TRANSFORMERS:FACTORS episode:11 [輪廻の始まり]
全ての生命が永遠の輪廻の中を繰り返し旅をする
その旅の途中、ほんの僅かに安息を迎える世界
それが、彼等の運命の始まりの場所であるゼロユニバース
この世界と資した者達の世界の壁は極めて薄く
ある特定の力を持つものならば、死との境界が極めて曖昧な世界へ
意図も簡単に足を踏み入れる事も出来てしまう。
そんな危うい歪み、それを波打つように巻き起こし
血のように赤い異邦人が現れた時から
この世界の時計の針は少しずつ、回りを早め
終わりの時へのカウントダウンが始まったのかもしれない。
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「...っ」
浅い眠りから目覚めるように、目前が光で覆われる
閉ざした瞳を開けると、その先には表現の難儀な
異質な世界が広がっている。
「何があったんだ...俺は、確か」
最後の記憶、迫る巨大な惑星に向けて
全身全霊の攻撃を放った後、反撃を受けて...
「そうか、俺はあの時...」
確かに完全に消滅したのだ
スパークすらも残らぬほど...だが今はどうだろう
少し体の構成が変わっている、その実感はあるが
生きていた頃と同じ感触、確かな実感がある。
見渡す世界には見覚えはないが
どうやら、何かしらの意志によってまだ死ねなかったらしい
「さて、どうしたものか」
ここが何処なのか、自分が本当に生きているのか
何も解らない、漠然として何もない
考えも浮かばぬ頭に、突然声が響く
「あー!!お前、スタースクリームじゃないか!!」
後方から突き抜けるような声が響く
聞き慣れた声、それは嘗ての仲間の姿だった
「アイアンハイド!?何故こんな所に」
体の色は変わっているが、見間違えるはずもない
硬すぎる程の生真面目さが言動から滲み出た
不器用を絵に描いたような個性は真似できる物ではない
「いや、俺にもさっぱり...確かに死んだはずなんだが」
「何!?お前も?では皆ユニクロンにやられたというのか?」
己の知らない未来、それは絶望であったのかと
あまりにも救いのない現実を予見し、表情が曇る
しかし、実際には良くも悪くも大きく異なっていた
「いや、俺が死んだのはお前より随分後だ。
平和にはなったんだ...ほんの少しだったけどな」
アイアンハイドは多くを語ってくれた
両軍が手を結び、ユニクロンを撃退したこと
世界は大きく変わり、デストロンは影に追いやられたこと
そして、メガトロンが何かに取り憑かれたように変貌し
また世界を破滅に追いやろうとしていると言う事実
サイバトロンもまた、平和の中で幾つもの思想がぶつかり合っているという
「あぁでも、いい事もあるぞ!子供達はみんな立派になった」
「おおっそうか...良かった...」
暫しの静寂、異質な気配の世界
現状は理解できたが、何故ここにいるのかは謎のままだ
「しかし、どうする?お前もいきなりここに居たんだろ?」
改めて、辺りを見回してアイアンハイドが頭を抱える
あまりに掴みどころのない世界、気が滅入る。
「困ったものだな...?待て、何か聞こえないか」
遥か彼方から、機械音のような...呼び声にも聞こえる何か
微かにしか聞こえないが、それは確かに耳に残る
「本当だ!よぉし行ってみるか!」
僅かな兆しに、何の疑いもなくアイアンハイドが駆け出す
遥か遠くまで続く道は、先に何があるのかも検討もつかない
「あっおい待て...だが、他にすべき事もないか」
スタースクリームもまた、不思議と足が軽く
疑いの念も浮かばぬまま、先を往く友に着いて行く
音は何処か懐かしく、いつも聞いていた声
思い出せそうなのだが、何かが引っかかり邪魔をする
何であったか、とても大事な何かだった筈なのだが
「おおっ部屋のような物があるぞ!」
少しう進んだ先、景色は変化しなかった筈だが
目前に突然、四角い部屋のようなものが現れた。
まるで予測が付かない、怪しさだけが十二分にある世界
だが、その部屋の先に思い出せない何かがある
そう感じられる、言葉に出来ない確かな感覚があった
「よし行くぞ待っていろ...グリッド!」
「そこにいるんだな、サーチ!」
漠然と、名前が口から流れ出る。 誰の名前だったか...そうだ、それは友の...大切な小さき友の名前
瞬間、脳裏に言葉が走る。「マイクロン」。
我らの友、常に寄り添い、進化を共にしてきた戦友
そしてそれを求めるように、足早に部屋の中へ飛び込む
すると世界は光りに包まれ、眩さに目がくらむ
思い出せた、全て思い出せた
しかしだから何があるというのか、視界が回復した先
目に写ったのは、あまりにも予想外の存在だった
「お前は...コンボイ...か?」
知っている姿とは随分と違う、しかし気配が告げている、似ているのだ
目前の存在は、サイバトロンの総司令官コンボイだと
記憶と共に回復したセンサー類も同様の探知結果を示している
「あー!!サーチ!!」
驚愕していると、アイアンハイドは違う驚愕の声を上げる
最早情報の供給に処理が追いつかない
向こうも、こちらの存在に驚いているようであったが
それ以上に、驚くべきはその足元に共にいる存在だった そう、よく知る友達の姿があったのだ
「ほう、貴方達が彼らの...私はファクトコンボイ、迎えに来ました」
敵意すら見せないコンボイであろう存在
彼は言う、迎えに来たと。
そしてマイクロン達がいる、この状態は一体何なのだ
何もかも解らないまま、世界はまた動き始めた
もう二度と、感じるはずの無かった熱と共に。