TRANSFORMERS:FACTORS episode:2-10 [蒼き希望へ]
それは悲鳴と共に現世に現れ
まるで嘆きの声を上げながら
巨大な腕が立ち込める闇と無数の煙を引き裂き振るわれると
その腕の伸びるた先に炎が走り
踏み締めた大地は割れ砕け、まるで鏡写しのように空も割れる
泣き叫ぶようなみっともない悲鳴は
心を乱すように響き、後方に広がる闇に溶けると
巨大な体の真下からは、無数の闇が生まれ
その一つ一つが、無機質な顔の異形となり
周囲を破壊しながら歩みを始め
その視線の先に命を察知すると無差別に攻撃を開始する
「お出でなすったぜ、ぶっ放すぞアイちゃん!!」
「おう!...ってアイちゃんって呼ぶな!!」
地上に集結したTF、ミクロロボット部隊が
迫る影にミサイルの雨を降らせると
巻き起こる幾つもの爆炎の中、戦士達が進行を開始する
「我等も行くぞ、グリッド...私にもう一度力を貸してくれ」
空を覆う影の集団、割れ崩れ、様々な色が混ざる空を飛び抜け
スタースクリームが先陣を切ると
その背中に合体したグリッドが光を放ち
両肩のナル光線キャノンから夥しい光の渦が闇に向かい放たれる
「ミクロロボットⅤ、Ⅹ、彼の一撃に続くぞ!!」
後方に続くスコープマンの号令を受け
合体ミクロボット戦士も胸の熱線を掃射し
周囲を飛び回る異形を焼き払い、侵攻を抑える
「目標は巨神、そして発生源たる背後のゲートだ、一気に行くぞ」
地上と空、共に光と闇が激突する激戦
闇はまるで無限であるかのように、終わる事なく湧き現れる
「小奴ら、手応えはあれど生命は感じない...あの顔はまるで」
エンデバーがそのアームで異形を砕き、キャノンが光を走らせる
しかし、悲鳴すら上げず消え去る闇が感じさせる違和感
そして、機体を操るディータがモニター越しに見た異形の顔に驚愕する
「ああ、君達とは違う感情を持たないアクロイヤーと同じだ」
互いに確認するように、異形が持つ顔を見据え
エンデバーの足元、その背後を守る形でバイオスーツが闇を打ち抜く
消えていく異形もまた、元あった記号を画一的に作り変えられた
そんな、命を削ぎ落とした様な、グロテスクな無機質な顔を見せる
「一体どういう事だ...アクロイヤーとは一体...」
敵の存在の異質さ、思考の合間の一瞬
闇に背後にいた、巨神が腕を振るい、その波動が異形の波を生む
まるで隙を突く様に、異形の波は押し寄せ
瞬く間に目の前に黒い壁となって2機の前に迫る
「...ッ、何でもありかよ」
押しつぶすように迫る闇の壁
そのあまりの巨大さに立ち尽くす2機
前方に居たアイアンハイドとレッドすらも呑み込む
巨大な漆黒の津波が瞬く間に迫る。
「コイツ等、実体を持ってないのか!?」
アイアンハイドが半変形状態でレッドを抱え背中に乗せると
それに続くようにエンデバー、バイオスーツも続くが
猛然と迫る波に今正に飲み込まんと彼等に迫る
「皆々様、この指とまれ...全員こっちに集合」
最早飲み込まれる、その寸前、突然の声が響き
無数の触手が地面から現れると、まるでドームの様な壁を形成し
戦士達を守り、闇の津波を防ぎきる
「このタコ足...ギルダー、こんな事もできんのかよ」
「なんのこれしき、さぁファクトコンボイ達を援護に回ろう」
機動多脚戦車タコタンクの頭上、黒鉄の鎧を輝かせ
アーデンギルダーが触手の創りだした壁の先、頭上を見据える
高く、全てを飲み込む闇の津波が障壁を叩く
水音とは違う、重くのしかかるような激しい音が壁の向こうで響く
その僅かな間、各々が息を呑み、次の戦いに備え武器を構える
「ここを抜けたら、巨神を叩く...がその前にだ」
波の通過を察知し、壁が解かれ、再び視界は爆炎と煙の舞う
戦いの最中へと戻り、波から開放され元の形へと闇達が変貌を始める
明らかに命を持たぬ存在、完全に消滅させなければ倒す術はない
だが、それをするにも数が多すぎる、状況は良いとは言い難い
「奴等を何とか倒す術はないのか?」
次第に数を増す闇の異形達
倒すこと自体は容易だが、一時的に消滅させるに過ぎず
またすぐに蘇り、闇の扉から延々と湧き、増え続けている
「んーそうだねぇ、一つだけ方法がある...」
ギルダーがアイアンハイドの問いに答えようと
闇の一つを打ち砕きながら口を開いた瞬間
その周囲に居た数匹の闇が一瞬にして弾け、消え去る
「それに関しては、この私がお教えしましょう」
突如として空から飛来する赤と銀の体色の戦士
ニヤリと笑った表情、腕には巨大な銃が握られている
「私はノックアウト、上の彼にお願いがあって来たのですが
...皆さん、マイクロンのパートナーは居ますね?」
「...?俺達にもディータ達にも相棒は居るぞ」
「なら結構、皆さんエボリューション、彼等と融合し更にアームズアップなさい
奴等は、自分達に近い存在の持つ光には耐えられませんからね」
そう言うと、再びその手に握られた銃を放ち
目前の異形へ打ち込むと、異形はのた打ち回り、消滅する
「でも、マイクロン達も攻撃はしていたぞ?」
「理由は簡単です、共に戦わなければ意味が無いのですよ、こんな感じでね」
"簡単でしょう?"と言った風な顔で、また一つ闇を打ち消すと
相変わらず微笑を浮かべたまま腕をかざし、巨神への道筋を示す
「原理は解らんが、礼を言う...先を急ごう」
風を巻き起こしながらエンデバーが巨神の方へと飛ぶ
その腕には既にマイクロンが融合し
全身を巡る力が、放つ攻撃を闇を撃ち抜く力へと変貌させる
それに続くアイアンハイド達もパートナーと融合しながら
空を飛ぶ要塞の如きエンデバーの各部に捕まり空から攻撃を仕掛ける
「君も、ファクトコンボイに協力を?」
一団が巻き起こした爆炎が、風に乗り突き抜け
無数に存在した闇は瞬く間に霞と消える
今この戦場に残るのは、ノックアウトと
彼と話すべくギルダーただ二人
瞬間、敵意にも似た気配が互いを刺す様に感じさせる
「ええ、あの巨神も一部が友人でしてね救助の依頼をね
怪しい者では...まぁそれは貴方も、同じ様ですが」
「それもそうか...で、彼に希望を見たのかい?」
仮面の下、その視線は巨神の目前に輝く光を見据える
陣営、惑星、敵と味方、それ等を全て超える存在
その胸に宿す輝きを従えるあの光に我らは希望を見た。
彼と共に戦う者達全てに、可能性を見たのだ
「そうですねぇ、少なくとも期待には応えてくれるかと」
二人が見上げる先、希望の先には深淵が広がっている
本来であれば、諦め、闇と手を取る道を選んだかもしれない
だが、輝きが胸を高鳴らせ
希望はあると、未来はあるとそう言っている
だからこそ、我々は過去の因縁ではなく、今の光に賭けるのだ
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唸りを上げる巨神、その背後に広がる闇
まるでその場だけ時が止まったように
完全なる黒色がやたらと鮮やかな巨神の体を際立たせる
幾つもの命を強制的につなぎ合わせた異形の魔神
それ故に、その体は統一されない異質な見た目をしている
『オオオオオオンッ』
唸りが響いたかと思うと、その巨体からは想像も付かないほど早く
その巨大な腕が天から地へ、大きく振るわれ空を裂く
その動きを察し、対峙する二人の戦士は散り避け
背後に構える巨大な機動兵器が巨神の腕を掴み
自らの方へ引き寄せると、片側の腕も掴み動きを封じ込める
操縦席、メガ・トロンが睨む目前の敵
それは己とよく似た、しかし確実に異なる力に溺れた者の顔がある
あぐりと開かれた歪んだ口元から漏れる闇に苛立ちすら覚える
「今だ、コイツの足を叩き斬ってやれぇ!!」
号令を受け、二つの光が鮮やかなほどに輝き
空切る音を響かせて、巨神の下方、足と体の繋目を狙う
自在に動く巨大な体、その僅かな個体同士の繋がり
微かにでもズレが生じれば、足にされている戦士にも影響が出る
「さぁ、実力見せてよマイクロンちゃん」
光の一つ、ローズが巨神の足の間を八の字に飛び回り
巨神の視線を誘導すると、追従する巨砲がその身を追い抜き
瞬く間に情報へと飛び上がると巨神の顔面めがけそのエネルギーを全放出する
「ッ!!?」
衝撃を受け巨神の体が仰け反り、首から上は爆炎に包まれる
僅かな唸りと、無数の金属が軋みを上げ火花を散らす
グランドベースが掴み上げた腕を左右に大きく呼ばし
全力の力を込めると、両腕を引きちぎり
今だけ無理を上げる頭部を掴み、そのまま背後へと振るい投げる
「マトリクスよ、共に戦う命よ、今!私に力を!!」
その刹那、感覚を合わせるように青い光が巨神へと飛び込み
宙を舞う巨神の足の間を飛び抜け
その勢いのまま遥か上空へと駆け抜ける
「...一閃、エネルザンッ!!」
炸裂する光、眩さと鋭いエネルギーの帯が舞う
一瞬の間、光が突き抜けた後
その手には迷いなく振り抜かれた巨大な剣が輝く
背後で巨神の膝から下、融合している足部分が弾け
下半身の合体が解除され、膝下は重力に引かれ墜落してゆく
「グラディオン、ガリューン、二人を頼みます」
声を受け、巨大な帆船が切り落とされた足
捕らえられていた二つの命を回収すると
進軍してくる地上部隊の方へと降下してゆく
その姿を見送ると、視線を闇の方へと戻し
ファクトコンボイが握った刃を高く構える
「さぁ、残るはただ一つ、怨霊破壊大帝」
グランドベースに放り投げられた体は
まるで幽霊でもあるかのように宙を舞い
再び漆黒の扉の前に浮かび、砕けた顔面は笑みを浮かべる
明らかに弱体化している
その筈なのだが、その思念が放つ闇はより強く
グランドベースすらも、その威圧により
手を伸ばしても近づけない距離まで後退を余儀なくする
「奴め、どうやら本体はあの背後...闇から力を得ているようだ」
背後からあふれる闇は更に異形を生み出し
周囲を飛び回り、襲いかからんと悲鳴を上げる
「何だかまだまだ余裕って感じね」
ローズも同様に、闇の威圧に抗いながら
迫る異形を叩き、撃ちぬき、目前の脅威を見据える
『憎い...憎き者達...全て呑んでやろう』
怨霊破壊大帝のその口から、そして闇の異形の全てから
体の内側からえぐるように、おぞましい声が響く
闇は空を覆い、光を憎む心がまるで突き刺さるように
四方から激しい敵意を向け続けている
「貴様の闇、私が...我らが受け継ぎし意志が、断つ」
巨神の視線の先、キンと鋭く音が響き浮かぶ青い光
携えた刃と胸に宿す希望の輝きが同期し
闇が最も恐れる力が、その怒りを巨神へそしてその先向ける。
闇、この世の争いを生む全ての元凶
その破滅の使者が目前で笑い、破滅を呼び込む
そして、その背後、闇の向こうには破滅その者が存在する
「貴様達の根源、その先にある物を見せよ!!」
残された希望、微かな光
振り抜かれた剣は、この闇の中でも輝きを放つ
刃を眼前に構え、希望は駆ける
その一人の光は稲妻のように鋭く激しく突き抜ける
輝きある者、希望となりて闇を照らす
この宇宙に描かれた、願いにも似た力が
今胸に宿る戦士の魂と共に英雄を照らし、希望は燃える
果たして、この光は闇を照らすか
今、この人知らぬ小さな世界で、最後の戦いが始まる。