TRANSFORMERS:FACTORS episode:19 [繋ぐ光]


目前の世界が歪む
感じていた空気、世界を構成する目に見えぬ何かが
異質な者の侵食により変わっていく

陣が放つ怪しげな光の輪郭をなぞり
その内側の深淵、その先にある濁った輝き

グオッと呻き声のような音を立て
その中へ堕ち、溶けていった一つの魂が
下から迫る何かに握られるように包まれる

「あぁ時間だ、私が蘇る。私はダブルフェイス」

声はノイズが混ざり、歪み響く
彼を包む闇は、次第に指を形成し
本当にその姿を握り包んでいるように見せる

「私はユニクロン、そして私はこの闇その者」

何かを呼び起こすように、声は叫びへ変わり
闇が陣から伸び漆黒の腕が零の世界に実態として現れる

周囲には相解らず悲鳴のような音が響いている
しかし、その中に微かに高く笑う声も交じる
宛ら悪夢のように、闇の復活が始まった。

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地上から這いずる闇の気配は空にも達していた
グラディオンと出会い、カーザの魂を開放し
地上へと戻らんとするファクトコンボもまた
誰よりも強くその気配を感じ取っていた。

「この気は...いけない、我々もすぐ降下しましょう」

「あぁ、だがその前にするべき事がある、これを」

グラディオンが広げた手の中から
円形のエネルゴン結晶が輝き、ファクトコンボイの胸に伸びる

「私を導いた君へ、ダイタリオンからの預かり物だ」

光はマトリクスへと入り込むと
輝きは増し、胸に新たな結晶体が宿り輝きを放つ

「これは...ダイタリオンの力...そうか」

胸の結晶から幾つもの情報が流れ込む
ファクトコンボイが瞳を閉じると
脳から、そして直結するマトリクスから無数の世界が見える。
言葉と文字の波、その中空輝く答えを掴み、理解する。

そして辿り着いた答えを導き出し、両の腕が一つずつ掴むと
現世の肉体、その腕の中にも輝きが宿り、今にも溢れようとしていた。

「いでよ原初の鎚...ストームブリンガー」

光を掴んだまま、右腕を空高く翳すと
その腕の中に青く輝く大槌が現れ、その威力を放つ

「そして、この力でもう一つの輝きをグラディオンに」

左手の中に宿る光球をグラディオンに向け放つと
その輝きに応えるように大槌が光球を叩き
グラディオンの胸のエンブレムへと入り込む。

「体が、戻っている...いや、変貌しているのか!?」

輝きを受けて、グラディオンの体が
魂に近い状態から、本来の人間を越え超生命体へと
次第に変貌し、より強いシルエットを光がなぞリ描く

「ええ、仮初の肉体からこの世界に適応した体です」

光が体の中に潜り込み
体中を走るラインを淡く輝かせると
変貌したグラディオンが両の拳を握る

「礼を言う、これで私も全力で戦える」

応えるようにファクトコンボイが大槌を翳すと
その視線を遥か下方、決戦の地へと向ける

「礼を言うのは私の方です、これで...さぁ急ぎましょう」

強さを増す光、それは世界を繋げ変える光
しかし、その光が強くなればなるほど
闇は濃く、同様に強くなる、何度倒そうと生まれるそれは
ある意味では彼等の存在理由、争いその物なのかもしれない

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開く禍、その中から巨大な腕が伸びる
赤い手はまるで狭い穴をこじ開けるように地面に突き刺さり
青い仮面の顔は遥か天を仰いでいる

「どうしろってのあんなの...」

状況を見守ることしか出来ないパープルとインセクトロン
思案を巡らせるビッグモスとパープルであったが
少しの思案の後、一つのプランに行き当たる

「私が亜空ゲート開いたら、全員で拡散できる?」

「それって手で持てるのか?」

「持てる...か?最悪だめなら、挟まって広げなさい」

ビッグモスの普段から厳しい表情がより険しく曇るが
今の状況で打開策があるとすれば、試す他はない

「いいだろう、だが長時間は期待するな」

「数分持てば十分よ、すぐ降りてくんでしょ」

言葉も終わらぬ内にパープルの腕の宝玉が輝き
這い出る星間帝王の目前に小さな時空の歪みを作る

それと同時に、通信をつなげると
ミクロベースのオルガへ、緊急通知を送る

「おっしゃ、行くぞ野郎ども、死ぬ気で広げろッ」

ビックモス、トンボットが空に線を描くように舞い
それに続く形でパワーハッグが
クワガイガー、ドリルビットを歪目掛けて高く投げ上げる

「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」」」」

4人の戦士の叫びが響く
そして最後に残ったパワーハッグが地面を蹴り
高く飛び歪の壁を広げると、更に広く広がったその先には
この世界に存在する狭間の世界「亜空間」が広がっていた

「オルガ、そこにいるメンバー全員転送して」

『既にやってるよ、今そこに現れるはず』

昆虫戦士達が自身の全ての力を使い亜空への扉を開くと
その目前に光が走り、無数の帯が三人の戦士の姿を象る

「アイツ等は...援軍か!」

瞬く光が消えると、赤い翼の戦士が振り返りニヤリと笑う

「サイバトロンにも根性のある奴が多いな」

翼の戦士、スタースクリームが両肩のキャノンを展開し
その隣ではアイアンハイドが全訪問を正面に構える
そしてその間をノクトロが駆け抜け
手に持った巨大な光の槍を星間帝王目掛け一直線に投げ込む

「今です、全火力をエナジースピアにぶつけてください」

声を受け、互いのパートナーマイクロンが融合し
強烈な輝きと共に、虹の輝きが二つの歪の間で弾ける

「行くぞ、ナル光線キャノン!!」

「我らも続くぞ、アイアンミサイルフルバーストッ」

先行する巨大な槍に二つの戦士の力が融合し走る
無数の輝きが一つになるとそのエネルギーが
仮面を被ったままの巨大な魔神に炸裂する

爆炎と共にグオッと呻きのような声を上げたまま
星間帝王の動きが止まる、仮面は一部が砕け、角も折れている
確かにダメージは与えている、しかしその気配は変わらない

「やったか...と言う気すら起きないな」

目前の魔神から巻き起こる不安を感じさせる程の力
その大きさこそ、嘗て対峙した惑星規模の怪物よりは
遥かにも小さいが、その闇を全てこの大きさに詰め込んだような
歪な存在が目の前に、異界から顔を見せている

「その通り、俺も続かせてもらうぜ」

突如背後から声が響くと
インセクトロン達が作り上げた亜空の扉から
突如として三つの影が舞い、音波光線を魔神目掛け放つ
赤と黒の二匹のコンドル、そして蝙蝠が自在に跳ねる

そして、亜空の扉には新たな戦士の姿が現れ
舞い戻った黒いコンドルが変形しその手に収まる

「ミクロマンゾーンよりブラスター見参、さぁ決着と行こうぜ」

変形したコンドルはその手の中で巨大なギターへと変わり
掻き鳴らされた重厚な音がインセクトロン達の体で固定された
亜空の扉を固定し、その身を自由にする

「良いガッツだぜ兄弟、これでもう大丈夫だ」

解き放たれたインセクトロン達が羽根を広げると
受けたダメージも気にせずに、その武器を正面に構える

「随分遅刻じゃねぇかイカレサウンド」

「全くネ、ミーたち死ぬ所だった」

全身にショートした電撃が走る中で
まるで水を得た魚のように、生き生きと前を向き力を貯める

「悪いね、根回しってのも必要だろ?」

諦めず、顧みず、ただ戦う
その光が、何よりも力となる
その光が星間帝王の最も恐れる力

「さぁ行くぞ、ファクトコンボイまで光を繋げ!!」

誰の声だろうか、今は全てが一つのように重なる。
魂の輝きが歌う、全ての力が陣営を越え光を放つ
願いは一つ、この大地を救う事のみ

高く響く叫びが、目前の魔神を砕き破壊する
宿る恐怖、迫る不穏、その全てを掻き消すように
互いを守り、その一撃に力を加え閃光は闇を貫く

『さぁ!!コイツで終わりだ星間帝王ッ!!』

そして強烈な光が、地上に宿る禍を貫いた時
誰もが確信した、勝利と希望を

しかし、その希望を絶望は超える
禍は消えたのではない、禍は割れ、生まれたのだ

一瞬の闇が突き抜ける
そして無数の爆炎の後、戦士達は崩折れる
理解を許さないまま、奴は蘇ったのだ

「確かに終わったな、あの扱い難い体は」

落ち行く中で見た者、それは嘗て故郷を襲った者
あまりに巨大だった筈の存在

「...嘘だろ」

誰かの声が漏れた、まだ心は一つのまま
一瞬で全員が砕かれた...何が起きたというのか

「頭が高いのでな、地を這いずれ」

空に舞う絶望、その名はユニクロン
星間帝王の体を破り現れた最凶最悪の絶望

砕かれた亜空の扉が空を歪める
勝ち様がない、その力は同じ
故郷が襲われ、炎に呑まれたあの日と同じ

「だが、俺達は繋いだぞ」

だが、あの時とは違う
絶望の空の先に光が、既に見えている

「ええ、確かに受け取りました」

叫びが掻き消えた、その刹那
遥か上空からユニクロン目掛け光球が衝突する

「待ち侘びたぞ、理解不能のバケモノめ」

巨大な腕の爪を伸ばし、ユニクロンが受けた刃
その先のまばゆい光が霞消えると
ファクトコンボイの目が強く輝き、気迫を放つ

「理解できぬだろう、この輝きの意味は」

巨大な刃が、受けた爪に深く突き刺さり電撃を纏う
まるでその怒りを示すように、周囲の空気を取り込み
青い炎が巻き起こると、ユニクロンの身を焼く

「嬉しいぞ、我らと変わらぬその力、取り込んでやろう」

炎に対するように、無数の闇が霧のようにぶつかり合う
力は均等、その一撃の爆発が地を震わせる

光と闇、相反する存在が対し仕掛ける
正しく最後の戦い、その火蓋が落ちる

全ての希望は、闇を払い世界を照らす
その光を信じる者だけが、無限の力を得る
今その無限の力が、彼等の未来を切り開こうとしている。