TRANSFORMERS:FACTORS episode:2-8 [決戦の地へ]
再び、友の気配を察知したのは少し前
本当に偶然というべき、僅かな反応が
持ち帰った友の魂に反応し、私に教えてくれた。
何故こうまでするのか、自分も解らなかった
友人なんて他にも居た、手駒の一つだと思っていた
だがどうだろう、彼の命が奪われ
その体は蹂躙され、その末路を見て感情が漏れた
初めて感じたのだ、失う事の悲しみを
「ウォーブレークダウンの反応が...あの世界に?」
まるで呼んでいるようだと、この時は思い
その先に起こる、考えているよりも厄介な事象
何よりそれは罠かもしれない、そんな事すら考えず
足は前に進み、時空を歪め生み出した狭間へと飛び込んでいた
見慣れた歪な狭間の中
遥か遠くに見える、やたらと輝く世界
不安や恐怖がない訳ではない
だが、あの世界には彼が居て、良い思い出もある
不可解な状況である筈なのに
不思議と心は軽く、飛び込んだ世界の先に
いつの間にか無くし、信じられなくなっていた
かすかな、本当に小さな希望を私は見ていたのかもしれない。
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この数ヶ月間、日本を始めとした地球の各所で
不安定な異界への扉が開き
それと同時に極めて大きな2つの力が検知されている
「こりゃぁ、アクロイヤーと...星間帝王の力?」
やたらと装飾の多い見るからに悪そうな女性が呟くと
そのとなりで同じようにデータを眺める巨大な戦士も続く
「この境界の曖昧さも危険だ、専門家としては興味深いけど」
「ねぇバルクヘッドちゃん、これ全部閉じれる?」
この世界では巨人である人間が使うパイプを抱え
ある一点を睨見ながらローズが問う
「どうだろうなぁ、ローズさん手伝えないんでしょ?」
「んーちょっとイイ男に渡す物あるからねぇ」
気の抜けた答え、まるで危機感のないような会話を交差させる二人だが
その視線は常に動き、この一連の流れの答えを探る
「あぁファクトコンボイね、彼には伝えてあるんだけど...」
バルクヘッドがモニターを指でなぞると
出現ポイントが光線で繋がれてゆく。
まるで規則性がないように無数に漠然と開いているようだが
何かを避け、円を描くように動きながら
次第にある一点に向かって進んでいるのだ。
「ほ~これってのは...何かあんの?」
「最初は解らなかったんだけど、君達にデータを貰った中の
ミクロマゾーンの展開地点に向かっている、そう見えるね」
「で、物凄い数の敵が出てきてたり出てきそうだったりすると」
「そう、だが何より警戒すべきはその背後に居る者だね」
無数の異形を目覚めさせながら、次第に到達点へと向かう力
今はただの扉でしかないそれが、まるで意思を持つように向かう先
未だ見えない、答えを求め、バルクヘッドは思考を巡らせ続けている
そしてローズもまた、幾つかのデータを纏めると
背後に保管されている、マイクロンパネルを手に取る
幾つかのプロテクトに守られた歪な石版
星間帝王の魂の変質したこのパネルは
次第に形を変え、今では12のマイクロンの紋章を浮かび上がらせている
「ややこしいねぇ...まっとりあえずこれ届けてくるわぁ」
「僕も全ての検証を終えたら向かうよ、よろしく言っといて」
合う椅子がない程の巨体で画面に向かいながら
軽く手を振るバルクヘッドに応えながら
踏み出した基地の外、空から刺す日差しは目に痛い程鋭い
「久しぶりに戻ってきたけど、地球って何時も危機で大変だ」
常に戦いの最前線にある惑星
しかし、それまで見てきた世界、死んだ母星やミクロアース
それらを想えば、平和を取り戻し続けられる
ただそれだけでも十二分に平穏で強い星なのかもしれない
そんな事を思いながら、パネルと共に輸送を頼まれていた
巨大戦艦ユニットに乗り込むと、遥か大空へと飛び出してゆく
「グランドベース、発進するわよ。どうぞ~」
巨大な船が空を舞うと、その周囲には後に続くように
ロボットマン、そしてミクロロボットたちが続く
人々の知らない世界で再び戦いが始まる
ふとした瞬間、微かに見えた光、通り過ぎた影
それ等は皆、人間たちを護る戦士達の微かな痕跡
この地球に残る幾つもの戦いの軌跡
嘗ての戦いの記憶は悪の潜む地点を示す
その果てに、何が待つのか。
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「此方スタースクリーム、ミクロロボット客員へ」
空を駆ける戦士の光の軌跡が無数に輝く
小さな姿の彼等は、人間の目には見え難いが
それでもはっきりと解るほど、強い気配を感じさせる
「まず俺達を認め、協力してくれる事に礼を言いたい。
私達もこの地を守りたい、その想いは同じだ。共に戦い生き残ろう」
各々に届いた声に、よく似ているが全く異なる
心を持つ鋼の体の戦士達が続々と応える
「此方、タイプⅩ。気楽に行こうぜ兄弟」
「同じくタイプⅤ。硬い事は言いっこ無しです、貴方を見ればその意志は解る」
空を駆ける巨大な姿、白銀の戦士は10人の命を宿し
その隣の同型の戦士も5人の戦士が融合している
コンバイナー、合体する戦士は見た事があるが
それ等とは明らかに違う強力な互いへの信頼
同じではない魂の色を重ねあわせより輝かせる合身
「そうか...行こう、ファクトコンボイ達が待っている」
決して混ざり合わない思想であっても、手を取り合うことが出来る
互いへの考え方の違い、生命のあり方
スタースクリームは、嘗ての己の戦いの記憶
そして新たな交流の中で、自分がこの世界に呼び込まれた意味を理解する
「我々は未来の為に戦う、理解し合う為に」
一瞬の輝き、まるで何かを思い出すように
スタースクリームの体を輝きが包むと
真紅の体は、まるで空に解けるような蒼に変貌し、遥か空を駆けて征く
「地上部隊、アイアンハイドだ。地上の方も準備万端だぞ」
空の戦士達の遥か眼下、地平まで広がる荒野を
アイアンハイドとレッド率いる強化ミクロロボット部隊
そしてロボットマンバロン・エンデバーの陸戦部隊が駆け抜ける
「んでアイちゃん、今度の敵はどんな奴等なの」
アイアンハイドの背中の運転席に跨がるレッドが投げかける疑問
未だ存在すらも感知できないままの敵の存在とは何か
次元の壁が崩れ、飛び出した異形
そして未だ不安定な次元の先に浮かび上がる異常なほど大きな力
それらが一点に向かい集まろうとしている
そう感知されたのは、ほんの数時間前の事だった
「まだ解らんが、どうやら俺達とお前達両方の敵が組んでいるようだ」
「拙者達の敵...完全態のアクロイヤーか」
背後を飛ぶロボットマンエンデバーからも簡易通信が伸びる
操縦するのは協力関係にある戦士ディータ
彼女もまたアクロ化し嘗ては敵であったが
因子を除去し、今ではファクトコンボイに協力している
「両方の強力な力が検知されている以上そうだろうな...
で、疑問なんだが、完全態ってのは一体何だ?」
「拙者達はアクロウイルスと呼ばれる物を埋め込まれておってな
思考を破壊され、衝動のまま...言わば操られていた形に近い
だが、それが長く続けば体は完全に変異し意識も完全なる邪悪となる...」
言葉に続くように、レッドがその機械的表情ですら解るほど
苦々しい気配で解説を付け足してゆく
「それが即ちアクロイヤーの完全態。奴等に話は通じねぇ
資料で見たろ?体からして変わっちまうんだよ」
99年の決戦の後、アクロイヤーとの戦いは尚も続いていた
その中でアーデンや一部アクロイヤーがミクロマン側に付いたことで
アクロイヤーの中にも、変質による精神・身体汚染にまで至っていない者
まるで何かの意思に操られる様に、傀儡とされていた者が存在すると判明した
本来汚染された環境で変異したミクロマンである筈のアクロイヤーが
宇宙の彼方で早々に軍勢を作り大群で存在していた事実
アクロウイルスと呼ばれる変異とは違うアクロイヤーの誕生
未だその謎は明かされないままではあるが
悪意のある存在がアクロウイルスと汚染によりミクロマンを変え
自らと同じアクロイヤーとして作り変えたのではないか
そういった結論に至るのは、難しい事ではない
「こっちも色々複雑なんだなぁ、これが終わったらもっと聞かせてくれ」
「あぁ勿論、だから先ずは...悪い奴退治と行こうぜ」
空と地上、2つの力が決戦へと向かう
所属ではなく互いの魂を信じる者達の心は猛り
それぞれの未来へと繋げる為に命は燃える
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マトリクスの輝きは、無数の英雄たちの命の輝き
数万の時間の中で、幾つもの脅威と戦い
幾つもの災厄を乗り越えてきた、希望。
彼らは個であり総である
そして私もまた、一つであり全てである。
「マトリクスよ、叡智の光よ、魂に巣食う邪悪を滅せよ」
青い光、全身を覆う鎧が激しく輝き
胸に宿した輝きが虚空に浮かび上がると
その本来の姿、器に封印されたマトリクスが姿を見せる
その浮遊に合わせる様に、伸ばされた腕が左右に開くと
器もまた開放され、眩い光がその場に居た全ての者を包み込む
「ラチェット、君の魂を今その柵から開放します」
光が駆け抜けたあと、真っ白な地平もない世界
そこにただ一人、青い鎧の戦士が佇み
その目前には無数の触手に覆われた輝く命があり
無数の闇が絡み今、瞬間にも取り込まれようとしている
「これがアクロイヤーとなる原因だと云うのか」
その闇の気配が、放つ禍々しい力が示す
これが、視覚化されたアクロウイルスその物であり
これを断つことが、己の使命であると。
「こんな物が、皆の運命を狂わせたというのか」
輝ける3つの刃が一つの大剣へと姿を変え
その刀身から眩いばかりの光の帯が振るわれると
弾け飛ぶように魂を覆う闇は掻き消え
その光跡の先に、まばゆさを取り戻した魂だけが浮かぶ
「誰がこんな物を...感じはする、遥か彼方に根源の気配を」
刃を構えた戦士が、その刀身を軽く振るうと
眩い世界は刹那の内に消滅し
光りに包まれた全てが元の世界を取り戻し、動き始める
「...何が、あったんだ?」
ほんの一瞬、光に包まれた
ただそれだけだか、とてもつもなく大きな力を感じ
スクリーチが驚きの声を上げる。
「ラチェット、大丈夫ですか?」
医療ユニットに横たわるラチェットに
ファクトコンボイが声をかけ、手を差し出すと
その手を掴み、ラチェットが目を開く
「隊長、これは一体...全身が嘘の様に軽い」
段々と体を支配していた異質な気配は消え
ラチェットの体は既に正常な状態まで回復している
「ああ...良かった。俺が付いていながら...すまない」
メガ・トロンがファクトコンボイの方へ向くと
深く頭をさげ、自らの力不足を嘆く
その周囲には回復したマイクロン達が浮かび
彼に合わせるように周囲でユラユラと上下に動いている
「いえ、謝るのは私の方です。もっと早く辿り着いていれば...
それどころか、貴方やスクリーチ達のおかげで手遅れにならなかった」
言葉を返したファクトコンボイが、マイクロン達の動き
そして、メガ・トロン自身の新たな姿から
まるで何かを察したように、手を伸ばす
「これは...メガ・トロン、貴方の腕も」
伸びた腕がメガ・トロンの右腕を掴むと
再び胸のマトリクスが光を放ち
腕中に貯めこまれたアクロウイルスの因子を滅する
「なっ!?...これは、お前の力は一体...?」
「これが、私がこの世界に呼び戻された本当の理由なのかもしれません」
軽く胸を叩くと、宿した輝きは強く鼓動しそれに応える
闇に対する光、まるでその物の様に力を感じさせる
「アクロウイルス、この異常な力を世界にばらまき
人間、そして我々に必用のない悲劇を持ち込んだ存在を倒す」
マトリクスから放つ光が、室内に広がると
瞬く間に、光線は地図を描き、ある一点を強く輝かせる
「はぁ...こりゃたまげた」
驚きの声を上げるスクリーチをグリットが持ち上げ
照らされる一点の詳細な地点を読み取る
「此処には本来何があったのです?」
グリットの問いにスクリーチを軽くつまみ上げながら
メガ・トロンが少し思考した後、答を示す
「...そうか、ミクロマンゾーンか」
嘗て、ミクロマン達が亜空間に突入するために
専用の基地として用意した施設があった場所
ミクロマンゾーンの展開地点に、闇が潜んでいると示されているのだ
「そう、その先に全ての闇の根源が居ます」
ファクトコンボイが指差した先
決戦の地、亜空間・ミクロマンゾーン
無数の戦士達の希望が、一点へと集う時
遥か彼方、零の宇宙で闇の根源、その正体が明かされる
しかしその答に行き着くまでには
圧倒的な力を宿す闇の異形達と罠が仕掛けられている
戦士達の未来を破滅へと導かんとする者達
その脅威を打ち払い、本当の平穏を、希望を手にする時が来るのか
今は未だ見えない、深い闇の中に紛れた答えを
その手が掴みとる時、残る物は何か
今彼らの光が試される時が来た。