TRANSFORMERS:FACTORS episode:15 [獣王の剣]


少し前、微かに胸に響く力の波があった
そして、呼びかけるような音...声だったのだろうか
遥か遠く、別の世界から何かが助けを求めていた。

まだ未熟な魂は、その声に惹かれた
平穏が訪れた彼のいる世界は穏やかで
あふれるエネルギーを持て余していたからかもしれない

だが、それだけではない
何か、自分の命その物に訴えてくるような
その声は自分を、自分達を求める声だと
何故だろうか、そう確信し、引き寄せられたのだ。

---

まるで体中を絡め、纏わり付くような
無数に伸びる紫の輝きは禍々しく、嫌悪感すら覚える

セイバートロン評議会に潜み、再び世界を闇に染めんと
常に暗躍を続けていた3つの意識がついに本性を表し
魔獣ブルーティカスへと融合し、セントラルタワーを破壊した

自身の体内から紫のエネルギーを撒き散らしながら
地を揺らし歪な叫びを上げる、突如として現れた災厄
崩折れた平穏が悲鳴を上げ、都市は破壊に飲まれた

「思いだせ、争いを。悲しみは我らが王の糧となる」

3つの声が重なり、不協和音のような声が響く
理解を遠ざけるような姿形は不安を煽り
見当違いな目線の嘗ての3人の顔は生者のそれではない

「全ての世界に滅びを」

まるで抵抗もできない世界に飽きたとでも言うように
異形の姿が変貌し、巨大な魔獣へと姿を変え
三本の首、大きな顎が開き、多量のエネルギーを貯めこむ

その狙いの先、タワーが存在していた地点目掛けて
巨大なエネルギー波が今にも放たれる...その時である。

「天よ!力を!マグナブレード、一刀両断ッ」

空気を貫き、叫びが轟く
曇天を突き破り、一点の光が猛然と魔獣へ迫る

「ブルーティカス!これ以上の暴挙は許さん!!」

それは刹那、今にも火を吐かんとする魔獣を
巨大な刃が叩き伏せ、そのまま天空へと叩き上げる

あまりにも巨大な体、圧倒的な力
迸るエネルギーが全身に稲妻のように走り、その身を照らす

その姿こそ、知恵と勇気と愛をもって戦う巨神
この世界を守りし者「マグナボス」が姿を見せたのだ。

「現れたか、我らと同じ存在でありながら何故邪魔をする」

再び異形へと姿を変えながら、ブルーティカスが激昂すると
答えを聞くまでもなく、両の腕から雷撃を放ち
その間にも背後からは無数の腕が伸び、攻撃を追加していく

「ふざけるな!その薄汚れた力と同じである物か!」

迫る無数の攻撃を剣の一振りが粉砕し掻き消すと
剣を高く構え、気迫の声と共にその足が深く踏み駆ける

揺れぬ信念、刃のように鋭く突き抜ける叫び
一歩踏み出した後には禍々しい闇が消え光が宿る

その巨大な体が歩めば、世界は光を得る
希望が舞い降りた世界では、その力は無限にも高まる

「異形よ闇の世界へ帰れ!獣王ッ一刀両断!!」

叫びと共に舞い上がった戦士の体に
光を取り戻した世界が力を与え
その刀身は数倍にも巨大化し、一直線に異形を捉える

「ッ!?これ程の力...おのれぇぇぇぇッ!!」

巨大な光の刃がまるで飲み込むように異形を叩き
跳ね跳んだ体が悲鳴とも、衝撃音とも判断できぬ音を上げ舞う

しかしそれでも尚、異形の命は尽きておらず
大地へ叩き付けられる目前、次元の扉を開き逃げ込む

マグナボスも扉へと迫るが、既の所で閉じた扉は目前で消滅し
気配もわずかに残る程度、ほとんど感じられなくなっている

「逃げられたか...しかし、また何か起きているのは間違いない」

世界の一端の危機は去った、しかし都市は襲われ
異形は「我らが王」とも言い残している

「もしや、微かに聞こえる声と関係があるのだろうか」

エネルゴンの力を使う度、聞こえる声
はっきりとは聞き取れないが
確かに助けを求めている、そう感じる声が聞こえていた。

「手がかりは...奴の微かな気配、それに声か」

遥か天空を見上げ、マグナボスは静かに息を吸うと
その体が光のオーラに包まれ、巨大な光の玉となる

「よし、行こう。まだ見ぬ仲間が待っている」

瞬く暇もなく、光は矢のごとく空に突き刺さり
今では星のように微かな点にしか見えない

その光の力は果てしなく、遥かまだ見ぬ友のため飛ぶ
彼が行く先、それは歴史の始まりの地
そして最も恐ろしい悪意が潜む世界

この悪意を砕く巨神の力が
小さき青い光の戦士と出会う時、希望は無限となるのだろうか
零の世界の時は、確かにその足を進めている。
その行く末は光か闇か、全ては彼等にかかっているのだ。