TRANSFORMERS:FACTORS episode:1 [光への転生]
火が走る。その身を貫く炎が燃える。
圧倒的な力の差、それを感じた時にはもう既に遅い。
体を守る鎧は砕け、体は彼方へ飛ばされる。
【此処で終わるのか?】
まるで決まっていたかの様、それまでの戦いは無意味である様に
すべての景色はスローに、そして霞む。
漫画の世界じゃないのだからと、そう思う余裕すらある
「聞いてる暇が?そんなつもりはありませんよ」
漠然と聞こえた声に、虚勢を張るぐらいはまだ出来る。
だが、圧倒的力、目の前の敵は奇跡や希望では覆せない
一つ一つはどうにか出来ても、奴等は軍勢だ
どう足掻いても、一人の力では限界がある。
【お前とお前の中の力、今の自分は死しても尚、進化せよ】
死に至る間際の幻聴の類、そう思っていた声は言う
鼓舞する訳でも、まして声援でもなく
それはまるで、死んでも立ち上がり戦い続けよと命令している様だ
「言われなくても、諦める気など欠片もありませんよ」
今の自分は何者か?そう問われても答えに困る程
この力も、今の自分が何なのかも解らない。
何者でもない、聞こえはいいかもしれない
だが言ってしまえば、どっち付かず、中途半端な存在なのだ
...否、中途半端で居ることで安心していたのかもしれない
【ならば、お前の中にある最後の枷を外してやろう】
突如として景色は無の白色、そして虹の輝きが廻る世界へと変わる。
導く声に合わせるように、弾けた鎧の欠片が光り輝き
既に護るものは何も無くなった胸に強い輝きが集まり始める
【この世界のプライムよ変われ、永遠の戦いへ挑むのだ】
漠然と理解はしていた、与えられた力は扱うのではなく
その身に宿し、共生するもの...命その物なのだと。
幾多の世界で出会った、プライムという戦士達が見せた輝き
今自分にもその輝きが見える、世界を変えるほどの光。
それは同時に戦いの輪廻に組み込まれる事も意味している。
だが、それも良いだろう
残される者達を捨て、諦めて逃げる事など選択肢にはない。
「言われるまでもない、その永遠、私が終わらせましょう」
【...ならば戦え、超生命体よ】
漂う光は、周囲、そして胸から全身に広がる
光を纏っていた自分が、光その物に変わる感覚を覚える。
その刹那、元の闇、宇宙空間の中に光が走る。
全方位、異形の軍勢が犇めく闇
彼等にとっては、目標を討ち取った瞬間から僅か数秒
突如としてまるで爆発するような光が目を焼き、視界を覆い隠す
無限の闇の中にあって、目に映り遮ることさえ出来ない光
彼の胸に宿された、英知の証がまるで命その物であるように輝きを放つ
【戦うのならば与えよう、揺るがぬ魂へ...無限の光を】
時の進みは既に正常へと戻っている
目前の星帝の軍勢は光に狼狽えながらも、各々の兵器を向けている
絶望的な状況は既に、それを凌駕する力の目覚めに降された。
数秒前とはもう違う。既に変貌した体はまるで光その物となり
放つ輝きは光輪となり周囲の異形を意図も簡単に破壊する。
「どんな手品かは知らないが、何をしたってお前はもう死ぬ」
蜂のような異形の姿をした戦士が声を上げる
まるで遊んででも居るように、攻撃の手を緩め
目の前に巻き起こる光も余興程度にしか思っていないのだろう
「そのお前と言うのは、ここに居る誰の事でしょうね?」
薄ら笑いを浮かべた戦士の背後に突如として青い光が走る
その刹那、戦士の巨大な頭を支える首筋に刃が当てられ
今にも切り裂かんと、切っ先から波動を放つ
「貴様ッ何をしっ...ッ!!?」
驚嘆の声は、瞬く暇すら無い内に断末魔の叫びに変わる。
振るわれた青い刃は異形の戦士を2つに切り裂いたのだ
その斬撃は周囲に居た別の異形をも巻き込んで弾ける
「皆さん、地獄へ帰る時間のようですよ」
幾つかの爆炎、砕け散った残骸がかつての姿を思い出させる
全てを破壊する地獄の兵団
一人でも艦隊に匹敵する力を持つにも関わらず
ほんの数秒で既に何人が破壊し、無残な悲鳴を上げ死んだのか
理解よりも先に、青い光が目前を切り裂いて往く
今、困惑し怯える感情を覚えたこの体も、次の瞬間には...
「超光...エネルザンッ!!」
全てを飲み込む光の矢、潰えた異形の最後の一匹が爆炎を上げる。
死屍累々、地獄絵図の先にたった一人の影が立つ。
彼の名は、ゼロユニバースのプライム、ファクトコンボイ。
その生命を光に変えた者、宇宙根源悪たる星間帝王を砕く者
善き人それを勇者と呼び、悪しき者、それを修羅と呼ぶ。