TRANSFORMERS:FACTORS episode:2-11 [相対する者]


突然、まるで電撃でも打ち込まれたように
失われていた視界は戻り、目の前に景色が広がる
瞬く間に流れる空は、少し前に見ていたものとは違う

「...俺は...一体」

目前には有機生命体の...女性?
金色の髪に制服...見覚えはないがあの時の光に気配が似ている。

その後ろには自分と同じ超生命体が二人
目覚めに安堵する表情、姿に敵意は感じられない

「助けてくれてありがとう、ローラー!」

瞳の端に涙を浮かべた少女は俺の名を呼んだ
そうか、生きているのか俺は

あの時掴んだ、言葉に導かれ望んだ光は
この少女を救う為に、そして自分を救う為に
誰かが、あの希望の輝きを持つ者が放ったのだ

「ローラー、お前ローラーなんだな、隊長が戦ってるぞ 俺にもお前にも遠くに声を飛ばして、希望を繋いで」

青い体の超生命体が、俺の手を握り叫んだ
姿は変わってはいるが、その生命の気配で理解できた

「あの光...そうか、ずっと俺の事も
...負けるなよ、お前とはまだ話すことが一杯だ」

巨大な船は全速力で戦闘区域を抜け
ラチェット達の待つ救護施設へ向け空を駆ける

遥か後方へと、すでに遠くに輝く光
崩れ落ちそうな程、力なく伸びた腕先、拳が握られ
精一杯の声が、光に向かい投げかけられた

「戦え、ジェイド...戦え、コンボイ!!」

一瞬、青い輝きが空を駆け
闇が覆う空をその刃が切り裂いた
まるで、声に応えるように光が闇を圧倒しようとしていた

---

対峙する破滅の巨神
その身が放つ、無数の霧の様な闇が周囲を覆う

その一つ一つが、無念の中で消えた魂の欠片であり
触れればその魂が放つ悲鳴が、無数に木霊する

「ローズさん、メガ・トロンと共にこの闇を惹きつけてもらえますか」

エネルギーを吸収し、巨大化した刃が
蘇り続ける巨神の巨大な手足を斬り裂き
悲鳴を上げるその体すらも一閃の元、光で覆い消滅させる

視線を前方、闇に覆われた魔神に向けたまま
ファクトコンボイが念じるように指を二本眼前にかざすと
胸に宿すマトリクスへと意識を集中する

それに合わせるように聖剣を融合しているマイクロン達が
本来の自信達の姿へと戻ると、6つの光となり楕円を形成する

「マイクロン達よ...マトリクスに今、力を」

ローズもまた無数の闇を打ち砕きながら、まるで自在に空を跳ね
瞬く間に、ファクトコンボイの傍らにその姿を見せる

「何する気だい、まさかデカいの以外にも何かいんの?まぁ居るか~」

「ええ、その背後...あの闇の中に」

巨神の体が完全に闇に覆われ、頭だけが闇の中に浮かび
その狂気に満ちた表情のした、身体があるであろう箇所が
左右に開くと、背後に広がる闇の狭間と融合し
まるで巨大なゲートであるかの様に、立ち聳える

「あの中!?...止めはしないけどさぁ」

呆れたような表情を見せながら
無数に湧き、迫る異形を形取る闇を
背中から伸びる巨大な爪を振るい、意図も簡単に切り裂いていく

「大丈夫!私とこの叡智の光がある限り、未来は必ず平穏に向かいますから」

無数の闇は幾ら砕いても、切り裂いても減る事はなく
湧き上がってはまるで命ある者全てを覆い尽くさんと
僅かな影からも湧き上がり、光ある存在に対し牙をむく

しかし、ファクトコンボイの輝き
その旨に宿し、命と完全に融合している宝玉が放つ光には
闇が持ち出すいかなる攻撃も受け付けず
それどころか近付くことすら儘ならぬまま消え去っている

「そういう心配じゃない...って、聞かないよな~」

ほんの僅かな会話すら途切れぬ内、ファクトコンボイは光をまとい
瞬く間に、目前の闇へと、一閃となり駆ける

それに続くように、6つの輝きが続き
ファクトコンボイを追い抜くと、伸び広がりを見せる闇の境界を
抑えつけるように囲い、球形の結界を形成し抑えこむ

「君達にも無理をさせる、直ぐに終わらせますからどうか無事で」

大きく口を開け、まるで命を感じさせない砕けた表情のまま
闇に取り込まれた巨神の体が軋みを上げ、境界が広がっていく

その姿はまるで頭の付いた小さな惑星のようで
禍々しい歪に浮かぶ暗黒意志が住まう場所の様にも見える

「私の命、そしてこの名をこの魂を受け継いできた戦士達よ」

幾つかの光が、一線となり駆ける光に寄り添うと
境界に向かい、光が一瞬突き抜け
刹那、まるで針のように闇が盛り上がり、光を飲み込む

「---ッ!!」

その身を貫くように、境界へ突撃した光を受け
頭だけを見せた巨神が声なき叫びを上げる

それはまるで破裂音の様に聞こえ、衝撃を与えながら広がる波紋
その波が、戦士達を相対する闇に届くと
異形を形取る闇達が途端に悶始める

意識を読むかの様に繰り出されていた攻撃は乱れ
何ふり構わぬと言った風に、乱雑な動きへと変わる

「メガ・トロン、戦士達に号令しちゃって。私は...あの結界をフォローする」

「心得ている...ローズと言ったか、人は見かけによらないとは言ったものだな」

一部始終を見守り、地上と空の戦士達の援護に回っていたメガ・トロンが
ローズの言葉を受け、微笑を浮かべながら返答する

見るからに悪役然としたその見た目からは想像も付かない
何かを守ろうとする行動、自身を信じる様
嘗ては過ちを犯したこともあるのだろう

それが己と同じ何かを感じさせ
友の命を案じ、戻るであろう境界を守ろうと言うのだ

何の因果か、この世界は嫌な程に自分を思い返させ
鏡写しのように、誰かを通して自分と再び戦う事を強要してくる
だが、それもまた変わっていく為に必用な試練なのだろう

「戦士達よ、ファクトコンボイは遥か闇を砕く為、向かった
我等も彼の戦いに応え、この異形共を...全ての闇を駆逐するのだ」

グランドベースから響いた声が、全ての戦士達へ伝わり
各所から叫びの様な声が木霊し、戦士達は前進する

地上も、空も全てを覆い隠さんとしていた闇は
未だ無数に湧き出ては戦士達に挑み続けているが
生まれるよりも早く破壊され、次第に闇を圧倒し始める

「さっ私達も一仕事と行くか、マイクロン達あの境界を抑えこむんだ」

既にマトリクスを形取る様に楕円形の結界となったマクロン達に
更に半身とも言える紫の輝きを持つマイクロン達が融合する

両者の力、本来であれば反する力が使用者の意識を介して適合し
結界は完全なマトリクスのシルエットを形成し
より強固に境界を完全に抑えこみ、輝きのまま動きを止める

「願うなんてガラじゃないけど、無事に戻りなよ」

もう既に何も見えなくなった闇に輝く光へ呟く、ローズの目の先
闇に覆われていた空は、砕かれ青を取り戻し始めている
振るい叩きこまれる拳が、高熱戦で焼きつくす光線が
その全てが命と願いを乗せ闇を撃つ

人間の目にはほとんど映らない、小さな世界
そこから這い出で世界を覆わんとする闇を食い止め
戦士達は戦い続けている...
そして、闇の向こう側でも、もう一つの戦いが始まろうとしていた。

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漆黒、何もかもが闇に包まれた世界
真っ黒な水の中に飛び込んだ様でもあり
闇が全身を押さえているようにも感じられる

だが、同時に視界を全て黒く塗りつぶされた様な
無の中に放り込まれた、そんな感覚でもある
真逆の感覚が体に宿り、同時にどちらも感じない

現実からは程遠い、虚構感を感じさせる

「...そこに居るのでしょう?」

闇の中の影、その姿が突然眩い光に包まると
右手に宿した刃が、闇の中の一点
目の前の虚空を一点に切っ先を向ける

「αH7を纏いし者。大いなる力の器たる存在、お前は我と同じ...」

刃の先、闇の中から、それよりも更に深い黒いシルエットが浮かび
強烈な程の気配は、その輪郭を更に際立たせる

人の形をしているが、長く伸びた尾を持ち
闇の中でやたらと輝く赤い瞳が此方を見つめ
全身にギラついた輝きを持つ体は、生物とも機械ともとれる

「私とお前が同じ...?」

その存在を察しマトリクスと反応を示し、輝いている
「我と同じ」その言葉が思考の奥に張り付く
生命と同期したマトリクスが、その言葉を否定しないのだ

「我は皇帝、アクロエンペラー。究極生命の根源である」

此方の問いかけに応える事はなく
漆黒の世界すらも、より強い闇で照らしながら
その全身像をついには表し、より強力な気配を放つ

「アクロ...エンペラー...その姿は」

胸に刳り込まれた様に輝く宝玉
その禍々しい輝きに、マトリクスが強く拒否反応を示す

まるで反する様に赤く、深い闇を宿し鈍く輝く宝玉
っしてその輝きが照らす巨大な羽、伸びる尾

本来持ち得ないであろう能力が歪に結合した
力を取り込み、変貌した異形
対面するその狂気がまるで刺さる様に感じられる

「忌々しい光、よくぞ我が元へ...お前も消し去ってやろう」

皇帝の羽が激しく揺らぎ
漆黒の世界を掻き消すように風を巻き起こす

「...ッ」

刃を構えたまま、皇帝を捉えていたファクトコンボイだが
刹那、視界の中の世界は激変する

遥か宇宙、同じ暗闇でも無数の光が存在し
すべての命が住まう世界へ、場が変貌したのだ

「真実であり虚構、我は存在し存在しない」

「私には見えるお前の真の姿が、逃しはしない」

光の刃がマトリクスのエネルギーを受け
巨大な刃となり、皇帝へと振り下ろされる

無限の輝き、夢幻の争い
最早、ただ一人の力ではない
幾つもの英雄達の命が、戦いの記録が
闇を打ち払う力となって、共に戦っている

「我が魂なるマトリクスよ、光となり闇を照らせ」

光と闇、根源を絶つための戦い
この世界を未来に送る為の最後の戦いが始まった。