TRANSFORMERS:FACTORS episode:3 [愛しき惑星]


「...早くおいでよ、トロン」

「グズグズしてるとアクロイヤーが来ちまうぜ」

目の前に少年の後ろ姿、傍らには同じ誓を建てた仲間
当たり前の毎日、この地球を守り少年達の夢を守る
私は、その為にあえて戦う兵器の体を得たのだ

「ああ、待ってくれ今...ッ」

頭の回路に痛みが走る、目の前の景色が歪む
とうの昔に忘れた筈の、自分が自分であった記憶が見える

「煩わしい...もう帰れぬ世界だろうに」

痛みが抜け、視界が戻ると鮮やかで美しい
そして輝きすぎて気味の悪い空間の中
初めてではない、何度も巻き込まれた次元の狭間

嘗ての仲間が言っていた「亜空間」
まさかその先にあんな地獄の世界が有るとは

「セイバートロン、超生命体、俺の体はもう君を守れない」

数十年前、戦いの最中ワルサーロボ「トロン」は
アクロイヤーの攻撃を受け、開いていたアクロゾーン
即ち制御されていない亜空間ゾーンへと飲み込まれた

そのゾーンの先にあったのは、元の世界とは別の次元
超ロボット生命体が存在する世界だった

「争いなど無意味だ、何故戦う!!」

管理者を失った惑星、セイバートロン。
次なる覇者を選ぶ闘争の最中に落ちた彼は
幾多の争いの中でも、精神を保ち戦い続けていた

だが、そのあまりにも輝かしい命
眩しい光は、その世界を眺めていた
この宇宙で最も歪な異形の目に留まってしまった

『トロンよ、戦え。そして強くなり続けろ』

声は響き続け、まるで体...精神...
開いた間全てに染みこむように蝕んでいく

『破壊せよ、敵も心も...お前は変わるのだ』

戦いを止めたい、騒乱の世界を変える使命
それこそがこの世界に落ちた理由なのだ
そう信じ、戦い続けてきたトロンの中にある不安、闇を
異形はつかみ、彼を変えてしまった。

『機械生命を超えよ、お前は今よりメガ・トロンとなる』

抗い続けた魂が、100のスパークの砕ける飛沫を浴びた後
清廉なるロボ・トロンは圧倒的なる破壊者メガ・トロンへと
輝き続ける光は、暗く濁った闇へと変わってしまったのだ。

「世界など変わらぬ、戦いは終わらぬのだ...次は貴様かッ」

振るい上げた刃が、迫る戦士の首を吹き飛ばすと
再び頭に激しい痛みが走る
まるで落ちた精神を逆なでする様な記憶との邂逅

「何が目的だ星間帝王ッ」

何者かが自分を選び、今の状態へと作り替えた
その事実に気が付かない程では、あの地獄を生き残れはしない
月に眠る異形、嘗ての世界の記録にある星間帝王
あまりによく似た2つの存在、見え透いた解がある。

「答えぬのなら、この世界ごと切り裂くまで」

極彩色の世界を切り裂くように刃を振るい落とす。
すると裂けた時空の先、見慣れた青い惑星が見える。

「...あれは!?貴様、地球に手を出す気か!!」

見間違えるはずもない、皆と守り抜いてきた地球
目の前に映る世界、自分の世界。
体の次は世界までをも奪おうというのか

「させんぞ...貴様の思い通りになど」

伸びた切っ先に力が宿る
自らのエネルギーを一点に集中し、次元の狭間を両断すると
メガ・トロンは一目散に、目前の地球へと飛び出す

「後悔するぞ、お前は必ず...俺を生み出した事を」

この世界ではあまりに小さなその姿が
静かに赤く燃え、地球へと落ちてゆく。
還って来たのだ、遥か故郷に。もう戻れぬ堕ちた魂と共に。

「あぁそうさ、後悔させてやる...俺とアイツでな」

光る一線の流星、その光を描く尾の先
あまりに永い時を経て、彼は今帰ってきたのだ。