TRANSFORMERS:FACTORS episode:24 [変わる明日]


「どうしたって、理解し合えない者もいますからね」

雲すらない空が、青く輝いている
もう歪められる事もない
別の世界へ切り替えられる事もない
...取り敢えず今の所は。

「俺とお前がそうである様にな」

アーデンパープルが用意した
紫色のミクロステーションの上に
軽く腰掛けたメガ・トロンが遠く空を見上げている

時間経過がずれた異界に飛ばされた事で
何百年もの時間を経て舞い戻った世界
変わった様で、何も変われなかった様にも見える

「そろそろ俺は正しい姿に戻るとしよう」
重みを失ったステーションが軽く揺れ
立ち上がるその背後に、微かに風が流れる

「皆に会わずに、宛もなく何処へ行くんです」

ここでは【デストロンの破壊大帝】等という肩書は
異界から来た者達にしか通用しない、関係のない称号
姿こそ変わっているが、嘗てと同じようにも生きられる

嘗ての仲間達も基地へ戻れば当たり前のように迎えてくれる
何時の日か帰ると、夢に見た世界が目の前にある

「平和の中にいると不安でね、帰れんさ。それに宛ならある」

背を向けたまま、軽く言い放つと
右腕の砲から放つ漆黒が空間を割り
メガ・トロンがはその中へと消えてゆく

「また会おう、今度は敵としてな」

最後に振り返り、ニヤリと笑ったその顔は
見慣れた破壊大帝の顔であり、共に戦ったガンロボの顔でもあり
どこか闇や破壊の衝動とは違う強さを感じさせた。

「ええ、また...聞こえちゃいないでしょうが」

今の体には少し小さいこの基地は
戦闘現場で展開するのは丁度良い...等と思いながら
歪み消える空間を見送り、空飛ぶ基地は動き始める。

「不思議なもんよね、善悪全てが一丸となってたなんて」

操縦席に座り、システムを調節していたパープルが戻り
軽く宙に浮いた基地は、内海に浮かぶ島から海を渡り
南方基地へと進路を取る、まだ道程は長い

「アクロステーションなんて貴重な物にも乗れましたしね」

「私もビックリよ、まぁ暫く世話になるわ」

嵐が過ぎるように、一つの戦いが終えたが
意識ある者が生きる限り、争いは起き続ける
この平穏もまた長くは続かないだろう

「で、あのデスキングって...それになったの?」

パープルの背後、保護カプセルに収納された六角の石版
今は何の気配も放たず、眠るようにエネルゴン液の中に浮く
あまりにも小さいそれは、世界の脅威だったとは信じ難い

「この世界の...と言わねばなりませんね、何処でまた蘇るか」

「ほ~ん、厄介よねぇ...死んでも蘇...そりゃ私もか」

この世界で生まれ、超生命体の世界に寄生し
その生命を無限に等しいまでに分散させ拡大した存在

幾つもの名前で呼ばれるそれは、世界の数だけ存在し
全ての世界で同一、故に根源であるこの世界で封印に成功しても
何らかの形で蘇る可能性は幾らでもあり、油断はできない

「私も同じですよ、使命を受け死をも超えると。聞こえは良いですが」

「あはは...先を考えると気が重いわ」

位置を示すモニターが、目的地が近いと知らせる
今後は休眠状態だったミクロチェンジ部隊を再編し
ミクロマンと地球人が手を組み、新たな組織を発足させると言う
この世界にも、やっと次の未来が見え始めている。

『ファクトコンボイ、お待ちしていました』

通信機の向こうから、ノクトロの声が響く
ミクロマントムの計らいで、この世界に呼び込まれた戦士たちは
異星からの協力者であったり、ミクロロボットとして
この世界にいる間は自由に活動できる様取り決めされた

まだ確認されていない、呼び込まれた戦士たちも
随時探索に辺り、迎え入れる体制も整いつつある

「どうです、今回のお礼のまだ出来ていませんし」

ミクロベースのステーション格納タワーが露出し
アクロステーションがその中へ収まると
円形の光が下に落ちるように流れ、道を示す

「そうね、急ぎの用事もないし...敵情視察と行こうかしら」

彼女もまた、在りし日は争い命を奪い合った敵
だが、今は手を取り合い理解し合える仲間...そう思いたい
少なくとも昔とは違う、生き、進む事で未来は変わってゆく

「あぁそうだ、ローズさんも呼んでおきましょうか」

「ッ!?いや、呼ぶな、呼ばなくていいぞ!!?」

アクロステーションが着陸し、整備班が駆け寄ってくる
既に基地には戦いを終えた戦士たちが戻り
今までよりも賑やかさを取り戻している。

近い内には嘗ての世紀末の戦いの疲れを癒やしていた
歴代のミクロマン達の眠りの時間も終わる。

そう、時はめぐる。
...僅かに間があって、視点は変わる。

見つめている者がいる、我等を、そして彼等を。
誰にもある「時」を見守る者は彼等を何時も見ている。

同じ時...であるのかすら定かではない。
彼等の世界から遥か彼方、無数の輝きが渦巻く虹色の世界
赤い巨神が、闇の封印を感じ、穏やかに世界を見つめていた。

「無事に終わったようです、希望は育ちましたか?」

獣のような姿の若い超生命体が声をかける
本来、時の神の住む世界に他の者は存在しない筈

だが、彼はさも当然というように
床があるのかも解らない場を踏み、ウロウロと動いている。

「ああ、育った。思った以上に」

巨神が自分より遥かに小さい隣人に手を差し伸べると
その腕に飛び乗り、同じ目線から窓のように開いた穴を眺め
その先にある輝きを取り戻した世界を見つめる

「興味深いな、僕も行ってみていいかな?」

楽しげに語るその姿はまだ若く
左胸には時計の様に見える機械が宿り
機械とも生命とも付かない姿はファクトコンボイ達よりも
もっと後、遙か先の世代の戦士にも見える

「勿論だとも、彼らと共に学び、君を創るのだ」

巨神が遙か先を指差し、その旨を開くと
無数に動く歯車が相互に連動し、胸のコアから光が走る

「でも、僕が居ないと一人になってしまうよ」

光が道を作り、覗き込んだ席の世界へ続く
その光に触れれば、瞬く間にあの世界へと飛んで行ける

だが、巨神を一人にすることが気がかりなのだろうか
少し躊躇するように、光に触れることはない

「我は時。常に皆が居る、そして我も常に君達と共に」

ハッと何かに気づいたように
巨神の言葉を受け、若き戦士の表情が引き締まる

そして意を決したように光に触れると
その身を光の粒子と変え、まるで降り注ぐ輝きのように
遥か彼方の世界へと飛び立ってゆく。

「あの世界は未だ危うい、だが彼等ならきっと...」

無数の光は色濃く輝きを増し
先程までの穏やかさは身を潜め、巨神が振り返ると同時に
また、その姿世界の中へと隠し消えていく

漆黒の宇宙、時計の針の音だけが響き
世界は一旦の区切りと共に、新たな歩みを始める。

「どんな世界だろうな~楽しみだな~」

その日、見上げる夜空に星が降る
それはまるで祝うように、光り輝いていた。

だが、その明るすぎる程の光は
この世界に迫る無数の影を照らし、浮き彫りにする
光とともに闇はあり、打ち消してもそれはまた現れる。

一時の休息の後、世界は変革の海へと落ちていく
希望を得る為の戦いがまた始まる。
果たして辿り着く先は...絶望か、希望か。