TRANSFORMERS:FACTORS episode:2 [銀色の夜明け]
目前に迫る影、あれは何だ?
地面が割れ、空が裂け、怯え叫ぶ人々
これは何だ...私は何をしているんだ?
戦わねば、救わねば...例え、この体を失おうとも。
「...ッ、またあの時の光景が浮かんでいたのか」
目前に広がる世界は漆黒、帰る故郷はもう存在しない。
私の魂は、今のこの夢幻とも思える闇の中に漂っている
血が流れ、熱を帯びていた体は既に脆く砕けさり
確かに目前の世界は変わらず見えているが
最早私に何かを掴む腕も、呼びかける声も存在しない
ただ、思考だけは生きていて
忘れられない感覚が、頭の中が存在したであろう場所で
今もあの日の...何も救えなかった景色を映し出している
「何故だ、何故この腕はもうないんだ...足は、体は...私は...」
声無き声が、闇に呑まれ消える
このまま、無念の中で、魂すらの消えていくのか
「嫌だ、それだけは嫌だ」
無くしたはずの腕がどこまでも広がる闇を裂いたように見えた
確かにあったという感触が、目の先の煌く星を掴むように
ただ恐怖と絶望を振り切る為に伸びる
『騎士よ、まだ戦う意志はありますか?』
煌く星か、それとも冥府への誘いか
かつての自分と同じ、鎧を纏った戦士の影が見え
掻き消えそうな魂に、語りかける声がする
「あぁ、私はまだ戦える...救いたいんだ」
考える必要など無い、例え幻聴でも構わない
目の前に希望とも絶望とも取れる可能性が聞こえている
もう狂っているのかもしれない、だがどうあっても構わない
もう形が存在しないのだ、後は消えるか...抗うかだ。
『ならば、この手を...共に行きましょう』
声が響き、目前の世界は歪む
一瞬の光の瞬き、蒼く穏やかな輝きの中に、無数の景色が見えた
「待ってくれ、君一体...ッ!?」
善と悪、ロボットのような存在の激しい闘い
小さな人間だろうか、戦士達の戦い
幾円もの時間、その戦いがあって...その背後
戦いの裏に潜む無数の影、その中に奴は居た。
私はそれを知っている...あの日見た影。
「奴は...今度こそ逃さん!!」
叫びを上げた瞬間、歪んだ景色は消滅し
元いた暗黒の宇宙を視界に広く映し出していた
『私の名は、ファクトコンボイ。また直ぐ相見えましょう』
まだ意識の定まらない意識に、青い光が...彼が語りかける。
その気配、力の感覚は遥か遠いながらも感じられた。
そう、感じられる。身体があるのだ。
そしてその体は、今見た幻の中に居た機械の戦士達と同じ
今までとは明らかに違う、強く巨大な鋼鉄の体であった。
「彼が私に力を...あぁ何と...皆よ、仇は必ず...」
掲げた掌から全身に力が漲り、広がっていく
感じた事の無い程の圧倒的な力が失った希望を蘇らせる。
「今度こそ救ってみせる...私は、生まれ変わったのだ」
かつて、故郷の惑星には平和を守った伝説の騎士が居たという
弱き者の盾となり、悪しき闇に飲まれようとも何度と無く立ち上がり
大いなる刃を振るった偉大なる騎士、その名は
「我が名はグラディオン、闇を裂く騎士」
高く掲げた剣、その切っ先から光が走る
まるで宇宙の闇その物を切り裂き、照らすようなその光は
怒り、悲しみをも超えた決意と希望の輝き
「遥か友よ、待っていてくれ...」
新たな命は燃え、騎士は飛ぶ
その光の先に、希望を見据える為に。