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日も落ちれかけた夕暮れ時、市内の外れある港
奇妙なまでの静けさを見せるこの場所に、奴等は群れをなして潜んでいた。

立中市は未だ亜空間の壁が薄い「火国点」が残っており
日本古来の伝承にも残っているような所謂パワースポットと言う場所も多く存在している
現状ではそれらに引き付けられていると考えられているが、最近では統率の取れた行動も見せており
何か裏で手を引く存在がいるのではないかと思わせる面も感じさせる

...そんな事は知ってか知らずか
怪しき影もそれを砕くために存在する影も全てを包み込んで静かな世界が広がる
微かな波の音の中に、ガツッガツッという足音が微かに聞こえている
最初は人影、それが黒く染まり、次の瞬間には鎧を着たような姿へと変わる

”重装 メイナー”

娯楽が「変神」した亜空戦士であり
シュリョーンと同じ力を持つ第2の悪を成すものである。

「この辺りか、時間制限はないとは言え出来る限りエネルギーは温存したい物だ」

メイナーはシュリョーンと違い、暴走を考慮した時間制限と言う物がない
これは最初から亜空の力である「亜空戦士との融合」ではなく
あくまで「スーツを着込む」ことで精神への影響や、亜空力の過剰な負荷を避けているためで
メイナーになる場合はエネルギー残量だけを考慮しておけば長時間の戦闘も問題はない

その為、偵察や潜入などの場合にはメイナーが活躍しており
それらの活動が必要な場合や、シュリョーン一人では対処し切れない敵が現れた場合に
隠し玉として彼が登場する事となる、そんな性質を持つため今回の登場は特例と言えるだろう

「...良い、実に良い匂いがするね...そろそろ近いかな」

一応名目は「偵察」、それか「パトロール」と言ったところだろうか
明確に敵の存在がわかっているため変神こそしているが
現状ではまだ奴等を見つけても攻撃されない限りこちらは手出しを出来ないのは変わらない

では彼等を見つけてどうしようと言うのか、それは至って簡単な話
以前から解っているように、エイリアンの狙いの中には亜空戦士そのものも含まれている
通常、それを理由に戦うことはしないのだが、”相手から攻撃してくれば”十分戦う理由は成立する

「コイツらは”私達”もターゲット...要はストレートに戦えばコイツらを破壊する理由の完成と言う訳だ」

メイナーが無理矢理な理論を完結させる為に頭を巡らせながら、
コンテナが積まれ、まるで迷路のような道を抜けた広く開あいたスペースに
無数の異形の影が佇んでいることを確認する。

するとメイナーは武器を出すことも無く、その存在に自らを気がつかせるために
わざと大きな足音を立てて、一歩また一歩と足を進めて行く

「「ギギッ..高エネルギーカクニン...目標A-02」」

数十機のスノッブとそれを指揮している数機の蜘蛛型が一斉にメイナーへ視線を向ける
赤い瞳がギラギラと輝き、無数の触手が蠢いている

一機のスノッブが発言した言葉【A-02】
これは所謂メイナーの向こうでのコードネームと言った所だろうか

「「目標ヲ捕獲スル!全機攻撃タイショウ...A-02」」

コンテナで四方を覆われた広いスペースに入り込むや否や
数十機のスノッブと蜘蛛型が一斉に起動しメイナーへ攻撃を始める

過去にここまでの多数を相手にする状況に遭遇したことはない
メイナーは勿論、それはシュリョーンも同様であり
まして相手は戦闘データも無い新型まで含まれている

本来であれば退路を導き出した上で、分散し破壊して行くのが有効な手段だが
失敗すれば死は間違いない、そんな危機的状況が目前に広がっている
しかし娯楽にとってそれは、最高の楽しみであり、恐怖というものは微塵もない

彼は彼の欲望を満たすために、自身を最高の状態へと導いている
言わば強いのだ、その力は数値上は融合型のシュリョーンに劣るが
実際の戦闘結果だけを見れば明らかに彼の方が強力かつ絶対的な勝利を収めている

「興味深いのはあの中身のエイリアン...そして、剥き出しの脳だな
...後は、新型の仕組みと言ったところか」

歩きながら、まるで誰かと会話でもしているかのように頭の中で「最優先すべき部分」が確認されて行く
その間にメイナーを察知したスノッブが一目散にメイナーめがけて迫っているが全く意に介さず
勢い良く飛んでくる触手は軽く躱されるか、手で弾かれ虚しく地面に叩きつけられる
当然その最中も思考は止まらず、最上の結論にたどり着くまで脳活動はスピードを上げる

「あの触手は既にサンプルがあるでは...ッ!?」

...が、次の瞬間巨大な爪がメイナーめがけて振り落とされ
流石にその勢いに吹き飛ばされ、思考の世界から無理矢理引き戻される
気がつけば小銃がかすり、爪が鎧を傷つけている、既に「戦っても良い」のだ

「...っとと、イカンね、何がイケないかと言えば私の考えを止めたこと。
流石に邪魔が多いな、今回はブラスター以外の兵装も使うとしよう」

ポンと、手を叩くように合わせると、メイナーの手の中から真っ黒な闇が生まれ
それが瞬く間に巨大な重火器へと姿を変え、分裂し2つの形をとる
片方は巨大なミサイルランチャー、もう片方は同じく大型のビームガンのようだ

カシャカシャと軽快な音を立ててそれらの重火器がメイナーの手で起動し
様々な音を立てて輝きを見せると、軽く目前のスノッブめがけて一撃が発射される
一瞬の閃光の後、ガラスが割れたような音と「グシャッ」と言う静かな破裂音が響いたかと思うと
その刹那、激しい爆音が響き、まず1匹目のスノッブが破壊される

「「「ギギッ!?ギーグァァァ!!」」」

無数のスノッブや蜘蛛型から奇声のような悲鳴のような声が一斉に上がり
一斉にメイナーめがけて触手やエネルギー砲のような物、そして蜘蛛型の巨大な足が
猛烈な勢いで繰り出される、その雨の中をまるで踊るかのようにくぐり抜け
メイナーは1機、また1機とエイリアンを破壊してゆく...が先程からどうにも敵の様子がおかしい

「あの蜘蛛型にはどうやらこの程度の攻撃では効果がないようだ」

既にいつものスノッブは2機を残すのみとなっているが
蜘蛛型が...4機、少々ダメージこそ受けているようだがどうにも今ある武器では効果が薄い
どうやら周囲にフィールドを貼って防いでいるようだ...この扱いを見るにやはりリーダー格であろう
一つの結論にして、今回の最初の目的が解決される。だがそれは同時に危機的状況でもある。

「これではこの脳みそ共をじっくり観察どころか、サンプルをとる前に溶け消えてしまうな」

目の前の危機的状況よりも気になるのは目的であったサンプルの事であったが
走行している間にも勢いより振り下ろされる蜘蛛の足を前にして
流石のメイナーも苦戦を強いられる事となる

「これは困ったな...まぁ、奥の手と言うのもあるが...欲しい答えはそれではない、はて?」

そんな一瞬思考の側に比重か置かれた瞬間
タイミングよく振り回された巨大な足がメイナーを軽々と、まるで放り投げる用に吹き飛ばす

不意をつかれたからか、そのままの形で叩きつけられ、壁が粉砕し崩れ落ち
そのままメイナーは瓦礫に飲まれ沈黙する

「「グギギギッ!」」

と歓声のような声をあげるエイリアン達であったが
その歓声の中にまぎれて微かに瓦礫は動き、ガラガラと崩すようにメイナーが立ち上がると
まるで飛ばされたことは意にも介さぬと言った風に相変わらず思考を巡らせ
その間も残された数機のスノッブを打ち抜き、蜘蛛型にも攻撃を続けている

そんな鬩ぎ合いが状態が数分続き
ふとメイナーが何かに行き着いたように考えを止め上空を見上げ呟く

「...おおっそうか、今回欲しい答えは..そう、メイナードの能力だ」

すると夕暮れの空が段々と黒く染まってゆく
日が落ちたのではなく、徐々に何か大きな影が上空を覆っていく
見上げた先には大きな二つの影、何かが回転するような...エンジン音だろうか

僅かな風とギュンと回転する音が段々迫り大きく聞こえ
その影が蜘蛛型攻撃が有効な範囲に来るか否かその刹那
眩い光が蜘蛛型を貫き、軽々と破壊する

「お〜お〜やりおるやりおる、調子はどうよ重装さん」

突如破壊された事に混乱し一気に退却を始める蜘蛛型を尻目に
巨大な戦闘機のような「何か」から桃源が降りてくる

「随分遅かったな、そのウイングを待っていたんだ...いや?そっちの方か?」

桃源が乗っている物以外にもう1機、明らかに重武装なタイプが用意されている
先程設計図状態で見た自分専用の物であることは考えずとも解る

自身より巨大なその空飛ぶ物体は、非常に魅力的に映る
先程の一撃を見ても解るように、明らかに戦闘力も上昇する
最早これを使わぬ手は無いだろう、エイリアンのサンプルを取る時間も十分に余るレベルだろう。

「使い方は凄い簡単だぞ、”装着せよ”とかそれっぽい事を言えば勝手にやってくれる、
今も”乗せて飛んでくれ”と言っただけでここまで運んでくれたしな」

その言葉どおり、亜空ウイングは意図も簡単に声で操作されている
「専用」であるのはこの為であり、思考パターンが組み込まれており
装着車の意思を亜空力の流れから読み取り操作されるのだ。

それを見てメイナーは早速その操作を理解し、
自身の装備となる【メイナード】に向けて声をかける

「メイナード、装備モードだ。残りを全て破壊するぞ」

声が終わると同時にメイナードが軽快な音を立てて変形を始める
既に登録されたメイナーの声を認識し
その指示を理解した上で最速の行動を取るようにプログラミングされている
いわば忠実な相棒であるこの戦闘機は、本来乗るものではなく「装備される」物である

『装着モード』

メイナードから電子音声が響き、メイナーを包み込むように合体してゆく
隙間と言う隙間から真っ黒な結晶が現れては砕けそれが粒子となり噴出している

無数の粒子がまるで霧のような黒い膜を作ったかと思うと、各部からスチームが噴射され吹き飛ばされる
その一連の動作の後、黒い霧の中から現れたのはメイナードと融合したメイナーの姿であった

「おおっ凄いな、名付けるならフルブラストメイナードと言ったところかね?」

まるで新しい子供向けヒーロー番組を見た子供のような表情で桃源が目を輝かせながら
その生まれたばかりの強化された姿に咄嗟に浮かんだ名前を付ける
本来であれば即効で却下される事がほとんどだが今回はどうやら違うようだ

「少々長いが悪くない...が、それは後だ、折角の貴重な私の研究素材が逃げてしまう」

その言葉の間にメイナーは後部に装備されたキャノン砲を展開し
逃げる4機の蜘蛛型のうち1機に向けて軽々と放つ
その威力は絶大であり、蜘蛛型を跡形もなく消滅させた上にその先のコンテナにも大きな風穴を開けている

「うぉ...これまた随分とまぁ。じゃあ後は頼んだ、何とか援護するからさ」

桃源もまた亜空ウイングを呼び出しそれに捕まるようにして飛行している
シュリョーンの姿になれないため威力や機能は最大限に発揮出来ないが
援護する分には十分な能力を持っていると言える

が、その言葉を聞いてか、それとも聞かずか
既に遠くへ逃げた残り3機の蜘蛛型を追って過去にない速さでメイナーは飛んでゆく
置いていかれた桃源は、呆れたような表情を浮かべつつも、去りゆく仲間に軽く手をふるのだった

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先程まで夕刻だった空は既に暗い
太陽を無くした夜の世界は彼等が最も得意とする世界
そこに逃げ込んだ数匹の蜘蛛は、最早単なる的でしか無いのかもしれない

普段であればその糸で獲物を捕らえるはずが
放つ光り輝くビームの糸はより協力な鈍い闇色の帯に吸い込まれ
気がつけば多脚だった足はまばらに砕け、残りの数も減ってきている

「ロック数3、内2機半壊...骨が無いな、もう少しあのフィールドは固いのかと思っていたが」

上空遥か高くに巨大な武装を身に纏いメイナーが浮かんでいる
音も無く飛ぶそのシルエットは正しく悪を象徴するかのように刺々しく見える

「「グギギッ!全員退却セヨ!アレハ我々ノ手ニハ終エナイ」」

痛々しい姿をさらしながらはねるように蜘蛛型が飛んでゆく
既にダメージを負っているため不規則な動きを見せる

「もうすぐ奴等は広い敷地にでる...そこで足を奪えば、材料は手に入ったも同然だ」

メイナーの目の前に半透明なモニターが浮かび地図を表示している
緑色に光り表示される地図の上には固まった4つの点
更にその先にはコンテナを置いていない開いた土地が広がっている

「破壊せずにあの地点まで動かすのは難儀だったが、先の研究を思えば苦では無かったぞ」

段々と目標地点に赤い点が近づいてゆく
目標地点に近づいた頃にはメイナーはブラスターを構え
微妙な位置調節を始め、ターゲットが入り込むのを待つ
元来待つのは好きではないが、こう言った高揚感を得られる待機ほど素晴らしい物はない

「さぁ並べ、計算は出来ているから...そう、そこだ!」

パシュン...と炸裂するような音と共にレーザー弾が発射され
歩いって距離を過ぎた途端に4つに分割し、飛び跳ねている蜘蛛型3機に同時に命中する
1匹は残された最後の足を、また1匹は動力部を、全てが「活動が不可能になる」位置を打ち抜かれている

不意な攻撃にまるで落ち葉が木から落下してゆくように蜘蛛型はヒラヒラと落下し
地面にぶつかると何かが割れるような音や重金属の激突する音が響く
そんな彼等にとっては地獄とも言える地上へメイナーが降り立つ

「「ギギギッ、メイナー破壊!破壊セヨ!!」」

炎を上げ燃え盛る蜘蛛型の中から人間よりは小さな
しかし見るからに「友好的には見えない」そんなエイリアンが一目散にメイナーに向かい飛び出してくる

何処に潜んでいたのか1機辺り3人と言ったところか、そのスピードは意外にも早く
一瞬メイナーも首を左右に動かし動きを追っていたがある事を確認すると
ハイスピードで動くエイリアンの一人に動きを合わせ、直接問いかける

「お前、それは本物のお前の”脳味噌”...なのか?」

今、相手にしているのは未知なる敵であり十二分にスリリングだが
そんな物は最早慣れているメイナーにとって、それ以外にある様々な要素が興味をかきたてる
そんな中でもメイナーが最も興味を引かれるのはその外見、エイリアンの奇怪な姿だ

「〈何を言ってるんだ〉そんな顔してるなお前、不思議な事じゃない
その中身が欲しいんだ、お前に興味がある...そう狂おしいほど欲しいね”ソレ”が」


メイナーが手に持つ2丁の銃が幾多の異星人の首を的確に貫く
バシュッ、バシュッという軽快な音は、その軽さとは反して実に生々しいグロテスクな世界を作る
だが、その飛び散る血肉は青や緑、色だけ見れば鮮やかにも映る

一撃でエイリアンの頭を吹き飛ばし、落ちてきた頭部をキャッチすると
残されたまま勢いだけで進んでいた胴体を軽く蹴り飛ばし
手に取った軽く吹き飛んだ「脳のような部分」をみて興味深そうに
そして、その異常な行動に思わず足を止めてしまったエイリアン達にあえて聞こえるように語りかける

「そのデザイン、下劣なむき出しの脳味噌と言うのは良いな
...だがね、惜しいんだよその血の色だけは美しくないんだなぁ!!」

飛び散った鮮血は青い蛍光絵の具のようで無駄にギラギラと光っている
それもまた興味深かったが、緑色をした脳味噌には合わない色であり
それが彼にとっては若干の怒りを感じさせ、言葉が思わず怒りが乗ってしまう

「まぁいい、コイツの頭脳部分は頂いておこう...さて、もう飽きたな」

右手のブラスターが黒い空間に包まれると瞬時に巨大な銃へと変化する
そんな変化を当たり前のように流し、動き
言葉のとおり、既に飽きたとでも言うように無数の異形の衆はその一撃の餌食と成り果てた

軽快な銃撃音が数秒間、まるでマーチでも奏でるように鳴り響いて
その後に無数の雨音のように見たことも無い色の肉となったエイリアンが落ちてくる

その最中メイナーは手にした脳みそがエイリアン特有の液状化を始めないように
亜空間よりカプセルを取り出し保管する
最早サンプルが手に入った以上、残りの肉塊は彼にとっては不要な物でしか無い

「さて、一応一件落着か...桃源は遅いな、もう全部済んだというのに」

独り言のようにつぶやきながら先程外したメイナードの元へメイナーが向かうと
目前に積まれたコンテナが唐突に吹き飛び
その目前によく見知った影が膝を付き、目前の巨大な影に刃を向けている
...その姿は間違いない、よく見知った黒と金の姿

「...シュリョーン?何だまだ敵がいたのか!?」

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時は数分前に遡る
蜘蛛型を追い飛び去るメイナーを見送った桃源は
彼の援護のために、亜空の世界にいる葉時に連絡を取っていた

「ゴメ〜ン、もうちょっとだけ...え〜と..後、5分ぐらい大丈夫かな?」

黒い影の向こうから葉子の申し訳なさそうな声が聞こえている

シュリョーンスーツは亜空の世界で定期的なメンテナンスを行う必要がある
今回は亜空ウイングへの適応や、戦いで受けたダメージの解消
そして出力増加等様々な再調整を行っているため、時間の進みが遅い亜空の世界での作業であっても
現実世界で長時間に感じるほど長く時間がかかっているのだ

「そうか..まぁメイナー一人で十分だろうから、問題ないでしょう」

亜空間の黒い壁から手のような物が電話の形を作り相手の声を届けている
亜空通信と言う亜空間だけで成立する連絡手段だ。

本来ならば亜空人間本人が何処にでも出現出来るため、使用することはないが
今回は亜空の世界で葉子や亜空の獣が必死に作業をしているため
こちらに来ている時間が無いのだ

「援護ってもなぁ、何かもう終わってそうな気がするし...って何だこれ?」

桃源の腕に装備された亜空ブレスが赤く発光している
そこから映し出されたスクリーンには遥か上空から何者かが接近しているのを示している
このレーダーに反応するのは「宇宙人」だけである。

「不味い...まだ他にもいたのかよ!?葉子ちょっと急げるか!?」

「ええっ...あっと、そうだな、後は微調整だけだけどそれ無しでいいなら」

「問題ない、どうせアレでしょ?装着時の着心地云々の、なら俺がその役目も買って出ようってな!」

状況を理解出来ない葉子が、驚きつつ妥協案を提供すると
桃源はそれを待っていたかのように答えを言い渡す
会話の向こうでは「いやまだ無理...」と言う声がするがそんな事を言っている場合ではない

「じゃあ早速変身と行くか、葉子準備はOK?」

「勿論!あっ...でも、ちょっと動きにくいと思うから、油断しないでよね!」

両方の世界のシュリョーンとなる者の腕が黒く輝き体を覆う
その声、その姿は徐々に重なり、一つとなり黒い塊が生まれ
それが見えるか見えないかの刹那、砕け散ると中から黒い戦士が出現する

「「変神シュリョーン...罷り通る!!」」

脳内で二人の意思が結合し、次第に一つになる
シュリョーンは変身することで2人の体を一時的に一つの者として融合させて現世に出現する
片方の人間の力で亜空間の能力を呼び出し、もう片方の力で現世の力を駆使する
言わば亜空の世界から初めて生まれた「現世と亜空のハイブリット」である

「「目標の現在地点は...私の上空か、最初から狙って来ていると言うことか」」

既に目視できるレベルの位置に出現した「敵」を確認すると
既にその上に乗っていた亜空ウイングを足で操作し、目標に向かい高速で飛んで行く

段々と近づくその姿は明らかの巨大なエイリアン
過去に見た物のゆうに3倍はあるだろう、明らかに凶悪なオーラを放ち
こちらには殺意にも似た視線を向け、風で聞こえないが何か叫んでいるようだ

数秒しないうちに目前までたどり着くかと思えば
その瞬間4本の伸びた触手を前方に配置しシュリョーンヘ突撃を仕掛けてくる

「見つけたぞ地球の戦士!!このまま死ねぇぇ!!」

予想はしていたがそれより遥かに速いスピードと威力に
流石にシュリョーンも防御姿勢のまま吹き飛ばされる
その落下を防ぐために亜空ウイングが補助するものの、地面に叩きつけられ
桁たましい音と共に港の地面が大きくえぐれ円形のクレーターを作り上げる

「「問答無用はいつもの事だが...随分と威力が高いな」」

その威力は通常の数倍と言ったところだろうか
あらゆる攻撃を亜空間に衝撃を送り軽減させることで最低限に減らすシュリョーンスーツを持ってしても
相当な衝撃が体を襲う、これほどの相手は過去の巨大円盤を相手にした時以来だろうか

激しい衝撃から体を起こす、ダメージは即座に回復が始まるが
このレベルを連発されれば流石のシュリョーンも長くは持たない
ダメージ以上にそれによる暴走へのタイムリミットの短縮が何より危険なのだ

「「即座に決着を付けたいところだが、果たして...」」

立ち上がりアクドウマルを構えたシュリョーンの目前に
ドンッと炸裂音を立てて敵となる巨大な宇宙人が着陸してくる

体の色や触手を装備している点、その脳みそが剥き出しのような顔は
今までのエイリアンと同じだが、明らかな巨体とパワーが別格であることを示している

「まだ立っているとは予想以上だ...俺様の名はギーゼン!ヒーポクリシー軍の将軍だ!!」

ギーゼンと名乗った宇宙人は明確に「ヒーポクリシー軍」と名乗っている
その言語は人間の物と同じで非常に流暢だ、今までも人語を話してはいたが
テンプレートに当てはめたような機械的な言葉ばかりだった

少ない情報だけでも今目前にいるのは、初めての知性のあるエイリアンである
その答えい行き着くことは容易であった

知性があると言う事は、相手側の情報をより多く得るチャンスでもある
シュリョーンは出来る限り情報を得るべく戦略を練ってゆく
まずは名乗り、相手が勝手に語るように誘導を狙う

「「私の名はシュリョーン、亜空の戦士にして地球における悪の戦士。お前達の目的は何だ」」

男女の声が入り交じったシュリョーンの声が響く
その音に少し驚いたような表情を見せるも、ギーゼンはすぐに返答してくる
すぐには攻撃してくる様子は無い事は救いだろう

「不思議な声をしているなぁ..シュリョーンよ覚えておこう..我々の目的を問うか。
そうだな...言うならばこの星の資源が欲しいな..後は..そうだな人間の主導権を得ることも重要だな」

何か思い出すような仕草をしている、知的かと思ったがそうでも無いらしい
実際、敵となれば場合このタイプが一番恐ろしいのは経験上明らかだが
上手く行けばメイナーと合流して一気に倒すことも可能だろう...慎重に事を運ばねばならない

「「なるほどな、共存は端から望んでいないと言う事か...今までのエイリアンも貴様達が放っていたのか?」」

ジリジリと指すような張り詰めた空気が漂う中で
数メートルの間を取り、黒い戦士と巨大な異形が対峙している
どちらも正しい存在ではないが手を取り合える関係でもない、その先にあるのは争い以外何も無い

「勿論、それでお前達が邪魔なんだ、それに奴等は大事な俺様の部下達だったのだ...
そう、仲間さ...だから、許さんぞ!許せんのだ!シュリョーン!!」

突如として湧き出たような激しい怒りがそのまま風に乗り、ビリビリとした空気が言葉と共に刺さる
その中心でアクドウマルを構えたシュリョーンが風を切り裂くようにギーゼンに向けて駆け出す

アクドウマルを一閃、その流れで風が変わりギーゼンの叫びもかき消され
そのままギーゼンに向けて刀が振り下ろされるが
瞬時に触手がガード姿勢を取る、通常の機械触手と見た目こそ同じだが明らかに力が強く、硬い

「「貴様も人間に攻撃を仕掛け何人も殺しているだろうに!!同じとは言わんが戦う理由はこちらにもある!!」」

触手を振り払うようにアクドウマルを振るい、その勢いで一気に一撃を加える
手応えはあるが硬い装甲に阻まれ致命的なダメージには至っていないようだ
見た目以上に過去のエイリアンとはレベルが違うらしい

「ぐぅぬぅ、己ぇ、シュリョーンめ..その力は確かなようだな、しかし俺様を倒す程ではなさそうだ!!」

幾度も繰り出された巨大な拳をかわしながら
出来る限り情報を得るために疑問を投げかけ続ける
意味があるかは定かではないが、そこまで頭が回るようなタイプとも思いがたい
上手く行けば最低限の情報は得られるだろう

「「倒せなくてともお引き取り願うことは出来るかもしれんぞ!お前の大将に泣きつくが良いさ!」」

こういうタイプは怒らせて勝手に全ての譲歩を吐き出すのを待つに限る
即座に攻撃を仕掛けたのも、相手を煽るのも全てそれを狙ってのことだが
些か威力が高く、それを全て防ぐのは至難の業である

「何をっ!!ドクゼンに証明せねばならんのだ、貴様らなど俺一人で十分だとな、もう部下を出す必要もないと!!」

「ドクゼン」それが奴等の総大将だろうか、過去にスノッブの断末魔に同じ事を叫んで消え去ったが
まさか個人名称だったとは、十分な収穫だ
しかしその最中も繰り出される拳や触手の動きに付いて行き振り払うのも限界が近い

一旦距離を取りそう遠くないメイナーがいる地点まで誘導せねば勝つのは難しいだろう
そうするには...新兵器の力を使うしかあるまい

「どうしたどうした、段々動きが悪くなってきているぞ...そぉれこれで終りっ...何っ!?」

大きく小節を振り上げたギーゼンめがけて亜空ウイングが突撃する
ガリガリと金属の削れ合う音がすると、流石のギーゼンもその勢いに押され吹き飛び地面に叩きつけられる

「「亜空ウイングそのまま亜空キャノンで足止めしろ」」

シュリョーンが指示すると亜空ウイング下部よりキャノン砲が展開し
そのまま倒れ込んだギーゼンに4本のレーザー砲を掃射する

激しい閃光と共にギーゼンが地面にめり込むが、それが決定打にならない事は
先程まで戦いの中で直にその硬さを実感しているシュリョーンには明確であった

「「一人では平行線以上にならない...メイナーいる地点まで急ごう」」

ギーゼンは襲来時にシュリョーンのエネルギー反応を見て着陸地点を決めていた
...そう判断したシュリョーンは逃げてもギーゼンが自分を発見し追いかけてくるだろうと想定し
メイナーが戦闘している地点まで急ぐ、変神さえ完了していればメイナーの位置は手にとるように解るのだ

「「持って数十秒と言ったところか、亜空ウイングは直ぐに退避しろ!」」

亜空ウイングに遠隔指示を飛ばしながら、シュリョーンが黒い道を駆けてゆく
薄暗くなり始めた港のコンテナの山が迷路にように壁を作る
的確なナビゲーションがあっても本当に正しい道なのか解らなくなるが
これを利用すれば足止めにもなるかもしれない...破壊されなければ、だが

「「既に背後から音がしているな...想定通りパワーに任せてコンテナは破壊しているか」」

背後から轟音が轟き、コンテナが宙に舞うのが見える
亜空ウイングは既にシュリョーンの上空に戻っており
さほどの効果も示さなかっ事は明確であった

「おのれシュリョーン!!どこへ行きおったぁぁ!!」

強烈な声が轟音と共に聞こえてくる
見る見る内にその声は近づいてくるが、メイナーがいるポイントも近い
ここで相手のダメージ率を見た上で、相手に大きな隙を作ることが出来れば
シュリョーン・メイナーの二人による亜空兵装のフル掃射で形成を逆転することも出来るだろう

「「どうした随分足が遅いなギーゼン、私ならここだ」」

目前のコンテナが破壊されると目の前に息を荒らげ、各部のアーマーが破壊されたギーゼンが
今にも飛びかかるような勢いでこちらへ迫っている
思った以上にダメージはあったようだ、だが怒りも最上級まで引き上げてしまったらしい

「シュリョーン!ふざけるなぁ!!さぁ今すぐ貴様を殺してやる!!」

勢い良く振り上げられた拳は先程までの勢いがない
ダメージを負ったためかかなり無理をしているようだ
...だが、ここは一旦それを”大げさに”くらい、コンテナの向こうに飛び出さなければならない

相手に「シュリョーンを吹き飛ばした」という安心感を与え隙を作る
今のボロボロの状態のギーゼンであれば、一瞬の隙を付けば間違いなく勝つことが出来る
シュリョーンはそう確信すると声を上げる

「「ぬっ..来い!ギーゼン!!」」

遅くなっているとはいえ、通常では有り得ないスピードで迫る拳を
出来る限りダメージの少ない姿勢で受けると
その体は衝撃と共に軽く吹き飛ぶ、体が横向きの数回転すると
一緒ん止まりそうになった体を自ら空転させて向こう側に飛び出す

流石に自身でも制御が出来ないため
受身を取れずに落ちるが、調整こそ指定内が修理したてのシュリョーンスーツは頑丈であり
ギー前途の戦いのダメージを考慮してもこの程度は何ら問題はない
既にギーゼンがパワーダウンしていたからこそ出来た荒業と言えるだろう

ガラガラと音を立てて崩れるコンテナと、シュリョーンの体がまるで布でも落ちてきたかのように崩れ落ちる
最後のダメージこそ大したことはないが、それ以前のダメージは今までとは比べ物にならない

「「ぬっ...ぬぅなんとか上手く行ったようだな」」

制限があるとはいえメイナーより素に近い能力が与えられているシュリョーンに
現状でダメージ、まして吹き飛ばすほどの威力の攻撃を与えるエイリアンは過去にいただろうか?

その状況を全く知らず目の当たりにしたメイナーは
仮面の上からでも解るほどの驚きを感じさせる
その信じられない状況は、流石にメイナーも足を止め考えることすら数秒ラグが生じる

「「...メイナーどうやらそっちは終わったようだな。ならば力を貸してくれないか?ヤバイ相手だ」」

「ヤバイ?...あのデカイ影か、スノッブではないな...人型か」

体制を立て直したシュリョーンがメイナーの存在に気づき語りかける
どうやらダメージこそ少ないようだが、アーマーの各所に傷がついている
このレベルのダメージでも十分に珍しいといえる

その吹き飛ばされた来た先から砂煙の向こうに4本の機械触手と
シュリョーン達よりも遥かに大きい巨体のエイリアンが姿を表す

「シュリョーンまんまと吹き飛びおったな!!
もう容赦はせぬぞ!地球を洗脳する邪魔になるお前達をここで倒す!!さぁトドメだ!」

ギーゼン、過去の戦ったエイリアン達で「自ら名乗った」のはコイツが初めてだ
言葉も機械的なものではなく人間のそれと全く同じ
それなりの知能と、強力なパワーを持っている事はまず間違いない
...が、どうやら熱くなりすぎると判断が甘くなるらしい

「「奴は強い、圧倒的だ..が、直情的すぎてなまだあそこに私がいると思っていらしい」」

「よく解らんが、何か興味深い敵ではあるな。こちらも全力で行くとしよう」

同時に駆け出した二人の亜空戦士が、ギーゼンの目前まで一瞬で駆け込むと
その目と目を合わせ、瞬間シュリョーンは刀、メイナーは銃を呼び出すと一斉に攻撃を開始する

「ぬぉぉぉ!?いつの間に!!」

目前にいたはずのシュリョーンが別の位置から襲いかかってきたことで
ギーゼンは驚きを見せる...が、放った攻撃は触手が全て防いでしまう

「どうした隙を突いたつもりか、俺様の可愛い部下たちを山のように殺した割には随分と非力だなぁ」

ギーゼンの右側にシュリョーン、逆の左側にメイナーが滑るように着地すると
言い放たれたギーゼンの言葉を聞いてか聞かずか、再度左右より攻撃を仕掛ける

「「行くぞメイナー!」」

先に言葉を発したのはシュリョーン
その言葉終わるか否か亜空ナイフが猛烈な勢いで2本の触手をまとめて突き刺し
更に呼び出されたアクドウマルの一閃を直に受けギーゼンは大きく体制を崩す

「ぬぉっ己ぇ...この程度で止まる俺様と思うかぁ!!」

ギーゼンが大きく足に力を込めると触手からナイフがはじけ飛び
崩れた体制を立て直す補助動作を開始する、先程までなら完全に弾かれていただろうが
既にギーゼンも相当なダメージを追っており、段々と攻撃通じ初めている

そして...その体制を崩す瞬間を待っていたかのように逆サイドからメイナーが出現し
亜空ブラスターをほぼゼロ距離で乱射する
先程から影を追ってはいたが、ギーゼンがメイナーをこの時を初めて認識する

「どうした?威勢は良いがスピード勝負は苦手らしいな”俺様エイリアン”?」

不意なイレギュラーの攻撃に驚いたギーゼンが姿勢を崩すと
メイナーは的確に鎧がない箇所を直に狙いブラスターを乱射する
その勢いと激しい衝撃、痛みに、体勢が崩れたままの状態だったギーゼンが大きく吹き飛ばされる
二人の亜空戦士が待っていた瞬間の訪れである

「「よし、今だ!亜空ウイング装着せよ!!」」

「なんだ、大口叩く割には大した事はないな...メイナード来い!!」

二人の戦士の声が響くと同時に背後に黒い壁が現れ各々を包み込んで割れたかと思うと
その姿は強化武装を装備した状態へと変貌している
巨大な姿はギーゼンにも劣らない、彼等の現状での最強の姿である。

「「亜空ウイング攻撃モード。亜空キャノン、最大火力で発射!!」」

シュリョーンがコマンドコードを叫ぶと
亜空ウイングの後部から左右他いの巨大なキャノン砲が展開される

「メイナード、アクナストロン砲フルバースト!!」

同様にメイナードも後部に取能された巨大な大型砲門が展開し
同時に2機の巨大なエネルギー砲がチャージされ瞬く間に発射される
亜空ウイングとメイナードから放たれたレーザーは途中から一体化しその威力を増大させ加速する

「ぐっ...おのれぇ亜空戦士共めっ..何ぃ!?」

やっと立ち上がり状況を理解したギーゼンが回避行動を取ろうとするが時既に遅し
フルチャージ状態となった2機の巨大砲が一斉に火を吹き迫る
咄嗟に機械触手でガードするものの一瞬にした赤黒い光りと猛烈なエネルギーに包まれ
幾度かの桁たましい爆発の後、何かが伸縮するように闇の壁が割れ再度爆発が巻き起こると
激しい叫び声のようなものを上げ、破裂するように大爆発が巻き起こる

「「どうだ...倒したのか!?」」

まだ調整中である亜空キャノンシステムは完全な威力ではない
相手のパワーから察するに決定打にはなっていない可能性は高い
しかし、2機同時にフルパワーで発射し直撃している...この場は退却させる事ぐらいは可能だろう

「見ろ、奴め...触手でガードしたか、だが相当なダメージのようだ」

炎の中にギーゼンはまだ立っていた、触手で自身をガードすることでダメージを抑えたのだ
しかしその触手も2本は崩れ落ちかけており、全身に大ダメージを負っていることは間違いない

「グヌゥゥアァ!!己ェェァァ!!ここまでの力を持つとは...一旦退却だ覚えておれ!!」

ギーゼンが怒りの叫びを上げると、上空に隠されていた宇宙船が姿を表し
一瞬の内にギーゼンを回収すると夜の闇に消えて行ってしまった

よく見れば円盤も以前のものより明らかに巨大
これは「ヒーポクリシー軍」の本格的な兵力なのか、ギーゼンの戦闘力も含め圧倒的なそれは油断出来ない存在だ

「「っ...とりあえず、何とかなったか。礼を言うぞメイナー」」

「いや構わん、これは私の使命でもある、問題ない。しかしついに幹部クラスが現れたな」

「「あぁ、予想以上の強敵だ...しかし、情報は手に入った」」

黒煙が上がる港、シュリョーンとメイナーは新たな脅威を目前にし
新たな情報を得た、そして辛くも勝利を収めた事に安堵する。
しかし強大な力を目の当たりにして武装だけでなく
自身達のさらなる鍛錬と強化が必要であると実感するのであった

新たに現れた宇宙人軍団の幹部「ギーゼン」
今回こそ撃退に成功したが、その力は圧倒的だ

「まぁとりあえず今日は何とかなったようだし、帰ってコレクションを鑑賞するとしよう」

メイナーが変身を解除しながら呟く
既に破壊された残骸達は泡のように溶け、消え始めている

「「コレクション?...まさか脳味噌を保管したのか」」

「勿論、資料として必要だろう?私は興味への飢えが解消して、お前達は敵を知る情報が手に入る
汚れ役を買って出るのだ。良い話だと思わんか?」

娯楽は軽快な足取りを見せ、亜空間より先程のカプセルを取り出すとシュリョーンに見せる
その形は人間の脳味噌その物だが、この中に敵の情報が詰まっている可能性も高い
...しかしその見た目はお世辞にも美しさとは到底かけ離れている

「「う〜む...まぁ好きにすると良い、だが気を付けるのだぞ何が起きるか解らん」」

メイナーの注意を聞いてか聞かづか、亜空間に再びカプセルを戻すと
帰路を歩みだした娯楽をまだ変身解除もしていないシュリョーンが慌てて後を追うのであった

「「こら待て、大首領に報告することもあるから一度事務所にだな...」」

激しい戦いを終えた一刻の穏やかだが非日常的な時間が流れてゆく。
正義を失ったこの世界で、平和な日常を維持し守れるのは最早悪であるシュリョーン達だけだ
彼等が変えて行く未来は光ある未来か深淵か果たしてどちらかは、まだ解らない
しかし、戦いは光よりも早く彼等を取り込み、さらなる激しい舞台を用意してゆくのであった。

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輝く宇宙の彼方より舞い降りる一つの力
それは可憐にして儚く、そしてなにより強く生命を示す者。
倒すべき存在たる女王のその真意たるや、今はまだ誰も知らず

そう、本人すらもまだ、その運命を知りはしない。
また次回、一陣の風のように戦の姫、降臨す。



-第3話「蜘蛛の糸」 ・終、次回へ続く。
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