TRANSFORMERS:FACTORS episode:16 [罪の先に]
始まりの宇宙、それは超生命体が存在しない世界
小さき異星人と、地球人が手を取り合った世界
そして、遥か未来、人と機械の心が共に生きる世界
この世界で全ての世界を蝕む闇が生まれた。
だが、この世界に光を宿す希望もまた生まれる。
零の世界は全ての終わりの後にあり
零の世界は生命を再び輝かせる輪廻の始まり。
生きる意味を得よ、再び戦いの空を舞え
今この時は、己の心のみを信じ
与えられた所属を捨て、共に戦え。
この世界では、存在する己等が唯一無二
歴史の始まりを刻む時、長い因縁が終わる
これまでの生命のか背から解き放たれた、光を宿す魂だけが
この世界を食らう星帝を打ち砕く希望
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「成程、この世界に嘗て星間帝王という侵略者が現れたと」
映しだされるモニターに映る、過去の記録
ノクトロ、アイアンハイド、スタースクリーム
3人がそれぞれ眺める情報は、想像もしなかった
他のどの世界にもない、未知なる世界の記録だった
「で、ミクロマンってのがそれを倒したと...知らん名だな?」
眉間にしわを寄せ、多すぎる情報を詰め込むと
今にも限界だと言わんばかりにアイアンハイドが声を上げる。
「それは僕達のこと、あとファクトコンボイもそうだよ」
モニターを操作し、解説を務めていた少女が笑みを浮かべ
不思議そうに首を傾げている
「ホントかオルガ!?一層混乱してきたぞ...」
彼女の名はオルガ、まだ若いが立派な戦士であり
今もこの世界を理解する為の指導を任されている
「この世界では俺達の方が異端者なのさ、深く考えるなよ」
アイアンハイドの背中を軽く叩きながら
スタースクリームが立ち上がり、窓の外、遠く空を眺める
「しかし、俺達デストロンを信用するのか?」
スタースクリームもアイアンハイドも、デストロンの兵士
本来であれば敵として戦うはずの相手だが
なんの疑いもなく、この基地に滞在する事を許されている
むしろ歓迎すらされている、それもまた不思議な状態である
「裏切られるまでは、心から信用している」
まるで疑問の言葉を待っていたように
壁にもたれかかったままのノクトロが言い放つ
「別れの時までで構わない。信用させていてくれ」
虚空に手を開き、かすかに笑みを浮かべると
ノクトロがその場から瞬時に姿を消す
どんな魔法かは解らないが、すでに気配すらもない
「ノクトロは忍者なんだよ~」
「NINJA!?NINJAってなんだ!?」
賑やかな室内、穏やか過ぎる程の世界
平穏を喰らう、異形がこの世界には確かに居る
共通の敵を見据えた時
常に争い、互いを知り続けてきた戦士達は
何よりも強い、互いを救うパートナーとなる
加えて、この地は彼等が争う事など想定もしない
ある意味では楽園なのかもしれない
だからこそ、異形はこの世界を憎み壊そうとするのだ。
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異界の戦士達がお互いを知る頃
既にこの世界を知る者達には脅威が迫っていた
「あ?...なんで、ジャイアントアクロイヤー?」
苛立ちを隠す様子も見せず
アーデンパープルの腕が巨大な兵器を意図も容易く破壊する
苦みばしった表情、上下に激しく擦り悲鳴を上げる歯が
彼女の感情を、見るまでもなく理解させてくれる
「嫌味でしょうね、恐怖の象徴。そして貴方達の兵器」
巨大な機械の兵士が、同時に何機も真っ二つに切り裂かれると
直後に起こった爆炎の中に光る目
対照的に、まるで感情も見せないまま
ファクトコンボイもまた、その刃を振るい続けている
【ジャイアントアクロイヤー】
アルデバラン・アーデンの生み出した最強の兵器
その1機で人間社会を破壊し、地球を破滅させる程の力を持つ
だが、それも過去の話。
何の力も持たない一兵卒であれば未だに脅威であろうが
最早超常現象の域に達した猛者の前では木偶の坊に等しい
「出すならせめて強くしとけってんだよ!!」
まるで怒声にあわせるように、爆発が連鎖する
キュンと悲鳴を上げて放たれた高エネルギーの帯が
巨神の腕を焼き切り、落ち始めた腕を踏み台にして飛び上がる
遥か上空、まるで軍隊蟻のように山と存在する巨神
パープルは虚空に指で幾つかの線を描くと
その軌跡に鮮やかな光のラインが生まれ、重なり陣となる
「コンボイちゃん、避けないとアンタにも当たるわよ」
小さく描かれた陣が、その手に持った刃を翳す事で
数倍にも巨大化し、描く光の一つ一つから
まるで地面へ締め付けるような強い力が滲み出る
「そういうのは、やる前に行ってもらえますか」
言葉と共に、パープルの真横にファクトコンボイが現れる
マトリクス、そしてエネルゴンの力その物と化した体は
力の流れ、使い方を変えることで体の転移までも可能とする
「うへぇ、私の縛り効かないんだ...バケモノめ」
うんざりと言わんばかりの表情を浮かべながら
軽く手に持ったい刃を振り下ろすと
陣がそれに合わせて、まるで巨大なハエ叩きのように
無数の巨神達を叩き潰しながら地面へと飲み込まれていく
人が地表へと落ちていく、それは即ち
未だ機能する者達も、人のエネルギーが切り裂き潰すという事
容赦の無い、追い打ちと言うべきだろうか
「徹底してますね、さすが惑星を破壊するレベルの戦士です」
嫌味だろうか、だが憎悪や敵意は感じられない
確かに、今よりはずっと弱いがこの力が
そして今叩き潰した巨神の力が
隣にいる、今は仲間である戦士の故郷を壊したのだ
「後悔してると言えば可愛いかしら?」
「それがあの時の貴方の使命だったのでしょう?大事なのは今ですよ」
本当に、何も思っていないのだろうか
友や、家族の仇である私と肩を並べるこの男が私は理解できない
嘗て戦った、戦士達もそう、希望だけ、勇気だけ
恐ろしいほどに前を見ていた
死んで解った事がある、自分の行いの意味と重さ
言葉にしても意味はなく、誰にも許される物でもなく
ただ出来る事は、醜態を晒しても生きて世界を見続けること。
この眼の前の正義という化物が
ただ唯一敵だと認識している物が、どれ程の愚かな生き物なのか
それを知り、その先の世界を見据える事
「死んでみて解るとか、私も十分化物だわ」
口から漏れた微かな声は、まるで笑ったようで
表現し難い、何かが、漏れている
「無茶しますねぇ、命の無駄使いは良くないですよ」
「先生かっての、出来る事をやってるだけよ」
この先の未来はどうであれ
今はただ、手を取り合う事が運命
歯車は絡み、この世界は動き始めている
『..聞こえるか、こちらネオノーチラス、トムだ』
通信システムから突如として声が響く
正式な部隊には属さないファクトコンボイと密かに手を組み
その無数のコネクションから情報を集めていた
ミクロマントムの声であった。
「トムさん、どうしました?」
『暗黒エネルギーがそちらに迫っている、しかもそれが...』
声色からも驚愕の色を感じさせる
張り詰めた空気が、意識を重く染める
『バロンカーザと示している、確かに死んだ筈なのだが』
バロンカーザ、海外部隊が嘗て最も苦戦した強敵
旧大戦の激戦の後、確かに打ち倒されたはずの存在。
ミクロマンよりも先にミクロジウムを駆使した術師でもあり
後年も影響もお残し続けていた事は確かだが...
「星間帝王の力...心得ました、迎撃します」
既にはるか空の彼方、禍々しいほどの気配を感じる
瞬く間に近づいてくるそれは、まるで悪夢その物
「お忙しいとこ悪いけど...地上にもお客さんが居る様よ」
空の気配、それに押されない程の禍の色
張り付き、体中に染み込む負の気配が
地上からも一つ、また一つと増えていく
「これ罠じゃね?どうするよ指令官殿」
「トムさんから緊急連絡は行っていますが...耐えれますか?」
向けた視線、光は相も変わらず鮮やかなほどに輝き
一瞬怯んだ心すらも高揚させる
相いれぬはずの敵、道が違えたはずの存在がこうも、頼もしいとは
「私を誰だと思ってんのよ、いざとなりゃぁ奥の手もあるしね」
言葉が放たれ、その場で伸び消える前に
青く輝く光は空に、紫の輝きは地上へ
まるで迫る気配を全て覆い、照らし尽くすそれは
抗うことをやめぬこの世界の光。
「さぁ何が出るかしらねぇ、これが罰なら受けてやるわ」
振るう手の中に剣が現れ、大地を切り裂く
目前の影、それが何かはまだ解らない
だが、勝たねばならぬ、再び生かされたのだから。
時計の針が回った後
瞳は視る、その先を
見つめ続ける事こそが
現世へ引き戻された者達への、贖罪なのか。