TRANSFORMERS:FACTORS episode:12 [真か、疑か。]


無数の戦いを抜けて、
野望も、友も、帰る軍団すらもない
残ったのは世間に与えた医師という肩書
何故だか随分と評判は良い。

さが、その医師という肩書もまた
本当は正式な物ではなく、所謂、無免許医師だ

それなのに、何の因果かあの戦いで、名は知れ
噂には尾ひれがついて、勝手に信用が生まれたらしい

お陰で、行く場をなくした屑のような日々も
その日を生きるには困らなかった

そんな中で、一つだけ気になる話を聞いた
「死者の魂が眠る時空がある」
お伽話だと思いはしたが
この数年で、その話よりも余程現実味のない世界を見た

どうせ腐るほど時間もある
何も出来ずに居たモヤモヤの消えぬ毎日の原因を
解消する意味でも、探してみようと思った。

一つだけ...一つだけ心残りがあった。
あの戦いで、私は友を亡くしたんだ。
奪うのは好きだ、だけど奪われるのは...気に食わない。

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スタースクリームそしてアイアンハイドが
死の世界において転生を果たす少し前
ファクトコンボイは、新たな時空間の歪みを察知していた

「座標なし、星帝の軍勢がまた出たようですね」

数値の狂った時空の歪を示す座標
星間帝王の手が伸びている零の世界では
今や何が起きても不思議ではない

単身、目標地点に向かったファクトコンボイは
そこで無から、更に深い虚の世界へと繋がった
本来では開くはずのない扉に出会ったのだ

「これは...一体...」

虹のような輝きと、光をも喰らう漆黒
相反する物が同時に存在し折り重なる
それは足を踏み入れることの出来る世界なのか
それとも目に見えている別の何かなのか、それすらも解らない

『無数の生命の声が聞こえる、善も悪もだ』

胸のマトリクスから声が響くと
無数の光の粒子が小さな戦士の姿を構成する

「ベクト、戻ったんですね」

『ああ、そしてここが最後のポイント、死の世界だ』

無数の世界に星帝と戦う為の意思を届け
舞い戻ったファクトコンボイのパートナー「ベクト」

彼女は言う、目前の世界は死の世界であると。
そして此処に最後の希望をつなぐ存在たちが居ると

「なら、足場はあるみたいですね。行きましょう

『そうだな...まて、客のようだ』

ベクトが気配を察知すると
背後に新たな時空ゲートが展開する。
回転する光の渦から現れたのは、赤い体の戦士だった

「失礼。そこのお二方、私も御一緒よろしいかな?」

細い体、整った顔つき、そしてデストロンエンブレム
紳士的な口調の裏に、微かに歪な意志を感じさせる
如何にも信用ならない気配を放っている

「君は?所属は問わないが、一応敵側の方のようですが」

「私はノックアウト、一応医者をしています。」

敵意はないと示すつもりなのか
ファクトコンボイの手を握り笑みを浮かべる。

鋭い表情ではあるが、先ほどまでの怪しさ
そして、奥に感じる悪意は無い様に見える

「敵と申されましたが...あぁこのマークですか。
これはもう、意味もない、既に機能していない軍団です」

彼の世界もまた、デストロンは機能していないようだ
だが気にした風でもなく、相変わらず笑みを浮かべ
「怪しくないだろう?」とでも言うように無抵抗な姿を見せている

「その向こうの世界に用事がありましてね。友を探したいのです」

「友...亡くなった友人を探すと?」

「ええ、彼の無念を晴らした...と、伝えるだけでいいのですが」

彼に何があったのかは定かではない
だが、その言葉に嘘はないであろう事は理解できた

「まぁ良いでしょう、ただ危険な場所ではあると思いますよ」

こうして、本来ではありえないチームが生まれた
これがほんの少し前の出来事
そしてその先、出会いは増え、関係は変わっていく。

誰にも思惑があって、誰もが誰かの為に活動する
だが、何を信じ、何を目指すかは己にしか見えず
体に張り付いたマークだけが善と悪を決めるとは限らない。

「案外、隙だらけなんですねぇ...でもまぁ好都合か」

背後でニヤリと笑った血のように赤い悪魔は
半分は本当で、半分はウソ
突如現れた、全くのイレギュラーは何を思うのか。