遥か空、いつもならば青空に雲が流れる人間の命の源 太陽が照らし、人々がその命を実感する...その空は 今では蜘蛛の巣のような巨大な枠が走り、人々に影を落とす 「地球人、我等が親愛なる...有能な奴隷達よ、今日から更にその仲を深めようっ」 友好大使であった筈の宇宙人「ピースリアン」 彼等が作り上げた全方位太陽光発電システム「アースケージ」...通称「鳥籠」 ギーゼンから得られたデータには、人間達に公表する「表向き」の情報も多数記録されていた 今、正にシュリョーン達が降り立った場所 その場所こそが地球を覆い隠すケージ、黒い柱の折り重なった枠上 地球はその中にまるで空へ羽ばたく事の出来ない鳥のように、虚しく拘束されている。 『アースケージ・ステルスシステムに異常あり』 軌道エレベーター内、そしてエースケージに降り立った後も 何処からともなく機械の声で警告が鳴り続けている 上へ登るための道である軌道エレベーターは、同時にこの鳥籠の柱であり システムの中枢は分割された無数の柱にその殆どが宿されている アキの想定した予想はほぼ的中していた...その証がこの警報である 「「既にこの鳥籠は地上からも見えている...ようだな」」 自身達がいるその場も、先程まで窓の外は何か歪んだ透明色の外装を見せ 内部に入るまでは「まるで存在しない」ようであったが 無数のエイリアンを破壊し葬る内に次第に目先の道筋に見えていた 歪んだ何も無い空間に本来あるべき鳥籠のラインが浮かび上がり、目的地に向かいその道を示している そして上空のシュリョーン達の遥か足下、 当然ながら既にその鳥籠の姿は地球の地表からも目視が出来るようになっている 即ち、今までは見えなかった余りにも巨大な何かが見えている 透過していた太陽の光を遮ったそれは、立中の人々にも闇を宿し高く聳える。 「なんだよありゃ、あのドクゼンってのぁ良い奴じゃなかったのかい母さんよ」 町の一角、葉子が通った八百屋の店主がそれを見上げてつぶやくと その隣で"母さん"と呼ばれた彼の妻はまるで関心が無さそうに彼の方を見てつぶやく 「さぁねぇ、でも私は始めて見た時からこんな気はしてたけどねぇ だってアレだよ、名前が独善的じゃない。それに従うならイケメンの方がいいわぁ」 大根を振り回しながらまるで樽のような体系の女性がケタケタと笑う 余裕がある...というよりは興味がないのか、それとも鳥籠の出現に実感が湧かないのか 元より不可思議な事件が多く起きるこの街ではいつもの事なのかもしれない。 「でもよぉ、名前で判断しちゃマズイだろう...でもまぁあれだ、俺もあの顔は怪しいとは思ったね! あの目が...まぁ目がどこかよく解らねぇんだけどよ」 長い戦いの中で立中市の人々にはピースリアンへの不信が生まれていなかった訳ではない 実際問題、その行ない以前に見た目が非常に人間離れしていた事もあり 普通の状態の...災害が起きる前であればもう少し警戒していたのかも知れない 災害で出来上がっていた国全体の「助けを求める」そんな感情、心の隙間を奴等は突いてきた そう判断せざる終えない、それは今の日本の人間が少なからず感じている事かもしれない 少なくとも立中市、そしてその母体たる火入国は彼らを「断固拒否」し続けてきた 他にも幾つかの日本内の国は彼らを拒否したり、無視している国もあり、そして新たに生まれてもいた 人知れずとは言えシュリョーン達が戦う事で次第に噂は広がり 彼らの行い、非道に気がついた人達の動きで「非ピースリアン」を掲げる動きは広がりを見せていた...だが、しかし 「お〜言うじゃないのさ、この間まで信じきってたくせに...まぁ、何にせよ、いつものあの変神様が助けてくれるさ」 「ホントにいるのかねぇ、ファク..何とか?とか言う奴もいつの間にかいなくなっちまってよぉ。 これからは自分の身は自分で守らねぇと...っては思うけどさ、だけどこりゃぁ俺にはどうしようも出来ねぇ」 店先の椅子に座る店主が空を見上げて、呆気に取られたように声を漏らす ...いつの間にか侵略は取り返しが付かないレベルまで進行していたのかもしれない 空に広がる大きな柱の道筋、人々は捕らわれた数の多い人質とでも言えば解りやすい 「まぁ出来る事といやぁ...イッちょ応援でもしたやろうぜ母ちゃん」 いつもの町、小さな田舎の商店街にもその影は静かに落ちる だが、立中市の人々はあくまで「いつも通り」 何故なら彼等には頼れる「悪者」が付いている、そう...少なくとも「この戦い」までは ---- 遥か上空、成層圏を越え地球を遥か眼下に望む シュリョーンとメイナー、イツワリーゼン、アンチヴィランの4名はアースケージ内部から ピースリアンの最終拠点である円盤、記録名称によれば「ライ・ドゥーム」と呼ばれる円盤へと向かい 延々と伸びるアースケージ内部への進行を開始した、しかしあまりに多い敵の出現に ダメージこそ無いに等しい物の、思わぬ形での進行速度が低下していた。 「随分とまぁ、我が星の事ながら...これ程までに愚か者が多いとは」 イツワがうんざりしたような表情で目前のエイリアンを蹴り飛ばすと そのまま吹き飛んだエイリアンが仲間数人を巻き込んで爆散する 「奴らを正しく導けなかったのは私の責任でもあるからのぉ...シュリョーン、先にゆけ。 ここは私一人で十分じゃ、今までの礼..になるかは解からんが任せてくれ」 蹴りを入れた勢いで後方に跳ね、着地すると 新たに攻め入るエイリアン群に手に持ったクナイを投げつけ、一人また一人と破壊してゆく その合間のタイミングで体についた埃を落とすと、シュリョーン達に提案する 「「しかし、流石に一人では敵が多すぎる」」 シュリョーンが思わぬ提案に驚きながらも、迫る異形を切り倒してゆく まるで壁であるかのように無数に迫るそれらは終わることがないように 倒しても次から次へと現れてはシュリョーン達の進む道を塞いでいるのだ 「じゃが、このままでは全員前に進めぬぞ?なに、奴らの事はよく知っておる。 さっさと終わらせてコイツ等も早めに開放してやらんと可哀想じゃ、道は開けるからさっさと行くがよい」 異形へと投げつけ突き刺さったままのクナイを引き抜くと そのまま切っ先で進行方向を指し示し、イツワはニヤリと笑う 「「しかしっ...」」 「うむ。そういう事なら、私も付き合いましょうお姫様」 声を上げたシュリョーンの肩をメイナーが叩く いつもの調子の口調だが、その奥には何か強い意志が宿っている 肩に置かれた手の力から、深く見据えた落ち着きと決意が感じられたような気がする。 「んなっ、メイナー!お前は一緒にドクゼンを倒さねば、3人がかりでも勝てるか解らぬというのに!」 「大丈夫ですよ姫様。コイツはね、どうも体に何か細工をしているようですから まぁ一人でも十分に勝てる策はあるのでしょう。ならば私は貴方をお守りするのが役目だ」 「それでいいだろ」と言いたげなアクションをメイナーが見せると シュリョーンは肩の力が抜けたように、軽く息を漏らす 確かにシュリョーンのスーツにはこの戦いに備えて幾つかの細工が施されている ”一人でもドクゼンを倒せる”程にその能力を上げているのは間違いない ...メイナーが付いているなら安心出来る、ここは任せても良いのではないか シュリョーンの考えも次第に変化を見せ始める 「「...良いだろう。しかし、油断はするなよ。負けはしない事は解っているが..」」 無数の機械触手を跳ね除け、切り落としながら二人に注意をするシュリョーンだが イツワとメイナーの二人はその言葉を最初から分かっていたように 互いに何やら笑いながら注意に対する言葉を放つ 「シュリョーンは自分の心配をすべきじゃな」 「ええ、むしろ自分のほうが足引っ張る可能性は高いというのに」 軽口をたたきながらも目前の異形たちを一点集中で狙い撃つメイナー その砲撃は壁のように無数に連なる異形達の一点を打ち砕き 残った数匹の邪魔な障害になる異形をイツワのクナイとエネルギー波動が切り裂く 「あのさ、皆僕がいること忘れてない?」 そして、最後の仕上げと言ったところだろうか アンチヴィランのチャージキャノンが一直線上の異形を消し飛ばすと そこには障害の一つもない「ライ・ドゥーム」へと続く道が出来上がる 「よし出来たぞ、シュリョーン。俺達はこの雑魚共と...洗脳装置の破壊にあたる どうせコイツらが片付いたら、最初から一人で行くつもりだった...そうだろ?」 圧倒的な威力を前に、流石に異形達も動きをとめ様子を伺い始めている その様を確認してからメイナーがシュリョーンに彼なりの予想を問いかける 「「...ああ、そのつもりだった。あの薔薇の花を覚えているか」」 「亜空ブレスから取り込んだ...なるほど、あれがリミッターを解除する鍵なんだな」 アキからの預かり物であり、シュリョーンがその体内に取り込んだ”黒い薔薇” それはシュリョーンの活動限界一時間を解除するリミッターであり その力を限界まで発揮させるための魔性の結晶 亜空力の中でも最も強い力を持つ深層にある「漆黒の亜空力」を結晶化した物であり あらゆる力を与える代わりに、使用者に大きな負担と、代償を要求する意思ある力である その為、使用すれば一時間を経過しても暴走を引き起こさないが 代わりに、その変身していた時間の分だけの反動が来る事となる諸刃の剣と言える物である。 「「そこまで解っていたのか...流石だ、だからこそ背中を預けることが出来る」」 「そういう事言うとあらぬフラグが立つぞ...さぁ、行け!奴らも待ってはくれないからね」 まるで巨大な剣で真っ二つに裂かれたように開いた異形の壁は 既に新たな異形により再生するように壁が蘇ろうとしたいた 会話の間も攻撃を続けていはいるが追いつかない程の量が未だ攻め込んで来ている 「桃源、急ごう僕が変形する。最高速で行けば直ぐにでも付くはずだよ」 アンチヴィランがそう言いながらも流れるような動作で姿を変える バイクの姿へと変貌すると、無数に伸びるマフラーからは亜空力の結晶が煙のように吹き出し その溢れるエネルギーを周囲に放出する、その輝きは周囲の異形達にとっては痛みを伴う強烈な毒でもある 「「うむ!メイナー、イツワ...先に行って待っているぞ」」 エンジンの轟音が鳴り響くアンチヴィランにシュリョーンが跨ると 切り開かれた異形で出来た壁の隙間を猛烈な勢いで駆け抜けてゆく その道筋は赤紫に輝き、その道を塞がんとする異形をまるで砂の人形かのように砕き 無数の爆発と共に高速回転するタイヤが、遥か宇宙の上の大地を駆け抜けてゆくのであった。 --- 激しい砂煙を上げて、走りゆくシュリョーンとアンチヴィランを見送った二人は 軽くため息でも付くかのように目前の光景を改めて見返す 見回したその景色は、醜悪の異形共の壁と宇宙の闇と青い光と鳥籠の壁 見せる景色はまるで地上のそれだが、壁を隔てた向こうは宇宙空間 違和感のある空間、宇宙人らしい部分を見せなかった敵の明確な宇宙人らしい部分に今正に、立っている。 その感覚を一言で言うならば気持ちが悪い。 「考えて見れば..ここ宇宙なんですよね、お姫様」 「そうじゃのう、私はあの溶ける程熱い大気圏を抜けて降りていったのも昔のように感じるぞ」 世間話でもするかのように、軽い口調で会話を続ける二人に 壁の如く迫る無数の異形、彼等にとってそれは最早、的に等しいほどに弱いが 微々たる力も集まれば”それなり”になるのもまた事実 「こうも多いと、流石に倒しがいが出てくる...のはいいのだが、時にお姫様」 襲いかかる異形の山が二人を包み潰すように襲いかかる ...が、その山が無数の閃光の後に爆散すると その内部から、何時に無く巨大なキャノン砲を構え、メイナーが悠々と迫る異形を粉砕し続けている そしてその足は少し離れたたイツワに向けて一直線に進んでいる その足音は先程までの緩く、世間話をするような雰囲気をかき消し、言い得ぬ緊迫感を感じさせる 「少々ウザったいが、こんな雑魚はまぁ良い。それよりも姫様はどうも何かを隠しているようだ」 その少しの距離を歩く間も異形が次々と襲いかかり、飛びかかろうとするが 飛び上がると即座に頭頂部を打つ抜かれ軽々と吹き飛び爆散する そのアクションは最早意識してのことではない、相手に対する感情すらも感じさせる事はない 「何じゃ気がついておったのか...この間、夜中に何やら良く解らない奴に襲われた事があったじゃろう?」 「あぁ、確か灰色の骨のような...だがアレは確かに破壊したはずでは?」 イツワの目前まで近づいたメイナーが目にしたのは 彼女の体の機械的な部分を覆い隠すように現れ始めた灰色の骨であった それは確かにあの夜破壊した物と同じ様に見える、それは次第に姿を表しているが 先程までは確かになかった...出現理由は何か、思考を巡らせる 「ふむ...もしや」 メイナーがある一つの仮定を組み立てる その最中に思ったことを行動に現してみる、その行動は簡単。「エイリアンを撃ちぬく」事 そしてその行動の結果、エイリアンは爆散し灰色の骨は少しその面積を広げる 「なっ、これはまさか...あ奴等の命で新たに作られているのかの!?」 「そのようで、そうなるとこの壁...最早破壊は出来ませんね」 灰色の骨、それは逃者となったイツワに与えられた罠 洗脳され機械化されて暴れまわる異形と化した星人達の命を使って創り上げる 言わば生きた枷であり、それは次第に全身を覆い隠すように広がりを見せていた 迫る壁、しかしそれを崩せばイツワの体は”何か”に覆い隠されてゆく 思わぬ形で出現した、違う「壁」が2人の目前に立ちふさがる 「別に良い、いざ私が暴れだしたら、お前が私を撃ち殺せ。 元々此奴等と同じ...そして此奴等をこんな姿にしてしまった責任は私にもある、当たり前の報いだ」 次第に体を覆われてゆくイツワが、目前の異形達を見つめ、呟く それは決意と、己の死を感じる悲しみが見え隠れする 「最後はそうするでしょう...だが、私の愛する姫様はこの程度で諦めるような人ではない ...私はそう思って、今まで共に戦っていましたが?」 迫る異形だけを、出来る限り最低限の数を打ち抜きながら メイナーがイツワに向け、言葉を返すと、手に持たれた銃は流れるように イツワの体を覆う灰色の骨を打ち砕く、しかしそれは砕けた瞬間に再生し 破壊は不可能である事実を視覚からもストレートに伝えてくる 「これでは時間の問題か...随分と下衆な真似をしてくれるものだ」 そう呟くとメイナーが、辺りの異形を数匹撃ち飛ばし イツワを覆う灰色の骨の成長をより加速させる 「なっ、覚悟は出来ておるが早速やれとは言っておらんぞ!?」 「安心してください、私奴に策があります...少々の我慢ですよ、私の愛しいお姫様」 そう言うとメイナーはイツワに背を向け、両の腕を高く飾すとそこには巨大な亜空間の扉が開き 巨大な銃が2丁出現する、それは明確に「この壁を破壊する」意思が込められている それは、イツワにとってはある意味で死へと向かう自らを終わらせる物であるように見える しかし、その反面で戦えぬ体へ与えられた最後の救済にも見えた だが、本当はそのどちらでもない答えがその先には待っている。 「必ずその体も取り戻しましょう、たとえ私の命が尽き果てようとも...」 暗闇の扉から落ちた巨大砲が激しく火を放ち爆音が轟くと 辺りの異形は一斉に粉微塵と鳴り消え失せる そして、イツワの体がそれらに反応し灰色の骨は彼女を覆い隠してゆく 倒された分だけ早く、そして明らかなのは「彼女を食べている」ように見えること 「ぬぐっ...おのれ...自分ではなんとも出来ぬっ...ぬわぁぁ!!?」 小さな体は次第に灰色の骨に取り込まれ その体が巨大な何かに変貌してゆく 体の各部は見えているのだが、明らかにそれは普通の状態ではない 「最早手は一つ...行きますよ、私のお姫様!!」 姿を変えた王女のため、メイナーの足が足早に地面を蹴る 最早壁となる異形はその殆どが消滅した そしてそれはイツワが取り込まれた事も示している 激しい叫びと共に、メイナーもまた彼に課せられた最後の戦いを始めようとしていた --- 「シュリョーン、もうすぐ本拠地につくけど...大丈夫?」 バイクへと姿を変え、シュリョーンを乗せたアンチヴィランが風を貫きながら その背中に乗せた、シュリョーンの異様な状態に戸惑いながら問いかける 「「問題ない、時間制限のシステムを破壊したからこうなっただけだ」」 ここに至るまでに断続的とはいえ再生エイリアンや無数の異形との戦いを経て 既に本来定められた制限時間はとっくに超えていた それ以前に幾多の戦いでシュリョーンスーツ自体が限界を超え始めている 常に彼につきまとっていた「暴走状態」以上の「何か」へといつ変貌してもおかしくは無い だが、ここで止まれば立中の...世界中の人々は鳥籠から放たれる光線により 思うままに操られる奴隷...それ以前の木偶人形とかしてしまうだろう それを阻止することが出来るのはシュリョーンとその仲間のみである 必然的に彼等は止まる事を許されないのだ アンチヴィランもそれに答えるように、表示されたメーターは最高速の数値を示している 「「しかし随分と無駄に広いパイプラインを作ったものだ...っ?」」 「あれは...何かいる」 ピピピッとアンチイランの制御パネルから警告音が鳴り響く 周囲にはそれまで存在しなかった「異形」の存在を示す警告音である 画面が示す先、わずか前方。 何もなかったはずの景色が次第にグニャリとうねると見る見るうちに 無数の巨大な異形が姿を現す、その姿はどこかで見覚えがある 「「あの姿、ギーゼンのように見えるが」」 目前に立ちはだかった4体の巨大な異形 それは今では随分と可愛らしくなったかつての強敵「ギーゼン」が 全盛期そのままの姿で巨大化したような姿で立ち並び、無数の機械触手を動かしている 「本物は確か全然違う姿になったんだよね...なんでこんなところに」 ギーゼンは確かにその体を破壊され意識を持った一部が違う姿の異形となり 再装填社で現在も隔離されている しかしそれ以外に吹き飛んだ体の一部は行方が知れないままとなっている 目前の巨大なギーゼンの軍団は「その一部」だとでも言うのだろうか 「「奴は知識などの重要部分だけの集合体だったが...これは残された体の方とでも言うのか」」 今までも無数の「有り得ない光景」を見せつけられていただけに 驚きは少ないが、ただでさえ強烈なほどのパワーを誇るギーゼンが4人 しかも巨大化しているとなると、これほどまでに面倒な相手はいないのも確かだ 「仕方ない、倒して進むしか無い...よね」 「「時間はないが、そのようだ。一気に倒すとしよう...来い、亜空ウイング!」」 シュリョーンが高く天に手をかざすと亜空の扉が出現し大きく開かれる その刹那、ひとつの影が扉から飛び出すと、巨大な4つの異形に猛烈な勢いで突撃し 一つ、また一つと巨体をなぎ倒し、そこに装備されたレーザー砲で追い打ちを仕掛ける 『グギャァァァァッ』 巨大な異形から声が上がり、それが幾つか重なる不快な合唱となり 地に足をつけ、その動きを止めるのだが、すぐにまた動き出し シュリョーンとアンチヴィランの元へと足を進めてくる、歩みは遅いが一歩が大きく その群れは次第にシュリョーンとアンチヴィランに近づいている 刃、ドリル、刺、ペンチとまるで日曜大工でもするかのような だが、実際に命を奪う道具としては一番痛々しい物が揃えられた機械触手が 猛烈な勢いでシュリョーンとアンチヴィランに向かい飛び込んでくる 「随分ノロい攻撃だね、逆にピンチを招くんじゃない?」 自らに飛んでくる機械触手をまるで跳び箱を飛ぶかのように 軽々と手で抑えそのまま飛び上がると、再びバイクへと変形し 触手を伝って巨大な異形の体へと飛び上がる 「どうやら僕とは相性が良くないみたいだね」 ギャギャと音を立て、ギーゼンの体をまるで焼き焦がすようにアンチヴィランのタイヤが唸りを上げ 空中で回転すると瞬く間に姿を人型に戻し、ブラスターを乱射すると 巨大な異形4体の各部に直撃し、雄叫びと共にその体が崩れ落ちる 「「大丈夫か?...無茶な戦い方をする、だが鮮やかだっ」」 自身に飛んできた機械触手をそのまま真っ二つに切り裂き そのまま一閃、次々と飛んでくる機械触手を完全に切り裂き、更に刃を振るい残骸を吹き飛ばすと 一歩たりとも動かないままシュリョーンがアンチヴィランに声をかける 「問題ないよ〜こいつら大きいだけみたいだし、僕一人でも問題ない。 運べなくて悪いけど、桃源は先に本拠地に向かって!」 再び動き始めた巨大な異形にさらなる砲撃を仕掛けるアンチヴィラン 既に目標地点は目前であり、彼の力ならこの異形を倒すことも容易だろう シュリョーンは咄嗟に判断するとその足で遥か宇宙の上の作られた大地を走り始める 「「すまない、亜空ウイングを援護に置いてゆく...油断するなよ」」 亜空力を足に集中させ、まるで跳ねるようにかけ出したシュリョーンが 砲撃を終え着しちたアンチヴィランの横をかけてゆく 「解ってるさ、それはこっちのセリフだよ!死ぬなよ、僕の友達第1号」 互いにすれ違うほんの一瞬で交わされる会話 その奥にあるのは互いを信じる心と、揺るぎない力 直後には遥か道の先へシュリョーンは駆け出し アンチヴィランは迫る巨大な異形に亜空ウイングと共に最大火力で応戦する 一転、激戦を始めたアンチヴィランを置きシュリョーンは一路敵本拠地を目指す その体からは相変わらず夥しい量の赤紫の霧のような粒子が噴出している 亜空の暗闇に近い色、しかし一つだけ違う点はその色は鮮やかであり、闇を感じさせなくなっている 「「アンチヴィラン..メイナー、イツワ...生きてくれ ...例えもう戻れずとも、この先に勝機あり。桃源矜持、そして葉子よ我が力となってくれ」」 変化の反動と戦いの中で受けたダメージがシュリョーンを襲うが 今も戦い続ける仲間たちの姿を感じれば自然とダメージは軽減したように感じられる。 つぶやかれた言葉は「シュリョーン」その者の意思か、それともまだ見ぬ可能性か... 足早に駆け抜ける、シュリョーンのその目前には既に「ライ・ドゥーム」の搭乗ゲートが迫り シュリョーンの地面を踏み込み駆け抜けるスピードが更に上がり、その間に出現したアクドウマルを深く握る 「「我は変神...変神シュリョーン、参る!!」」 爆音と共に登場口のゲートごと破壊し進入したシュリョーン 刻一刻と地球を洗脳する最凶最悪の偽善作戦は敢行されようとしている --- ⇒後半へ |
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