TRANSFORMERS:FACTORS episode:22 [一閃の先へ]
爆炎の中、異形の口元が歪む
渾身の一撃を受けても尚
その身には僅かなダメージしか負っていない
寧ろそのダメージを楽しんでいるかのようにも見える
嘗て対峙したデスキングとは違う
闇その者を相手にしているような、異質さが宿る
「エネルゴン..αH7の輝き、何時見ても憎らしい...」
ユニクロンが手を払うと、青い炎が浮かび
次の瞬間には無数の衝撃が二人の戦士に襲いかかる
「ッ...我等を舐めるな!!」
無数の雨のように、エネルギーの弾丸を切り払い
グラディオンがユニクロンへと斬りかかる
衝撃と衝撃の激しい激突が異界を歪ませ
突き刺さる様な衝撃が、音となって響く
「この力、素晴らしいな友情とは...だが」
光を纏うグランブレードを鈍く光る邪険が振り払と
その勢いに押され、再びグラディオンが後方へと跳ね飛ばされる
「いけない...グラディオンッ」
ファクトコンボイがエネルギーの帯を飛ばすと
飛ばされ、境界の壁面に激突寸前のグラディオンが掴み
既の所で、その身を救い形勢を立て直す
「すまない...悔しいがあの力、想像を遥かに超えている」
「ええ...出し惜しみは無しで行きましょう」
ファクトコンボイの胸が輝くと
マトリクスを覆うようにエネルゴン結晶が形成され
その腕には力を宿す大槌が握られる
「共に戦える事が、奴にはない私達の希望ですよ」
滾る力の波の中で、ふっと流れるように声が聞こえた
その刹那、ファクトコンボイがユニクロンに向かい駆ける
「ハッハッ良いぞ、完全な姿になってくれたか」
笑みを浮かべたユニクロンもまた
邪剣を握りなおし、迫る力へと構え邪気を放つ
幾つかの足音、気配の激突と瞬間の途切れ
直後、大槌と刃は激突し、空間は再び激しく揺れる
根源は同じ真逆の進化を果たした生命が対峙する
「無数の世界の命を知り、何故貴様はそうなった」
その巨大な刃を大槌が叩き伏せ、へし折ると
大槌から手を放し、姿勢を崩したユニクロン目掛け
エネルギーを宿し、輝く拳が叩き込まれる。
「ギッ...聞いた側が問答無用とはね」
砕け散ったエネルギーの結晶が深紫の煙をあげる
その表情は歪み、ダメージは与えているが僅かである
拳にもあらゆる攻撃にも全て全開のエネルギーを乗せている
そう長くは使い続けることは出来ない
だが、効果はあると解れば、勝機はある
「今です、グラディオン!!」
ファクトコンボイが叫び、その姿を瞬間転移させると
大きく仰け反ったユニクロンの姿がその場に残り
その直線上に、グランマグナムを構えたグラディオンの姿がある
そしてその隣に転移したファクトコンボイもまた
エネルゴンセイバーを変形させバスタ-モードへと変えると
互いのエネルギーが交差し、巨大なエネルギー球が形成される
「征くぞ友よ、ブレイクシュートォッ...マキシマ!!」
両者の力が完全に同調した時、光球はエネルギーの帯となり
目前のユニクロンを完全に覆い尽くす程の光が突き抜ける
その一瞬の出来事、声すらも聞こえぬまま光は走り
ユニクロンを越え異界の壁を完全に破壊して外へと飛び抜けていく
「これでも消しきれないのか!?」
光の突き抜けた先、爆炎の中心には未だ影
余計な装飾が砕け溶け、本来の姿に近づいた異形の姿がある
「ククッ...いい輝きだが、惜しかったなぁ」
焼け落ちた装甲、砕けた角
しかし、その体自体にはダメージは薄く
それすらも、纏う闇が回復させている
「お前達がこの星から力を得る様に、私もこの世界の闇を得ている」
受けたダメージをまるで意に介さないまま
鋭い爪のような足が、ギリギリと鈍い音を立て
ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる
「全ての世界に闇が残っている、故に我は死せぬ」
歩みを進めながら、胸のパネルが展開し
内部から連装式の砲門が出現し力を貯める
「お前達も我が兵となれ、全ての世界を得ようぞ」
その背後に巨大な闇を浮かべ、吸収すると
胸には直前の光と同じ...それ以上の漆黒球が形成される
「その為には、その鋼の魂は邪魔なのでな...滅せよ」
闇は周囲に雷を纏い、圧倒的な大きさへと育つと
今にも暴れだそうと、上下左右に揺れ動いている
「...あの力、流石に受けきれるかどうか」
「ああ、だが友よ、一つだけ手がある」
ジリジリと体を削り取るような威圧感の中
互いに光を絶やさず、剣を構え続ける戦士
その魂の色は同じく、互いに力も同じ
「我が星に伝わる融合術...君となら出来る」
グラディオンの体が輝くと、光の粒子となり
ファクトコンボイの胸のマトリクスへと宿り
その力は胸から全身へ、そして手に握る剣の形を変える
同時に体に宿るスパークの鼓動の高まりが
痛い程に全身を脈打つ力を滾らせていく
「あくまで抗うか、ならば消えよ...この破滅の闇と共に」
光の融合を遮るように、無数の闇は一瞬巨大な顔を形成すると
その顔が大きくその顎を開いた先から
張り付き、焼きつくような漆黒の闇の力を解き放ち
地表、そしてその周囲の空気すらも焼き尽くし光へと迫る
「これが...グラディオンの力!」
「ああ、今は一つ、共にあの闇を討つのだ」
2つの声が重なる、光は滾り
叫びは一つ突き抜けた
「「ゆくぞ、ウェブダイブ!!」」
目前の世界すべてを覆う様に闇が迫る
しかし、一つになった光の戦士は闇に向かい剣を構える
右腕には輝ける大剣、左腕には全てを守る盾を構え
光の羽を宿した姿は、闇を前にしても尚、輝きを見せ続ける
「「エネルゴンシールド、グランディフェンド!」」
構えた盾が波の如く押し寄せる闇を真っ二つに裂き
光を携えた戦士が一直線に駆け出す
闇は瞬く間に二つに裂け飛び
突き抜けた先に、其の根源たる存在を見つけると
より強く踏み込み、其の旨目掛け激突し、跳ね飛ばす
「何っ...この力、一体何処から」
突撃を受け止めたものの、更に強い力に押し出され
ユニクロンが後方へと吹き飛ぶと
次の瞬間、その目の前に輝ける戦士が現れ剣を振り上げる
「「グランブレードッ...エネルザン!!」」
一瞬の煌きが突き抜ける
光の一閃、瞬く間すら与えない斬撃がユニクロンを突き抜け
そのまま異界すらも光の軌跡が真っ二つに切り裂く
それまでに消えていった希望、命すべての魂が
この一瞬、光の中に溶け力へと変わる。
最初は表面を削るだけだった刃が
次第にその暗黒の表皮へと突き刺さると光を増し
抗う闇を溶かし、その身全てを完全に包み焼き払う
「ギッ...光が我を...光に飲まれるだとッ!!?」
「「あぁそうだ、お前の闇、今ここで断ち切る」」
遥か天空から地上に向かい伸びた光が
闇を飲み込み、全てを浄化し消えてゆく
砕けた異界の結晶が宙を舞い、消滅する中
輝ける戦士もまた、本来の二つの光へと戻り地上へと落ちていく
「...無事ですか、グラディオン」
「今は何とか...だが、もう体が限界のようだ」
加速を増して落ちていく、視界の先、荒れ果てた地上。
力を一時的に使い果たした状態では無事では済まない
「勝てども、これまで...ですかね」
心地が良い程の平穏な空と空気を抜け
打つ手無く、落ち消え行く戦士の背後
勝利の代償に死を受け入れる、その覚悟すらも出来ている
...だが、世界は彼らを楽にさせる気はないようだ。
「まさか、俺と決着を付けずに死ぬ気か?」
眩さとはまた違う新たな光が走る
巨大な影が、二人の戦士を掴むと瞬く間に降下し
戦士を優しく地上へと送り届ける
「こちらワルサー。レネゲイズ共さっさと救援に来い」
「了解じゃよ~」
眼前に立つ姿、それは紛れも無く宿敵
そして、この世界では共に戦う仲間でもある存在
姿を消していたはずの破壊大帝の姿がそこにはあった
「メガ・トロン...なぜ此処に!?」
指令を受けたレネゲイズのメンバーが
グラディオンを救護ユニットへ運ぶと
続けてファクトコンボイにも治療を行い始める
「久しいな...説明は後だ、今はお前に手を貸す」
エネルギー循環が回復し、姿勢を立て直すと
メガ・トロンへ視線を向ける
「手を貸すも何も、星間帝王は今...まぁ、今は助かりました」
同じ零世界から転送され作り替えられた
仲間であり、永遠の宿敵が彼等を救ったのだ
「だから貴様は甘いのだ、もう一仕事あるんだよ。動けるか?」
「ええ、ですが...一体何を?」
言葉を受け、メガ・トロンが遥か地中を指さす
開けられた巨大な穴の先にそれはあった
「奴の魂ごと全てを消す。無の境界へ行くぞ」
彼もまた星間帝王に全てを狂わされた存在
そして、それを倒すべくこの世界に舞い戻ったのだ
「この空間を破壊すれば、奴も早々復活はできん」
それは即ち、本体こそ破壊したが
まだその魂を蘇らせる闇が空間には無数に残っている
「俺を撃てるのは、今やお前だけになってしまってな」
「こんな日が来るとは...行きましょう」
無数の世界の中で繰り返し起こる奇跡
相反する正義が手を組む時、破壊し得ない闇は消える。
世界の命運は今光に
明けた世界は数歩の先に。
しかし、その目前には未だ闇あり。