ねるように
紫の影は遥か彼方へと飛び去ってゆく。

この小さな世界の出来事が、次の瞬間には波紋を描き
その波紋は次第に広がり、地球...そして宇宙すらも超え
遥か異界にも及ぶ戦いに発展してゆく
それは少し未来の話、もう、ほんの直ぐ側に有る未来の物語。