--- -エピローグ- --- 『おおっシュリョーン!終わったんだねこっちも大変だったけど全部片付いたよ』 ライ・ドゥームの搭乗ゲート立にったシュリョーンの前にアンチヴィランが走り寄ってくる 手前に見えた戦いの跡は既に数分前の物だったらしく バイクに姿を変えたアンチヴィランは持ち前のスピードでシュリョーンの元へ向かっていたのだ 「ええっと、終わったよ...でも、その前に話さないといけない事があるんだ」 戦う事とは違う緊張が走る 信じてもらえるか、このまま未来に行けるか、不安だけが宿る 「なんだい?なんだか雰囲気も違うね...大丈夫?」 一刻、下を見たシュリョーンの様子に異変を感じたアンチヴィランが変形し シュリョーンの側に近づく、それはほんの短時間の出来事 「あっあの...私、矜持君じゃなくて、葉子なんです!!」 ガッとシュリョーンの鎧のヘルメットに当たる部分を掴むと 勢い良く頭部ガード、言わばヘルメットが外れ、中から長く陽の色をした髪の毛がたなびき 整った美形の少女が顔を見せる...アンチヴィランの知らない存在がそこにはいた 『えっ...あっ..誰!?桃源はどこ!?』 アンチヴィランが葉子の肩に手を置くと、ブンブンと揺らしながら問いかける 揺さぶられた葉子は言葉にならない声をあげながら それを何とか止めると、この長い交代劇の経緯を語り始める 最初の一歩 葉子の新しい歴史が始まる、少々ややこしい新たな変神の誕生の瞬間 一つの戦いが終わり、新しい未来が始まる...それは輝かしい闇 「あの、私は彼の奥さんで、実はずっと一緒にいたんだけど...あの、えっと、はじめまして!」 そんな表現が今日だけはよく似合う、己を貫く悪の新生の瞬間だった。 --- |
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--- -それから数ヵ月後 「どうやら、奴等は本当に人間ために活動を行っていたらしい...あくまで奴等なりに、だが」 いつもと変わらぬ再装填社の事務所にはアキと葉子の姿があった ここ数日、これまでの戦いを改めて確認し、記録する為看板は出されていない。 だが、窓明は明るく深夜でも輝き続けている 「歪んでいた...そういう事ですよね、想い方が地球の考えとは違ったといえばそれまでですが、 あまりに勝手で、あまりに偽善的な...戦っていて悪意が感じられなかったのも 最初から彼らは「正義」として、それは地球を救う為に行っていた、そう思っていたからだった...と」 秋が終わり、既に冬に入り込んだ季節 葉子が運んできたカップからは淡く湯気が登り 周囲には数々の資料が並べられ、机の上のPCとアキは随分と長く向かい合っている 「そういう事だな、随分と長い戦いだったが...これで一先ずの決着だ、牲は多かった、本当に...」 言葉を止め、出されたコーヒを口に含むと、アキが表情を曇らせる この戦いで様々な出来事が起き、無数の人と命が消えていった そして、この戦いで最も未来を望んでいた存在もまた亜空の彼方へと消えた 「...うん、ちょっと休憩しないと!いくら不老不死でも体に障りますよ、またスカート短いですし 風邪引いて寝込んだら結局時間が無駄になるんですからね〜」 一刻訪れた沈黙を掻き消すように葉子が穏やかな口調でアキに言葉を送る それはまるでアキの姉妹でもあるかのようで、家族のする会話に近い 実際、年齢は30歳近く離れているが、二人の関係は近しく、対等そのものだ 「その小言、懐かしいな。昔、あのバカに同じ事をよく言われた」 やれやれといった風にアキが軽くため息を吐き出しながら かつて同じ事を言われた記憶を探る、あの時も確か冬が近かった それまでは変わることのなかった景色 それがこの1年程度で大きく変わってしまった、その事実を実感するとキーボードを打つ指が重く感じられる 「私のは矜持君のが移ったんですよ、似た者夫婦って言ってたのは誰でしたっけ〜」 相変わらず葉子の口調は優しく、それでいて軽く冗談を言うように軽快で 彼女の全てだった存在を失った悲しみなど感じさせない だが、アキは解っている。彼女が常に泣き出したいほどの喪失感を覚えている事を そして、それを振り切り、ただ再開する事を信じ毎日を生きている事を 「...必ずアイツは見つけ出す。全ての元凶は私にある、それがせめてもの君への詫びだ。」 思考の後、アキが席から立つと一直線に葉子の方へと向かい 彼女の肩をしっかりと掴むと、真っ直ぐに瞳を見つめ宣言するように言い放つ 「お詫びなんていいですよ、『また会える』って言ってましたもん。その内帰ってきますよ ほら、私だってある時唐突に戻ってきたじゃないですか!同じだと思いますし」 あの時、桃源が亜空の彼方に消えた後、葉子の腕には亜空ブレスが植え付けられていた これが示す事、それは即ち「シュリョーンは健在」であり「桃源矜持は亜空世界のどこかで存在している」 葉子の元にいつの日か亜空人間として戻ってくる...それは紛れもない事実だ 「ほら、アキさん!一応決着がついたとはいえ、まだまだ地球上にエイリアンだっていますし 間違った正義はヒーポクリシー星人だけじゃないんですよ、泣いてる暇なんて無い...そうでしょ!」 「...あぁ、そうだな。我等が使命は一つ。この世界の悪として世界を見続けること。 これからもよろしく頼むぞ、変神シュリョーン」 新しい決意と共に、新たな一日が再装填社に訪れようとしている 遥かな空には赤と青の境目、既に新たな朝が産声をあげている ...そして遥か遠く誰も知らぬ場所、同じく明けの明星。 美しく輝くその空に一つ黒い影が駆け抜けた それは遥かな闇よりの使者、この世に存在する悪の化身 誰も知らない、その闇は今日も歪んだ悪を砕き風に揺れる 「我は変神...変神シュリョーン、悪を成す者。」 遥か遠く見知らぬ世界 もう一つの「変神」もまた、新たな決意を胸に戦い続けている いつか、もう一度再び、同じ道を共に歩むその日まで、彼らの旅路は続いてゆく。 --- -変神シュリョーン・完。 |
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