TRANSFORMERS:FACTORS episode:18 [反逆の羽音]


「インセクトロン!容赦はいらねぇ、全員潰せ!!」

割れた大地に伸びる文様、無数に這い出る異形の渦
地上に現れた異質な力の戦士が放った術が
崩折れた魂達を現世へと蘇らせているのだ

対するは一人地上に向かったーアーデンパープル
そして、彼女の救援信号を受け駆けつけた
銀河の荒くれ昆虫部隊インセクトロンの面々

這い出る異形を次々と打ち抜き
当初劣勢だった状況は覆りつつある
...しかし、目前の敵の表情は変わらない。

「そこのクソバイク野郎、形勢逆転よね?」

軽く宙に浮いた姿、体は小さいが気配は重く
星間帝王の持つ汚れた血・ダークエネルゴンが
その周囲を守り、同時に異形に仮初めの命をもたらす

「お前たちに用は無い、消えろ」

「あぁ?私のシマで勝手やって何言うとんじゃボケが」

怒りを露わにし、腕のキャノンを構えたするパープルに
インセクトロンのリーダー、ビッグモスが続く

静止した二人に対し、周囲ではインセクトロンの戦士たち
トンボット、パワーハッグが大立廻りを演じ
そして軍団を越えて仲間となったクワガイガー、ドリルビットも続く

「今よりこの場は、帝王様の再臨の地となる」

全ての意思を意にも介さないまま
球型のダークエネルゴンに包まれたダブルフェイスが空へ舞う
周囲の空は、濁った青空が更に雲に覆われ暗く歪む

「あのクソ、無視しやがる」

「そうカッカしなさんな、野郎に目にもの見せやしょう」

ビッグモスが遥か上空に浮かんだ球体を睨むと
その口元に無数に光が宿り
その口内から鋭い光の矢が伸び、即座に放たれる

「...!?さすが蚊の化身」

「褒めてんのかそれ...じゃねぇ、追い打ち追い打ち」

ハッと我に返ると、パープルも続けて背中の音撃砲を放ち
光の矢を背後から押す形で追撃をかける

一つの攻撃では、膜の破壊はかなわない
...しかし、渾身の力を組み合わせれば、話は別である

「よぉし、テメェ等!息合わせろ、合体攻撃で行くぞ」

号令が飛ぶと、無数の悪鬼を砕く昆虫の化身達が動きを合わせ始める
ある者は悪鬼の首を噛み砕き、ある者は数匹を蜂の巣にし
まるでどちらが地球を守りし者か解らないほど、容赦などという物はない

「アイサー、パワーハッグ!チェンジしてジャンプ、OK?」

地上から舞い飛び、悪鬼を砕きながら天空へ舞い上がる赤い一閃
トンボットの刃のような4枚の羽が紙を切るように悪鬼を切り裂く

「おうとも!よかど!いっちょ本気ば見せんばい!」

折り重なり、山になってダークエネルゴンの電撃を放つ悪鬼達
しかし次の瞬間には、その山が爆発し四方にはね飛ぶ
その内部には強固な体と圧倒的な力を誇るパワーハッグがいたのだ

声を受け、パワーハッグが変形し完全な円形に変化すると
その強靭な足で地面を蹴り、空へ舞い上がる

先に空を舞うビッグモスのニードルミサイルに続くように
二人の戦士が猛然と宙を駆ける
刹那の間、ニードルはダブルフェイスを護る膜に到達し火花を散らせる

「ふん、愚かな真似を...貴様らの攻撃など」

「通じないだろうな、だが俺達はチームなんでな」

激しく火花を散らせるニードルが、突如として勢いを増す
パープルの放った音撃砲がまるで釘を打つ様にニードルを叩いたのだ

一撃目は亀裂を、2撃目は一瞬の衝撃が膜の力を上回り
ついには一部を破壊し、破裂したニードルが爆炎を上げる

「...っ、愚かな..邪魔をするな」

無機質な表情からも伺える程の怒り
ダブルフェイスの腕から無数の砲撃が放たれるが
その威力は体の原型を超え、腕が異質な方向に歪みを見せている

「ソーリー、まだまだ邪魔させてもらうよ」

太く伸びる光の帯を交わし、トンボットが宙に舞ったパワーハッグを
背後から叩くかの様に突撃し、僅かに開いた膜の割れ目に叩きこむ

「せからしかぁぁぁぁぁぁッ!!」

雄叫びは空気を震わせ、衝撃は壁を破壊する
僅かな亀裂は、強靱な巨体の衝突に完全に圧倒され
歪な形に変形したかと思うと、砕け散る

「なんだと...こいつらの力は一体」

絶対の障壁が砕かれ、流石に驚愕した声を上げるが
その目前には回転を終え、変形したパワーハッグが既に迫っていた

「まだ終わりじゃなかとよ!おいば必殺、ハック地獄車ッ!!」

不意のダメージはダブルフェイスの体から自由を奪い
伸びるパワーはッグの腕を振り払うことも出来ないまま
まるで砕くかの勢いで頭を掴むと
勢い任せに振るい地上目掛けて叩き投げる

「...フッ...フフッハハハ」

しかしダブルフェイスの口から嗤笑が漏れ
割れたマスクの下の口元は破顔のまま地上へと勢い良く下っていく

目前の地表、悪鬼の残骸は円を描くように並び
悪鬼を呼び出していた陣形が見る見るう内に形を変えていく

攻撃を終えたパワーハッグを背中に乗せ
地上に目をやったトンボットが思わず声を上げる

全てが手の内だとすれば
ダブルフェイスの犠牲すらも想定の内だとすれば...

「リーダー、これはマズイ...罠のようだ」

星間帝王再臨の儀
巨大な体を呼び出す為の、全てが犠牲

ダブルフェイスが地上、陣形の中心点に落ちる事は
それ即ち、儀式の完了...星間帝王の復活を意味している

「悪鬼は贄で陣形は復活の為の物...正気じゃないわ」

「んなバカな...くそっ力が強まってやがる、嬢ちゃん乗れ」

ビーストモードに変形したビッグモスがパープルを乗せると
それに続く形でクワガイガー、ドリルビットも退避行動に移る

既に周囲はダークエネルゴンの重圧がのしかかっている
煙をあげて地上へ落ちるダブルフェイスの笑い声が木霊し
次の瞬間、衝突音と爆音が響き、陣形はついに輝きを放ち始める

『こちらファクトコンボイ、そちらの状況は』

その刹那、遥か上空から光が伸び、通信機から声が跳ねる
闇の覚醒にまるで惹かれるように希望の光は現れる

「こちらインセクトロン、既に可愛子ちゃんと地獄の真っ只中だ」

「あんたやらかしたの?...そう、正に地獄...悪魔の顔が見えてやがるわ」

通信の最中、既に陣を象る円形に異界の扉が開き
異質な世界の向こうから、最悪の悪夢が姿を見せ始めていた

星間帝王デスキング、又の名をユニクロン
ミクロマン、TF両者が最も恐れる存在が
ついに地球上へと、直接現れたのだ

遥か上空、ファクトコンボイとグラディオンもまた
その気配、そして通信から状況を把握すると
その身を光に変え、瞬く間に地上へと降下してゆく

「来た様ね...で、私達で何とか成るかしら?」

「デスズヘッドの奴が仲間連れてくる筈だが...まっ頑張ろうや」

あまりにも強大な力、まだ不完全ではあるが
既に空を歪め、地上を汚し始めている

この悪神が完全に蘇り、地上に降り立てば
果たしてこの星はどうなってしまうのか...

絶望と共に、世界の命運を決める戦いの幕が開く
この先は、全ての命が光となり、戦う時。