TRANSFORMERS:FACTORS episode:20 [星帝再臨]


空に浮かぶ異形
骨の様な顔は、歪に歪み周囲を眺める。

まるで美術館にでもいるかの様に
周囲の、己に向かう攻撃の意思を無視し
出現を果たした世界を見つめている。

「ここが...我等、始まりの地」

異形の名、ユニクロン
星間帝王デスキングが異界の力で変貌した
全ての世界に対する絶対的な悪

故に、幾多の世界で争いを起こし
その体は破壊され、消滅した筈であった

「そして憎き存在も全て揃っている、都合が好いわ」

過去の体を再生し、生まれた世界へ潜むことで
その闇は再び体を得て、空に佇んでいるのだ。

「さぁ、全ての命を喰らうとしよう」

わずか十数センチの体から、周囲を貫き
存在する生命から動く力を奪う程の重圧が伸し掛かる

視界が紫色に滲み、歪んだ世界に不協和音が響く
それが現実なのか、頭が理解できない程の影響を受けているのか
スパークが、光と共に鼓動する魂が軋みを上げる

別の種属が組む、あらゆる敵に負けるはずのない力が
同様に世界を超えて強まってしまった絶望にねじ曲げられている。

「他愛もない生命よ、気分はどうだ。
我を小さき器に収めたのは、よくやったと褒めてやるべきかな」

声を上げることも出来ない、空と地上に固定された戦士達が
藻掻く中、ユニクロンが気配を感じ、遥か上空を見上げる

「待ち焦がれた邪魔者の登場だな」

歪んだ空間の先、一点の光がユニクロンを照らす
それはほんの刹那、光は突き抜け、一筋の風が吹き抜けると
歪んだ世界はまるでガラスの様に砕け散る

「どっちが邪魔者か、その身に教えてあげますよ」

螺旋の大きな刺のように変貌したユニクロンの腕が
突き抜けた青い刃を受け止め、衝撃が周囲に風を生む。

その衝撃が戦士達を覆う威圧を完全に取り払うと
彼らが繋げた光が、ファクトコンボイに宿りより強く光を放つ

「...ッ、確かに繋げたぞ、ファクトコンボイ!!」

体の自由を取り戻したスタースクリームが声を上げる
それに続くように、戦士達も戦う姿勢を取り直し
目上に聳えるあまりにも小さな姿の巨神を睨む

「ほう、あの虫ケラ共はこの様な姿をしていたのか」

その言葉の一つ一つがまるで精神を煽るように薄汚く伸びる 握り込んだ輝ける刃は、怒りを鎮めるようにキンと鳴り意識を理解する

目前の死霊にも見えるユニクロンの表情が大きく笑みで歪む
まるで歓喜の時といった風に
本来眼球があるであろう落ち窪んだ闇から黒い霧が溢れ
開いた口からは無数の悲鳴のような音が漏れる

「この世界にいる限り、貴様の姿は我らと同じ。観念しなさい」

幾多の時空でユニクロンが破壊を知らされた
時の神を始めとする世界を総括するプライム達は
ユニクロンを始まりの世界へ逃げこむよう
逃げ道を塞ぎ、無数のプライムに彼らの脅威を駆逐させていた。

「愚かな邪魔者共に気付かなかったとでも?」

TFの歴史に確かに存在しながら、TFの理を外れた原初の世界
この世界では超生命体は子供の玩具に等しいサイズにならねば
その生命の形を維持できない、それを利用しようというのだ

「しかし、罠にはかかってくれた」

天からの言葉は矢のように伸び
ユニクロンの背後にグラディオンが飛来すると
そのまま剣を構え、挟み撃ちの形をとる

ユニクロンの正面から左右を囲う様にファクトコンボイ
そして軍団を超えた混成戦士達が道を塞ぎ
最後の穴を塞ぐ様に、グラディオンが背後を取る

「罠か...状況は我も貴様らも同じだがな」

距離を保ったまま周囲を囲まれたユニクロン
その体を護るように黒い霧が幾つも現れると

影は異形を形取り、戦士達に対するように立ちはだかる
嘗て別の宇宙でブレントロンと呼ばれた戦士

...しかし、そこに生命は感じられず
同じシルエットの異形が無数に出現し
まるで傀儡人形のように、呻きのような叫びを上げその猛威を奮う

「へっ、こいつらは俺達担当よ、行くぜ野郎ども」

「この影共は我らが、指令官は奴を」

襲いかかる異形をノクトロ、インセクトロン達が掴み離脱すると
僅かな間もなく上空、そして地上で激しい爆音が轟く

「...見覚えのある貴様等は直々に相手してやろう」

スタースクリーム、アイアンハイド、そしてブラスター
各々が因縁浅からぬ存在を前に身を構えると
次の瞬間には叫びと共にそれぞれの攻撃が宙を舞い炸裂する

「行くぞアイアンハイド」

スタースクリームの声に合わせ
アイアンハイドが両肩のミサイルを一斉に放つと
四方に分散し逃げ道を塞ぐ

そして開いた中央からスタースクリームの二刀が
ユニクロンの胸に十字の傷を描く...が全く動じる気配はない

「今だブラスター、俺のミサイルごと全て吹っ飛ばせ!」

スタースクリームが駆け抜けた背後に
続くようにブラスターが現れ、エレキコンドルをかき鳴らすと
その音のエネルギーを全身のスピーカーユニットが増幅し放つ

「俺の音はお前みたいな糞野郎には突き刺さるぜ?」

一瞬の静寂のあと、爆音が鳴り響き
周囲に跳ねていたミサイルを誘爆させながら大爆発を起こす
その間もアイアンハイドはハンドバルカン、ミサイルを
スタースクリームはナルビームを続けて照射している

「マイクロン、我に抗いし我が一部...邪魔をするな!!」

スタースクリーム、アイアンハイドに向け
ユニクロンが手を伸ばすと、紫の霧が吹き出し
両者に対するように人型を形成し、次第にその形は実体を得る

「予想通りだが...鬼かこいつ!?」

羽を持った鬼と言うべき存在がその爪を輝かせ
猛然とアイアンハイドに掴みかかると、両者の力が衝突する

同様に目前に鬼の姿が合わられたのを見て
スタースクリームの表情が微かに緩む
これも全て予想の内、二人に対し力を放ち
ファクトコンボイそして背後から既に迫るグラディオンを導く

「俺達が邪魔はさせない、行け!ファクトコンボイ」

ブラスターの手にマイクロンが宿るとキーボードに変形し
放つ音が無数の壁を作り、ユニクロンへ一直線の道を作り上げる

無数の輝きが景色を微かに歪め
その四方に全ての力をかけ戦う戦士達が見える

光の道を駆け抜け、その腕には刃と大槌を構えたファクトコンボイ
その目の先、ユニクロンの背後にはグラディオンが
互いの力を全て放出するほどの威力をその体に纏う

「ミクロマンの戦士、そして異邦の騎士...邪魔者め」

迫る戦士を避けるようにユニクロンが空へ舞うと
遥か下方から砕けたはずのデスキングの体が這い上がり
割れた仮面から、本来の顔が顕となり、瞳を輝かせる

「あの体にまで力を、ファクトコンボイここは私が..」

「いや、待ってください。今声が聞こえました」

ファクトコンボイがグラディオンを静止し
手にした大槌を迫るデスキングの目前の虚空向け
大きく振るうと、目前に陣形が現れ異界への扉が開く

「聞こえし声よ、プライムよ...その名は」

目前の光、そこから現れた巨大な戦士
機械とも生物とも見えるその姿、体から迸る力
勇ましい表情、その口から叫びが溢れ
その刃は真っ直ぐに伸びデスキングへと立ち向かっていく

「マグナボス見参!呼び声は君か、話は後だ、早く奴をッ」

マグナボスの刃がデスキングの肩を切り裂き
その巨体を元いた異界の奥へと押し込んでゆく

「マトリクスが教えてくれる、父さんの様に戦えと」

目前の闇、それと自分は同じ者から生まれた
だが、それを父が、仲間が、戦う勇気が塗り替えてくれた

軋みを上げ、唸る刃は歌う
勇敢なる力は、その身を緑色に輝かせ
その場で戦うすべての戦士に、力を漲らせる

「彼もまた、我等と同じプライム...」

ユニクロンを追う、グラディオンにもまた力は宿り
まだ目覚めたばかりの力を更に覚醒させてゆく

「私達は希望、消して諦めぬ者達の味方。だから勝つ事が出来るのです」

殺気にも近い気迫を目前に向けていた、その表情が嘘のように
生まれ出る力の戸惑うグラディオンに語りかけた
ファクトコンボイの口調は優しく、力の流れを正常化していく

「そうか...そうだな、この星をクーリアの様にはしない」

二つの光が、青く輝きその周りを仲間達の力が護るように覆う
それは緑の帯になって、更に強い光を宿してゆく

僅かな、小さな世界での出来事
それは人間の目には見えないような、世界の命運を握る争い

当たり前の景色が、ほんの少し歪む時
それは君の隣で起き、常に彼らは戦い続けている
そして、この長い戦いの一端が、今、終結に向かっている。