TRANSFORMERS:FACTORS episode:21 [闇の真実]
眺めた世界は、青く美しく
あの頃の僕はまだ、未来など当たり前にあって
その日を過ごしていけば、道は続くと思っていた。
一瞬の暗転
それは幾つの時間を超えただろうか
湧き出る欲望、それは恐れや絶望から来る物なのか
希望を、未来を
何度奪われても、帰る惑星をなくしても
僕らは新たな世界を探し、光を抱き続けた
だが、一度瞳を閉じ、次に見た世界は
その時、遠くに見えた闇が写した自分の身は
奮い立たせていただけの心を、蝕み、壊したんだ。
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絶望が闇を纏い、目線の先の青空は霞む
体を取り戻したユニクロンが、不敵な笑みを浮かべ
希望の光を纏う、二人の戦士を翻弄する
「そろそろ良いかぁ...邪魔は...必要ない」
他の戦士の力が及ばないと判断すると
ユニクロンが両腕を広げる
「...我等だけを隔離しようという事か」
その手先から、無数の闇が溢れ
瞬く間に生まれたフィールドが噛み付くように
戦士を包み、この世界から別の次元へと移送する
「その様ですが、何か様子がおかしいですね」
何かが引っ繰り返ったというような、異様な景色
その景色全てに砕けたガラスの様なひび割れが入っている
異様ではあるが、突き刺さる程の闇を感じない
それどころか、光の煌きは失われず
互いにその力は対等なまま、向かい合い常に衝突しあっている
「有利な環境ではない事に驚いたようだなぁ」
目前の星間帝王の体は次第に色を変える
破滅の月と呼ばれた黄色い体はそのオーラに染まり
濃い紫から黒へと、その身を変貌させる
「ここは我の記憶の世界」
その口から漏れた言葉の通り、世界は記憶を移す
割れた世界は、その魂の現状その物だとでも言うのだろうか
「我がお前と...お前達と同じ存在であった証明でもある」
言葉を終えた口は閉じ、その顔は銀色に染まる
そう、かつてのファクトコンボイと同じ
それは、ミクロアースの人間である証。
「本当にミクロアース人...しかし、それで何が変わるというのか」
ファクトコンボイが剣を構えると
刹那の間に姿が消え、直後にはユニクロンの前に現れ
その体を守る無数の棘を裂き、火花を上げる
「奪われた惑星、その生命を背負う我等にその手は効かない」
ファクトコンボイに続きグラディオンが
攻撃に応戦するユニクロンの背後に姿を見せると
巨大な爪をグランブレードが叩き、動きを止める
「その手?そんなつもりはないさぁ」
その瞬間まで、二者の強力な力に耐えているように見えた腕が
いとも簡単に、刃を握り、遥か後方へと叩き飛ばすと
肩に添えられた砲門から無数のエネルギー弾が射出され爆炎が上がる
滑るように着地した戦士二人が爆炎を切り裂くと
既に目前のユニクロンは姿勢を変え天に両腕をかざしている
「ただ、知るべきだ...この世界の危うさを」
割れたガラスに映る世界が、無数に色を変え
その先には幾つかの記録が映し出される
嘗ての美しい惑星ミクロアース、そしてその破滅
地球での人間との出会い、第二のミクロアースの誕生
誰もが知る記録の先、バイオスーツに身を包んだ
一人のミクロマンの映像が、次第に全ての映像から切り替わる
「あれは、惑星開拓団...あのミクロマンがまさか」
「星間帝王だというのか...!?」
互いに剣を構えたまま、映しだされる事実を目に
ユニクロンが何を示すのか、その答えを待つ
「そう、あれが我であった、この世界の闇に呑まれた者だ」
映像は進む、ミクロマンは異界の扉でもない、亜空間でもない
宇宙の闇、靄のように揺らめく異常な力に魅入られ
その力の中に飛び込んだ後、消えた
僅かな暗転の後、見えた世界は巨大な工場のような施設の中
既に体は大きく変貌し、仮面の向こうの世界は異質に見える。
周囲には配下の兵器デスマルクが縦横狭しと動き
ここはデスキングの攻撃彗星の内部である事を理解させる
「星間帝王も私達と同じ変貌を果たしたというのか」
映しだされた事実、目前の存在は
多少の違いはあれ、グラディオンともファクトコンボイとも同じ
元は同じ、人間の姿を持ったたった一つの命であったのだ
「お前達と同じ弱い命さ。それにああも絶望していたのだ」
真実の先、映像は更に時間を進めていく
ミクロマンによるデスキングの撃滅、その魂の消失
そして、その目は、一つの惑星を見つめている
「死した我が魂は異界を巡り、出会ったのさ。拘束されない世界に」
軽く開いた両腕に禍々しい球型のエネルギーを湛え
ユニクロンは淡々と言葉を続ける
「超生命体の世界、我々が大きさに捕らわれない世界...」
いつでも斬りかかることは出来た
しかし、目前の異形が語る、異形の目線の事実
これもまた、知らねばその存在を切る事は許されない
この世界にある解の一つであり、戦いは膠着する
「この世界で我が魂は再起し、惑星の体を得た」
揺らめく歪な闇を中心に再構築されていく体
目前に見える惑星は、有史以前のセイバートロン
そしてこの存在が月へと変わる...既に知る歴史だ
「この世界では我等の力は数倍...無限にも高まる」
ミクロの世界のサイズに封じ込められていた存在が
宇宙の概念の変化で、その力を保ったまま
力あるかぎり巨大化し、変貌する、それ故、ユニクロンは生まれた
「我自身の変貌で気づいたのだ、この力を得られるのだと」
ユニクロンが手に宿した力を放つと、歴史は更に進み
ヒビ割れに映る世界は、異形の目線ではなくなってゆく
「知っているだろう、お前もその一人なのだから」
亜空間、ミクロマンゾーン、そう呼ばれていたもの
その中で頻発していた消失事故
その被害者たちの姿が幾つも、浮かび消える
その中には嘗てのミクロロボット、ミクロチェンジ部隊
そしてミクロマンが、ファクトコンボイ自身がいるのだ
「貴様は多くの戦士を洗脳し、超生命体の世界を混沌に陥れた」
機械生命として独立したばかりの世界に現れた力
まだ無法地帯の世界を掌握するための意識なき兵士たち
彼らは理解も出来ぬまま、争いに巻き込まれ
セイバートロンは終わりなき戦乱の中に堕ちていった
「だが、お前達のような者も生まれてしまったがな」
宙に浮いたままのユニクロンの足が、地面に突き刺さると
その腕には巨大な刃が現れ、空を切る
それまでの静寂を掻き消すように気配が喚き威圧する。
「後はこの星の力を奪い戻るだけ...だが、通してくれぬだろう?」
ゆっくりと歩き始めた足、そこにもまた骨の様な白い何かが見える
その体は未だ、この世界の住人のまま、死しても変わらなかったのだろう
「この世界の戦士として、プライムとして...貴様を消滅させる」
「もう二度と、平穏な世界を...未来を奪わせはしない!」
恐怖にすら似た威圧感を、まるで切り捨てるように
二つの力が突き抜ける、それはまるで稲妻の如く
突き抜けた刃が、振り払う大剣に激突し、強烈な衝撃を生む
「ハハハッ!!お前達はそう!!それで良い!!さぁ光が闇に呑まれる刻が来た」
力と力、光と闇その者が激突する
作られた空間は、震え、まるで踊るように刃は交差する
潰えない希望の光は、永遠の闇を切り裂くのか
漆黒に染まった異形との戦いが、始まり、そして終わろうとしている。
「燃え尽きよ、カオスブリンガーッ」
異形の胸が開き、無数の破滅エネルギーがフィールドを焼く
しかし、軽く地を蹴り衝撃を利用し、ファクトコンボイが高く飛び上がると
その刃に激しい光が宿り、薄闇に染まったヒビ割れの世界を照らす
「一刀一閃...エネルッ!」
視線が跳ね上がる光に向かう頃
その正面にはもう一つの光が溢れ、低い姿勢で
腰に携え直した刃を握りこむ、その視線の先には星間帝王を捉えている
「これが友と私の力...ブレイクッ!!」
上から下へと貫く一閃、そして横一線に振りぬく一撃
互いの心を一つにした、攻撃が星間帝王を捉える
「「斬ッ!!」」
一閃、従事に切り裂かれた闇のシルエットが破裂する
叫びか悲鳴か、異常な程の生命の声が響き
無限とも思える輝きに星間帝王が包まれる
...しかし、光が去った後もまだそこに異形は存在している
ユニクロンを中心に、挟み撃ちの形となった戦士達だが
状況は互角...そこまで辿りつけているかも危うい
「恐ろしい力だが...もっと見せろ」
胸に焼きついた十字の傷から、紫の体液を吹き出しながら
それでも尚、ユニクロンは骸骨の顔に笑みを浮かべる
確かにダメージは負っている、しかし
吹き出した体液が徐々にその身を回復させている
「時間がないのでな、余興は無しだ」
闇が跳ね、光がそれを叩く
常に世界が繰り返してきた戦いの歴史
あまりに小さな世界は、あまりに大きな世界へのつながり
その繋がりが崩れる時、どちらの世界も終わりへと歩み始める
課せられた使命ではない、ただ願う、次の平穏を
生まれた力が二度と戦うことがない未来をつくるために
彼らは立ち、抗う刃となって...この闇を切り裂くのだ
たとえその先に、元の自分が居ないとしても。